言語と文字
アストロメク・ドロイドの言語

R2をはじめとするアストロメク・ドロイドたちの話す、さまざまな電子音による言語です。R2の「台詞」はなんともかわいく魅力的な音です。その時々の状況に沿って、いかにもこう言っているだろうと推測できるところなど、本当によく出来ています。特に悲しい時、寂しい時、相手に同情する時などに発する、ちょっと力の抜けたような音は絶品です。また、楽しい時に鼻唄が出るというのもなんとも人間臭くて面白いです。おそらく、音の高低、長短などに意味が割り当てられているのかと思いますが、その周波数の差は人間にはちょっと聞き分けることは出来ません。アストロメクたちは人間の言語を理解できますが、自分では話すことは出来ません。彼らが人間に意思を伝えるにはプロトコル・ドロイドに通訳してもらうか、宇宙艇に装填されている時には備え付けの通訳器を介する必要があります。
実際のところ、技術的には可能にもかかわらず発話機能を備えていないというのは疑問です。発話装置が高価なので、必要のないドロイドには装備されないのでしょうか。あるいは技術的な理由よりも、もっと心理的な理由があるのかもしれません。ドロイドのような人工物が、言葉巧みに話すのを心良く思わない人も多いのではないでしょうか。SF好きの人にとっては自由にしゃべるロボットは夢の1つだと思います。しかし、例えば「ブレードランナー」のレプリカントや「エイリアン」のハイパーダインなどのようなリアルな人造人間が本当に存在したら、気味悪く感じ、いわれのない不信感を抱く人も世間には多いはずです。劇中では3POのおしゃべりには、だれもがうんざりしているようですし、必要でない限り余計な発話機能は持たせないというのが、製造会社の方針なのでしょうか。あるいはまた、コンピューターと直接「会話」を交すことを容易にするために、そのような言語に特化しているのかもしれません。
余談ですが、私の勤め先ではよく間違えて自席の電話にファックスがかかってくることがあります。受話器をとって「はい、こちら○○です」と言うと、向こうではピーピーガーガー言っています。こんな時はいつもアストロメクのことを思い浮かべています。そういえばインターネットに接続する時も、モデムがピーピーガーガー言いますが、これでホスト・コンピューターと会話しているのだなと思うと、ちっちゃなモデム君がなんともかわいく思えてきます。(私だけか?)

左から R2-D2, R2-A6, G8-R3, R2-B1, R2-R9
■アストロメク語の例
アストロメク語を表記するのは難しいので、ここでは英語でアストロメク語の擬音語がどのように書かれるかを紹介します。
- Beedeep!, Boop!, Tweee!, Zit!, Gack!, Bleep!, Breeet!, Blap!, Zeeet!, Beep!, Toot!, Glack!, Zlip!, Vlat!, Zop!, Yecch! [MAD: STAR WARS SPECTACULAR]
- BREEEET!, WHOOT EEEET OOOO!, BEEP-DWOOP-TWEET!, BLIP-DOOT-BLIP-DOOT!, BEEP-DOOT-TWOOO!, VREEET-ROOOO!, VREEET!, VREET-BWOOP!, BWEEP!, BREEOO!, VREET-DOOOP!, BE-WEOOO!, VREEEE!, BEEWOO! BEEWOO! BEEWOO! [STAR WARS EPISODE I THE PHANTOM MENACE, Dark Horse Comics, 1999]
■アストロメク語の創造
電子音とは言いながら、完全に新しく電子的に作り出された音ではないところが興味深いところです。ベン・バートはあくまでも実在の音を加工することで、音響に親しみやすさを持たせることに成功しています。R2の声は、ベン・バート自身の声や身の回りの音を(電子的に)加工して作られています。赤ちゃんの意思表示を感情表現の参考にしているそうで、なるほどR2のしゃべり方にはどことなく赤ちゃんっぽいところがあります。
- An entire sense of character for R2-D2 had been communicated with the little droid's now-familiar vocalizations --- and would again in Episode I. "What was discovered through trial and error," Burtt said, " was that babies make sounds that we as parents understand. They can sound happy, sad, or angry, all communicated through whimpers, high-pitched sounds, sighs, et cetera. So at the time, we thought maybe we could do the same thing with Artoo." Burtt himself vocalized some of the sounds, then mixed them with elements from a synthesizer to give them a mechanical, electronic quality. [MEI, p.142]
- R2−D2の登場するシーンでお馴染みの、小型ドロイドがコミュニケートする際の独特の音声は、『エピソード1』にも再び登場する。「試行錯誤の果てにわかったのは、赤ん坊は両親が理解できる声を出すということなんだ」とバートは言った。「彼らは嬉しいとか悲しい、怒っているといった声を出す。すべてウーウーとか甲高い声や溜息とかそういった声でコミュニケートするんだ。だからR2−D2でも同じことができるんじゃないかと考えたんだ」
バート自身が出したいくつかの声も使用された。そしてシンセサイザーからの要素とミックスし、機械的で電子的な音質を加味したのだ。 [MEIJ, p.148]

■引用集
- [R2−D2は]暗号や口笛などを使って使って相棒のC−3POと交信、C−3POがそれを通訳する。 [ZSW, p.88]
- R2 droids converse in an information-dense low-redundancy electronic language which can be interpreted for humanoids by translating devices. [GSW, p.149]
- Artoo understand Basic, but communicates in his own expressive language of beeps and whistles, which Threepio must often translate for their human ( and Wookiee) companions. [GSW2, p.359]
- ベイシックを理解するが、「ビープ」や「ピュー」という電子音による言葉で意思伝達するので、C−3POが仲間の人間(あるいはウーキー)にしばしば通訳しなくてはならない。[SWU, p.60]
- Artoo converses in an information-dense electronic language that sounds to the untrained ear like beeps, boops, chirps, and whistles. Although he can understand most forms of human speech, Artoo's own communications must be interpreted by Threepio or by ship computers to which he sends electronic data. [SWE, p.239]
- アートゥは情報密度の大きい言語を使うが、慣れない者の耳にはビー、ブー、チッチッ、ピーとしか聞こえない。ほとんどあらゆる種類の人間の話を理解できるが、アートゥ自身の言葉は、スリーピオや電子データをやりとりしている戦闘機のコンピュータを介して、翻訳しなければならない。[SWEJ, p.19]

もどる
Ver.1 1999.12.12
Ver.2 2000.3.5- 「宇宙艇に装着」−−>「宇宙艇に装填」。
- ドロイド控え室の写真に型番を追加。
- 引用集にSWUからの引用を追加。
Ver.3 2000.6.20
フォースのともにあらんことを
ベン・アンティリーズ