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ベアリングのメンテナンスとチューニングのお話


同じボールベアリングでも、メーカーによってかなり精度感や回り具合が違うことは、経験から学んでいる人も多いと思います。高価なものほど当然良く回る傾向がありますが、安い物でも良く回る物があり、この差が何処からくるのか?と考えて見ると、精度の差こそあるとしてもスケート用途として使う場合無視できる範囲なので、同一規格のものなら残る違いはシールド、ケージ、潤滑剤、これら3つの要素が大きく関わっていると思われます。そこでチューニングはこれら3つの要素を中心に判る範囲で適当に説明していきます。


シールドについて
ケージ(リテイナ−)について
・潤滑剤


ボールベアリングの基本構造(スケートなどに用いられる一般的なベアリングの例)

シールドを除いたベアリングの構造はこのような構成で出来ています。

写真は工業用の為、リテイナ−(ケージ)は金属製の2ピース構造でボールを挟みこんで固定する仕組みになっていますが、スケート用の製品ではほとんどの場合デルリン(製品名)と言う摩擦の少ない樹脂の1ピース構造が使われています。




シールドについて。

ベアリング選択の際、メンテナンスやチューニングをしたいと考えているなら最も重要な要素となります。取り外しが容易なものほど楽にメンテナンスやチューニングを行う事が出来るので有利です。ただし、精度の範囲に入ると思われますがシールドが中のボールやケージに接触するなどして引っかかりや抵抗となっている場合もあります。特に簡単に取り外せるシールドの場合、取り外しの度に回転具合が変化するなど神経質な物があり、ベストな状態にするには手間がかかる場合もあります。
また、ラバーシールドのように気密性は高いが使える溶剤の種類が限られている物の場合、グリスなどの脱脂を行う際、なかなか中のグリスが完全に抜けにくい場合と使うオイルやグリスによってはラバーを劣化させる事があります。ラバーシールドは取り外す事は可能ですが、シールドの肉厚が薄く取り付けの際に変形を起こし内部のボールと接触して回転を悪化させる場合や、単純にはめ込みの固定である為激しいアクションの際にシ-ルドが外れる場合もありますので取り扱いには注意が必要です。

簡単に取り外せるシールドの例

Cクリップ(スナップリング)でシールドが固定されいています。

シールドを外すときは虫ピンなどでリングの開いている両端のうち外側に傾いている方にピンを引っ掛けて内側に引っ張り出して外します

外すとこんな感じ。


ラバーシールドとグリスタイプのベアリングの例

NSKの608V

オフロード走行用に用意した両面ラバーシールドとグリスタイプのベアリングです。

かなり気密性は高いのでグリスをオイルに交換してもゴミや埃に対して比較的安心して利用できます。また、シールドと内部のボールやケージに対して隙間にゆとりがある為取り扱いを誤らなければ内部接触は起き難いので脱脂だけのチューニングだけでも効果が期待できます。工業用のベアリングをチューニングして流用したい場合には応用もしやすく扱いやすいベアリングの一つです。

ちなみにこのラバーシールドはメタルシールドを無理やり外したパンダベアリングに装着が可能です。

ラバーシールドの取り外し方

写真の様に虫ピンなどで内周側から突っ込んでてこの原理でこじ開けます。

シ-ルドや内部のボールなどに傷を付けやすいので慎重に行う必要があります。



取り外し不可のシールドをベアリングは壊さずに取り外す方法

STEP 1.

注意
取り外し不可のシールドを取り外すのですから、外したシールドの再利用は無理です。

まずはシールドの内周部分の隙間にカッターか精密ドライバーのマイナスなどを刺し込んでこじります。

ここではカッターを使っていますが、そのまま使うと刃が折れて内部に侵入してしまうので刃の部分はあらかじめペンチなどで折っています。精密ドライバーがある場合はそちらの使用をお勧めします。

STEP 2.

ある程度隙間が出来たらニッパーの先がはいるかどうか確認して、入らない様であれば隙間を広げていきます。その際奥まで挿入しすぎて傷を付けない様に注意してください。

やさしく慎重に・・・

STEP 3.

ニッパーの先が入ったらシールドを切りつつこじ開けていきます。シールドの破片が内部に入らないように切り方は考えましょう。ある程度開いてきたらラジオペンチなどでこじ開けるのが無難。

STEP 4.

写真の様に開いてくれば、もう外れたも同然です。シールドを挟んだニッパーかラジオペンチを捻るだけでシールドは簡単に外れます

外した状態の写真です

左がRAZORのノーマルベアリング。
右が市販パンダベアリングです。
パンダでは「シールドが薄い〜・・・」と注意書きに書いてありますがノーマルのRAZORのシールドと比べてみると肉眼では厚みは同じくらいです。
内部構造もケージ(リテイナ−)は金属のものでスケート用で用いられるデルリンなどの樹脂製では無いため、どちらも元は工業用であると推測されます。ここでも両者の違いはノーマルにはグリスが塗られている程度の差しか判断できません。
以上の事からノーマルの物でもチューニングによってはかなりの回転を得る事が可能と思われます。

オマケ

RAZORのノーマルベアリングのシールドを外してみると、髪の毛が入っていました。これは製造時に入ったものではなく絨毯の室内を頻繁に走行している為にシャフトには髪の毛がまとわり付きますが、その一部が内部に巻き込まれたと思われます。
ベアリングのシールドの効果の程が窺い知れる例ですね。


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