KICKBOARD WEB http://www.asahi-net.or.jp/~UG6M-KHT/kickbordjp.html


ケージ(リテイナ−)について


ベアリングの中を覗くとボールを等間隔に分けて保持する部品がある事に気付きます。この部品をケージまたはリテイナ−と言います。この部品はボールを放射状に均等に配置し一方向からの力を分散させると共に一つのボールが受けた圧力を回転しながらスムースに次のボールへと受け渡す為に重要な役割を果しています。そしてこの部品は回転するボールを固定している以上、ベアリングの回転性能に大きく関係しています。

分割した金属のリテイナ−とボール



そこでこのような摺動用途にはどのような性能が求められるかをまとめてみたのが以下のとおりです。

摺動材料として求められる性能
摺動特性:
低摩擦係数(低発熱・低動力消費・静動摩擦係数の差が小さい)、耐摩耗性、自己潤滑性、高速滑り性、低い相手材攻撃性、摩擦音・摩擦振動を発生しない

その他:
寸法精度、寸法安定性、なじみやすさ、熱伝導性、耐荷重性、自動調心性、吸振性、耐薬品性、圧入強度、異物侵入に強い、相手軸材などの選択範囲が広い、導電性、リサイクル可能、環境条件対応(真空、水中、薬液中、放射線、高・低温など)、毒性のないこと、安価なこと

ベアリングのリテイナ−(ケージ)で一般に使われている素材
 一般に工業用途のほとんどのベアリングでは金属のリテイナ−が使われています。金属の特性としては機械的強度が高い、耐熱性が高い、寸法安定性が高い、熱伝導性が良い、と言った特性があり、また化学反応などによる劣化が起き難い事から化学合成油等の種類を選ばないのも工業用途に使われる理由の一つと考えられます。欠点としては錆びが発生する、注油などのメンテナンスが必要、本来摩擦係数自体が低くは無いため潤滑剤の性能に大きく左右される、事などが挙げられます。

金属製リテイナ−

ほとんどの工業用の物がこの金属製リテイナ−を使用している。オイルタイプの場合、その回転の精密感はまさに工業!?と言った感じで感心するものがあります。欠点としては金属同士の接触が多いためオイルが黒く汚れやすいのと、マメな洗浄や注油などが必要で錆びも発生しやすいので注意が必要。


 一方、スケート用などでは樹脂製の物が主流となっています。樹脂の特徴として概略的には、不透明、耐熱性高い、耐溶剤性に優れる、流れ良好、薄肉成形に適する、耐摩擦摩耗性・摺動性良好、高剛性、高硬度、もろい、割れやすい、そりやすい、収縮率大きい、などの特徴がありますが多くの特性は強化繊維やその他の充填剤を配合することにより改善されるため、どの程度違ってくるかは、各メーカー次第です。
その数ある樹脂の中でベアリングに使われるのはエンジニアプラスティックの一つであるホルムアルデヒドの重合体であるポリアセタール(polyacetal)略称POMがほとんどです。ポリアセタールの特徴はバランスのとれた機械的性質をもち、特に耐疲労性に優れた結晶性の熱可塑性樹脂で、一般的な環境温度範囲では最も多く使用され(自動車、事務器、AVなど) 自己潤滑性もあり、成形性もよく価格的にも安価で寸法精度も良いうえに潤滑剤などの配合により摺動性は著しく向上するといった特徴があり、特に衝撃強度が非常に強いと言う事がスケート用途に使われる理由と思われます。
おなじポリアセタールであっても各化学メーカーで特性が異なり製品名も色々ですがスケート用のベアリングではデルリンが広く使われています。成形性もよく寸法精度も良いと言う特性のおかげで中国での製造を可能にし低価格、高品質なものが生まれているのかもしれません。

ポリアセタール樹脂(デルリン等の商品名がある)
(polyacetal)略称POM

デルリンを使ったケージの例。各ベアリングメーカーごとに形状など工夫を凝らしている。これらの工夫の成果は回転うんぬんよりも味として感じる事が出来るのが工業用の画一的な金属製のリテイナ−とは違うところ。ベアリングの使用条件としては劣悪な環境での使用を前提にして進化しているため、精度など無意味。一般の工業用ベアリングを扱う側からすれば作りが粗いと言われたりしますが、思想が違うのだからしかたありません。なんといってもスケーターが開発に携わるのですから。


KICKBOARD WEB http://www.asahi-net.or.jp/~UG6M-KHT/kickbordjp.html

BACK