スカウト活動における安全

(Ver. 1.1)

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目次

  1. 危険要因
    1. 人的要因
    2. 物的要因
    3. 環境的要因
    4. 各部門における危険要因
  2. 安全管理
    1. 安全に関する組織
    2. 安全のための生活指導
    3. 危険度の評価
    4. 安全なプログラム計画
  3. 安全教育
    1. 安全能力
    2. 安全教育
    3. 各部門における安全教育

まえがき

 ボーイスカウトの野外活動、特に野営は危険なプログラムである。こう言われると、「いや、私の団では事故なんか起きたことがない。」と反論されるかもしれない。しかし、指導者なら誰でも「ひやり」とした経験、つまり一歩間違えば大事故につながりかねない体験があるのではないだろうか。何か行動を100回起こすたびに1回「ひやり」とする経験を味わうとすれば、「ひやり」とする経験を100回味わう間に1回は大事故を引き起こす、と考えなければならないのではないか。事故はある確率で常に起きるのである。
 原子力発電所の事故の例などを見ても感じることだが、日本人は起きて欲しくないことは起きないと考えたがる傾向にある。しかし、どうやっても事故の確率を完全に0にすることなど不可能である以上、事故は常に起こりうるという認識に立ち、その確率をいかにして小さくするか、事故が起きたときの影響をいかにして小さくできるかを考えなければならない。そのためには、安全管理と安全教育が必要だ。これを身に付けることは、野外活動の大きな意義であるとともに、「そなえよつねに」の精神の実践であると思う。
 「ボーイスカウト安全入門」という本が出版されている。大変によい本なのでぜひ一読を勧めるが、具体的にプログラムを進めていく上でどうしたらよいか書かれていないのは残念な点である。そこで、筆者の体験に基づく具体策を書いてみることにした。従って、これは筆者個人の意見であって、団としての見解ではないことをお断りしておく。もとより、筆者の体験はわずかなものである。読者の方のご意見やアドバイスを頂ければ幸いである。

ボーイスカウト渋谷第5団  木下 順二


1.危険要因

 我々の周りにはいろいろな危険がある。例えば、車の通行量の多い道路は危険である。そこを自転車で通ろうとすればますます危険である。さらに、時間に遅れまいとして大急ぎで行ったとしたらどうだろうか。事故が起きる時というのは、えてしてこのように悪い条件が重なっていることが多い。通行量の多い道路のように、場所によって特に危険が多いところを通ったことによって生じる危険を環境的要因という。自転車のように、物や材料が危ない場合は、物的要因である。そして、焦って事故を起こすのは人的要因となる。この、事故を引き起こす3つの危険要因は、はっきりと分けられない場合も多いのだが、計画段階でチェックして行くには、分けて考えるとよいと思う。


1−1.環境的要因

 ボーイスカウトの野外活動は危険に満ちているといってよいだろう。野外では室内と違って、人間は無防備の状態に置かれる。ハイキングでは、コースのそれぞれの場所に危険が潜んでおり、交通機関での危険も考えられる。また、悪天候時に対する準備、夏期における熱射病や疲労の危険なども考えられる。
 キャンプでは、テントで寝ることになる。テント内は、温度差が激しく、湿気もたまりやすい。地面が凸凹だと、十分な休養がとれないことがある。そのような理由から、悪天候が続く場合には、隊員の健康管理が難しくなってくることに注意しなければならない。また、衛生管理も要注意である。
 環境的要因による危険に配慮するのは、指導者の重要な仕事である。


1−2.物的要因

 ボーイスカウトの基本はキャンプであるから、少し詳しく説明しよう。キャンプでは、テントで寝ることの他に、炊事を行うことから、火の使用、刃物の使用という大きな危険がある。
 火の使用に関していえば、まず周囲が安全な場所の確保、防火用水の準備などは当然として、燃えにくい服装や、熱傷を防ぐための軍手着用を義務づける必要がある。ガソリン・石油等の危険物は、特に慎重に扱わなければならない。また、最近のテントは可燃性の素材が多いので、火の粉が降りかからないよう留意すべきである。
 刃物や工具の使用に関しては、進歩課程と連動させ、十分に安全教育を施した上で、使用を許可しなければならない。特に、なたや斧などの大きな刃物に関しては、この基準を明確にし、カブスカウトなどに安易に使用させてはならない。
 その他、工具・炊具・テント類についても、使用前に点検整備し、正しい使用法を指導しておくことによって、事故の危険を減らすことができる。最近の大型食堂用フライは、支柱もペグも貧弱なものが多い。鉄製の支柱と、長い鉄ペグを用い、あおり止めを掛けておかなければ、強風に耐えることはできない。また、備品を常に整理整頓しておくことが大切だ。必要なときにすぐ取り出せないようでは困る。
 また、キャンプサイトを設計する場合には、人と作業の流れが自然になるように配置すれば、無駄な動きやお互いの干渉が少なくなり、危険が少なくなる。刃物の使用スペースは、はっきりと区別する。カブ隊がキャンプを行う場合には、自由に入ってよい部分と、許可なくしては入れない部分を区別すべきである。
 スカウトの個人携行品も大切である。軍手、雨具、懐中電灯など、忘れると危険が生じる持ち物はたくさんある。必要性と正しい使い方を理解させ、必要なときにさっと取り出せるように荷物を整理させておくことが大切だ。
 固定キャンプでは車で資材を輸送することが多いが、キャンプで疲れた状態で運転すれば、危険なことは言うまでもない。雪中キャンプであればなおさらである。


1−3.人的要因

 指導者がいくら安全に配慮した計画を立てても、事故は起こりうる。スカウトの性格によって、事故を起こしやすい性格の者がいる。一方、がまん強い性格の者は、めったに事故を起こすものではない。また、指導者がむやみに時間を急がせたり、怒鳴り散らしたりしていると、スカウトの落ち着きがなくなり、事故が起きやすくなってしまう。また、無理なプログラム計画が事故を招きやすいことは言うまでもない。
 スカウトの健康管理も重要である。身体の調子の悪い者、睡眠不足の者などは事故を起こしやすい。キャンプの際には、毎日必ず点検を行ってスカウトの健康状態を把握するとともに、自分の健康を自分で維持できるように日頃から指導することが大切である。
 また、指導者は常に「心のゆとり」を持っているべきである。ハイキングだったら道ばたの花をじっくり観賞する、キャンプだったらゆっくりコーヒーを楽しむ、というようなゆとりのない者は、一人前の指導者とはいえない。


1−4.各部門における危険要因

 各部門別にその部門に特有な危険要因を考えてみよう。

ビーバー部門

 ビーバーでは、常時入隊を受け付けているので、隊員は充分な安全教育を受けないうちに、野外活動に参加することになる。従って、無理は禁物であり、最も体力のない者、集団行動がうまくできない者に照準を合わせてプログラムを計画すべきである。また、隊行動であっても、少人数のグループに分け、それぞれ担当の指導者を配置することで、きめ細かく隊員を観察することが必要である。

カブ部門

 最近のカブ隊の活動では、かなりボーイスカウト的な内容が取り入れられることが多い。しかし、まだ一人前のスカウトではないこと、班制度を実行できる段階ではないこと、などを考えれば、その活動には自ずと限界がある。テントを立てて泊まってみるのは大変によいことだが、それは、「ぜひボーイ隊に入って本格的なキャンプをやってみたい」と思わせるためのものでなければならない。従って、キャンプにおいては舎営を基本とし、その中に「テント生活」を取り入れていくのがよいと思う。
 また、カブ隊の組長は自分の組を一人でまとめて行くにはまだ力不足なので、組の中にリーダーシップを取ってくれる人が必要である。デンコーチやデンリーダーの補佐がなければ、組長はストレスを感じるだろう。特に、野外活動の時は必ず指導者が同行すべきである。

ボーイ部門

 ボーイ部門においては、ハイキングにしても、キャンプにしても基本は班行動である。班活動が集まって隊活動になるわけで、その意味で活動における安全の確保は、全て班長・次長の力量にかかっているといっても過言ではない。従って、グリンバー訓練の充実こそが安全面での鍵になる。班長・次長に対して、キャンプの基本生活や、ハイキングなどをスムーズに進めて行けるような技術的な訓練と、班員をうまく使って仕事を分担していけるという指導力の訓練を行うことが、キャンプを安全に行うために絶対に必要である。
 キャンプにおいては、体調を崩すものが多く出ることがある。もちろん疲労や天候などにも影響されるが、ストレスが大きな原因となっていることを見逃してはならない。新入隊員がばたばた倒れるようならば、各班の活動がうまく行っていない証拠である。班長が倒れるようならば、指導者のやり方に問題があるのだ。

シニア部門・ローバー部門

 シニアやローバーになると、ボーイからの上進者ならば基本的な野外生活の心得はある程度マスターしていると考えてよい。しかし、プログラムを自分たちで立てていく過程で、往々にして安全面への配慮が欠けてしまうことがある。従って、計画段階で指導者がこまめにアドバイスしていくことが必要である。計画ができあがってからひっくり返すと、意欲を失わせる結果になるからである。
 シニア以上では移動野営、雪中キャンプなど危険度の高いプログラムを行う可能性がある。シニアでは、このようなとき必ず指導者が同行しなければならない。ローバーにおいても、常に指導者、団、父兄と連絡が取れるようになっていなければならない。指導者の中にその活動内容に関して充分な経験のある人がいない場合は、団内あるいは関係者の中から詳しい人を捜して、活動に協力してもらうとよい。このような専門スタッフをデータベース化しておくようにしたいものである。


2.安全管理

 野外活動における安全を確保するためには、各隊指導者および団委員会が協力して安全管理を行っていく必要がある。重要なことは、「今まで事故が起こらなかったから今度も大丈夫だろう」というような安易な気持ちを持たず、「事故は常に起きる可能性がある」と、気を引き締めていくことである。事故を未然に防ぐには、まず危険要因をリストアップし、重箱の隅をつつくように一つ一つつぶしていくことである。また、不幸にして事故が起きてしまったときのことも、考えておく必要がある。


2−1.安全に関する組織

 隊活動において、最高責任者はもちろん隊長である。隊プログラムの安全チェックから、隊員の健康管理に至るまで、すべては隊長の責任の元に行われる。団としても、指導者を任命し、その行動には責任を負わなければならない。その意味では最終的な責任は団委員長にあるといってよい。
 組織として最も大切なのは、隊内の組織である。隊長が活動を学生リーダー任せにしているような場合、安全に対する配慮は軽視されがちとなる。また、指導者の人数が多いと責任の所在がはっきりしなくなることがある。活動の細部はもちろん、学生リーダーや副長に任せてもよいが、安全に関する判断は隊長自ら行わなければならない。
 また、複数の隊での合同行事は安全面での問題が大きい。事前の綿密な打ち合わせと責任の明確化が必要である。もし安全に関する懸念があれば、それを指摘することに遠慮は無用である。
 キャンプの前には健康診断を行うことが多い。担当した医師がキャンプには参加しない場合、健康診断で気がついたことを健康安全担当の指導者にきちんと引き継がなければ、健康診断を行った意味がない。大切なことは、一人一人のスカウトを継続的に観察し、記録を保存して上進の際には次の隊に引き継いでいくことである。特に持病・アレルギーなどには重大な結果をもたらすものがあるので、指導者も熟知していなければならない。


2−2.安全のための生活指導

 一人一人が安全に活動するためには、日頃からの安全教育が大切なことはいうまでもないが、活動中における生活指導の観点から述べてみよう。野営にはこれまでに述べたような危険がある。危険があるときは、厳しく指導するというのが常識である。それは正しいのだが、ボーイスカウトにおいて、「厳しく指導する」ということは、何も大声で怒鳴り散らすことだけではない。ともするとこのような全体主義に陥る場合があるので注意を喚起したい。このような場合、班長や組長もそのまねをして、年下の者に乱暴に当たっている可能性が大きい。年下の者から見れば、それは「いじめ」となってしまう。ボーイスカウトでは、班制度の精神を生かし班長を通じて班の能力を高めることと、その日々の進歩を評価するということが生活指導の基本であることを肝に銘じて欲しい。もちろん、事故の起きる可能性のある危険行為や、いじめのような反社会的行為を見つけた場合には、その場で厳しく叱責するのは当然である。
 野外活動においては、活動に危険が伴うので、指導者からスカウトに与える指示は、明確にしなければならない。また、予定通りいかなかったときはどうするか、天候が悪化した場合などいろいろな場合を想定して指示を与えておくべきである。


2−3.危険度の評価

 学校教育では、危険と思われる活動はしないという例が増えている。しかし、ボーイスカウトでは、そのような考えは採らない。人間は一生のうちに、さまざまな危険に必ず出会う。従って、子供のうちから危険を察知し、それに対処できる能力を養っておかなければならない。それには、多少の危険があるプログラムでも、いかにしてそれを安全にできるかを考えて実行していくことが大切である。その事故が起きる確率と、事故によって引き起こされる被害を掛け合わせたものが、危険度を比較する指標となる。従って、特に生命に関わるような大事故が起きる可能性が僅かでもあるような活動であれば、慎重かつ緻密に計画しなければならない。
 不幸にして事故が起こってしまった場合のことも考えておかなければならない。まず、現場にあっては救急法が正しく行われなければならない。また、必要があれば速やかに救援を要請し、大事故の場合は隊や団による支援態勢を速やかに整えなければならない。よく、スカウト保険に入っているから事故が起きても大丈夫、などという人がいるがとんでもないことである。事故に対応するにはすぐ自由に使える現金や、応援を要請する連絡手段が必要になる。さまざまな事故を想定し、団委員会を中心として対応策を準備しておくべきであろう。


2−4.安全なプログラム計画

 ボーイスカウトのプログラムは活動内容そのものよりも、いかにして計画を立て、それを実施し、評価するかという過程が非常に大切である。その中に安全面への配慮を忘れてはならない。特に、毎年行っているプログラムは、「慣れ」のために安全に対する配慮がおろそかになりやすいので注意した方がよい。ここで、プログラム別に安全なプログラム計画法を考えてみようと思う。

ハイキング

 ハイキングにおいては、コースの選定が重要である。転落あるいは落石の危険、川や湖で溺れる危険、そのほかに道に迷う危険や交通機関での危険も考えられる。また、悪天候時の衣類の準備、夏期における熱射病や疲労の危険なども考えられる。このような環境的要因による危険を防ぐには、下見を必ず行うこと、危険な場所はないか、天候が変わったらどうかなど、いろいろな場合を想定した緻密な計画を立てることが求められる。ボーイのハイキングでは、班行動なので、道に迷ったときや非常時に、どのような行動をとるべきかをあらかじめ指導しておかなければならない。また、雨具や軍手などの個人携行品を忘れず、適切な服装を用意させることも危険防止には大切である。

野外炊事

 野外炊事における危険は、火を使うこと、刃物を使うことにある。
 刃物や工具の使用に関しては、十分に安全教育を施した上で、使用を許可しなければならない。火の使用に関していえば、まず周囲が安全な場所の確保、防火用水の準備などは当然として、燃えにくい服装や、熱傷を防ぐための軍手着用を義務づける必要がある。かまどを作る際に、炊具とうまく合っていないと、鍋をひっくり返しやすくて危険である。

舎営

 舎営において気を付けなければならないのは、隊員の健康管理である。舎営であっても、毎日の点検を行い、隊員の健康状態を把握するとともに、自分の安全は自分で守るという気持ちを持つように指導していくことが大切である。手や身体を清潔に保つこと。よく食べ、よく出し、よく寝ること。下着を毎日取り替えることなど、健康を維持するために必要なことは、自分でチェックできるようにしなければならない。

固定野営

 固定野営では、よい野営地の選定が重要である。野営地の選定法の全てをここで述べるわけには行かないので、安全面にポイントを絞る。夏場の疲労を防ぐには、ある程度の標高のある涼しい場所がよい。水質や排水、日当たりや風当たり、有害な動植物などは下見の時に現地で調査しておく必要がある。実施に当たっては、消防署、警察署にも連絡しておく。
 野営では、テントで寝ることになる。地面が凸凹だと、十分な休養がとれないことがある。その場合は、昼寝の時間をとって休養するとよい。テント内は、温度差が激しく、湿気もたまりやすい。そのような理由から、乾燥作業をこまめに行うことが大切なのだが、悪天候が続く場合には、健康管理が難しくなってきてしまう。
 キャンプでは衛生管理が難しい。生水は飲まないこと、食料は食料庫に格納し、暖かいテント内には持ち込まないこと、ごみ穴や便所にハエがたからないように工夫すること。また、食器はなるべく煮沸消毒するようにして、生ものは避けることが、食中毒を防ぐためには望ましい。

移動野営

 移動野営では、重い荷物を背負って長時間歩くことによる体力の消耗が危険要因である。スカウトの体力差が大きいので、最も体力のない者に合わせて計画を立て行くことが必要である。また、悪天候や隊員の病気などの時に退避するルートを確保しておく必要がある。


3.安全教育

 ビーバーやカブの活動では、大人が子供の安全を守ってやるという安全管理が、安全確保の鍵である。しかし、ボーイ以上では、自分たちの安全は自分たちで守るという態度が身に付いていなければ、班制度に基づく自発活動など、危なくてさせられない。それにはスカウトに対する安全教育を行い、スカウトの安全能力を高めておくことが鍵となる。

3−1.安全能力

 安全能力には、危険をあらかじめ察知し、事故を未然に防ぐという危険予知能力や、もし事故が発生してしまったときも、速やかに対処して被害を最小限に止める事故対処能力などがある。スカウトの安全能力を高めていく必要があるが、もちろんその前に、指導者の安全能力が高くないと困る。安全能力は、知識的要素、行動的要素、性格的要素の3つの要素に大別できる。
 知識的要素とは、どのような場合に危険があるかをあらかじめ予測できる能力、すなわち危険予知能力と、それを避けるための方法に関する知識を持っているということである。
 行動的要素とは、危険が迫ったときにとっさに避ける運動能力や、安全に道具を使いこなす技術力、それに事故が起きたときの救急法である。
 性格的要素とは、落ち着きがあり、ルールを守り、周りをよく観察するといった事故に遭いにくい性格をさす。

3−2.安全教育

 安全教育は、ビーバーからローバー・指導者に至るまで、一貫性を持って段階的に進めていかなければならない。安全に対する考え方は、各隊でバラバラのことがあるからだ。安全教育は、安全能力の3要素に対応して、それぞれの能力を伸ばすための、安全知識の教育、安全技術の教育、安全態度の教育の3要素に大別できる。
 安全知識の教育では、野外生活で何が危険か、事故の例に関する知識を得ること、体験学習の積み重ねによって経験をえることが大切である。
 安全技術の教育では、正しい道具の使い方や、救急法、とっさに身をかわす運動能力など、実際に体を動かしてやってみることが大切である。
 安全態度の教育では、自分の安全は自分で守るという意識を持ち、いつでもあらかじめ危険に備え、冷静に行動するように、体験的に指導していく。それには、キャンプにおける点検と講評も大切な役割を果たすと考えられる。

3−3.各部門における安全教育

ビーバー部門

 ビーバーでは、日常生活や集団行動における安全能力を養う。いつも指導者がついていて、危険な行動はすぐその場で叱責しなければならない。行動のルールを示し、それを守らせるようにする。また、自分の健康管理や身の回りのことが自分でできるように、舎営であっても点検を毎日行うとよい。

カブ部門

 カブでは、組や隊活動において、特に野外活動をする場合の安全能力を養う。例えば野外炊事で火を使うことや、組単位で行動するハイキング、舎営または野営において、指導者が行動を共にして、危険を避けるような行動がとれるようアドバイスしていく。また、運動能力を高めるように、野外で身体を動かすことを心がけたい。キャンプにおける点検では、健康管理や生活習慣に関する項目に加えて、安全に関する項目をチェックするとよい。

ボーイ部門

 ボーイでは、班制度を実施していく上で、グリンバーが指導力を発揮し、野営における充分な安全能力を持てるように、あらかじめグリンバー訓練で指導しておかなければならない。野営では、刃物を正しく使え、安全なキャンプサイトを設計できるようになって欲しい。キャンプが安全にできるのは1級スカウトである。グリンバーがこのレベルに達していないと、班員全員がキャンプの基本生活で苦労することになるだろう。
 ボーイのキャンプでは、点検をきちんと行うことが重要なことは言うまでもない。点検と講評の全てをここで述べるわけには行かないが、点検の意義は、自分の生活は自分で改善していくという生活習慣を身に付けることであり、講評の目的は、日々の進歩・改善への意欲を励ますことにある。

シニア・ローバー部門

 シニア以上では、自分たちで計画を立てていく際に、安全に配慮した計画を立てられるよう、自分たちで研究させると共に、指導者も適宜アドバイスする。シニアでは危険度の高いプログラムも多いので、スカウトの自主性は尊重すべきだが、安全面では決して妥協すべきではない。

指導者

 指導者に求められることは2つある。自信を持ってハイキングやキャンプの指導ができるだけの技術や知識を身に付けることと、活動を計画する際に、安全面に配慮した緻密なプログラムを立てる能力を身に付けることである。

参考書

 「ボーイスカウト安全入門」、ボーイスカウト日本連盟

WEBキャンプ場
渋谷5団のホームページ