---えどめぇるまがじん・コラム--- 

     読売         

江戸前な言葉たち
 
 

その2 おきゃん・おちゃっぴい

<文:青木逸平>

            
 「いき」で「いなせ」を江戸の男のキイワードとすれば、江戸の娘の特色を表す言葉は「おきゃん」「おちゃっぴい」でしょう。
 もうひとつ、今も生き残っている「おてんば」がありますが、こちらはただ元気で騒々しいというイメージが強い(ちなみに「おてんば」の語源はオランダ語オンテンバールで「おとなしからず・馴れず」の意というが、少々あやしい)。
 「きゃん」は江戸中期に現れた俗語で「侠」の字をあてます。最初は男女ともに使われ、字のごとく気負いの勇み肌のようすを表しました。男なら町火消、女なら深川辰巳芸者といったあたり。「侠」の中国音、または「気負い」の転といいます。やがて「おきゃん」は下町の町娘専用の言葉になって、勝気で女らしさには少々欠ける感じ、悪くいうとちょっとはすっぱな娘をいうようになりました。ただ「侠」の意味合いが効いていて「おてんば」とは一線を画する雰囲気があります。
 「おちゃっぴい」はもと「お茶挽き」、はやらぬ遊女にお茶を挽かせると、仲間うちでお喋りばかり、無駄口ばかりたたくのをいうようになり、そのうち「お喋り娘」のことになりました。やがて口八丁なら手も八丁、よく気の回る都会的な町娘の意味に。
 「おてんば」は見かけるものの「おきゃん」「おちゃっぴい」な女の子はいなくなり、言葉もともに消えかけています。江戸前の「いい女」の美質を表す語として復活を望みたいところですが、現物がいないことにはねえ......。

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