■ 事件(2) - 保険 -

IYさんは元来無免許であったが乗用自動車を購入・運転し、1963年4月、直角に近いカーブでスピードを出しすぎたために自動車を転覆させる事故を起こした。無免許運転では警察への届出や損害保険の支払請求に問題がある。そのため免許を持っていたTTさんが運転していたことにして事故証明を取った。事故の4〜5日後、TTさんの勧めによりIYさんは保険への加入を承諾したが、TTさんは保険の詳細をIYさんに相談しないまま1963年5月、T生命保険のMK勧誘員を通して満期自由組立生命保険契約を申し込んだ。保険金の支払い額は、満期200万円、交通事故等に因る災害に基づく死亡時に600万円。満期、死亡共、TTさんが受取人に(1963年11月18日付検面調書)なった。

IYさんを被保険者、TTさんを受取人とした保険申込を、T生命保険は受取人が被保険者の家族ではないことを理由に申込を却下したため、TTさんは「そんな面倒な保険やめてもいい」と取消を申し込み、MK勧誘員も了承した。しかし、契約ノルマを果たすように支社から督励されていたMK勧誘員は単独で保険会社本社との間で申込・却下を繰り返し、通算3回目にIYさんの妻INさんとTTさんを受取人にした保険契約を1963年5月25日にさかのぼって契約締結した。

この保険の成立について、TTさんは取り消されたものと思っていたと主張しているが、裁判では認められていない。

この他、TTさんの内妻IMさんの実弟のSYさんが酒を飲んではよくオートバイを運転し、事故で死にそうになったことすらあり、TTさんがSYさんに金を貸していたこともあって、T生命保険KM勧誘員を通して、SYさんに無断で受取人をIMさんとした保険金額200万円の生命保険(保険料月払特約付自由満期災害倍増保険)を1961年12月に掛けたとされる。

また、製材業KSさんに無断で、S生命保険相互会社波崎出張所長IYと共謀して1962年10月に生命保険を掛けたともされている。


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