日常茶飯

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#68 
目次

清浄機

 冬は空気が乾燥する。 エアコンの暖房をつけていると、室内はますます乾いてくるから加湿器があればいいと思ったけれど、 蒸気が出るのは目障りだから気が進まない。 第一、やりすぎると結露だとか別の問題が起きる。 たまたま雑誌にドイツ製の加湿器の記事が載っていて気化方式である。 これなら加湿しすぎずベストであるが、何でこんなに高いんだろうと思う。 それならと、空気清浄機を検討することにした。

 いまの空気清浄機は加湿機能があり、たいがいは気化方式である。 しかも電気代がかからない。 弱運転で一日約2円だと、パンフレットには書いてある。 そう、いま手元に3社の製品パンフレットがあって色々とながめてるんですがネ。 これがどう云う訳か加湿器を考えて、空気清浄機が出て来るとは思わなかった。 うちではガスヒーターは使わない。 換気もよくしている。 犬や猫もいないから空気の汚れも匂いも問題はない。 それでも、年末の大掃除でトイレや脱衣室の換気扇のフィルタに大量の綿ぼこりが詰まっていた。 乾いていたので掃除機で片付いたが、所謂ハウスダストと云うのか知らン、目に見えないホコリはあるんだな。 と、清浄機を考えるのである。

 で、空気清浄と加湿がどう関わるかと云うと、パンフレットによるのだが浄化の効果が上がるのだと。 ハウスダストや匂い、アレル物質(業界用語だろうがアレルギーを引き起こすもの?)、ウイルス、カビ菌、花粉 を強力に除去すると云う謳い文句。 だったら、アレルギー体質の人によかったり、風邪のウイルスを排除してくれるのかと云うと、 そんなことは一言も書いてない。 それはその筈(はず)で、買い薬のCMが病気が治るとは云わないのは常識で、 ましてや電機メーカが請け負うわけはない。

 怪しげなのは、イオンを放出しそれに水分子が付いてイオンが大きくなって強力に浄化できると云うことである。 だったら、かつて眉唾なマイナスイオンを言いふらした業界だもの、怪しいに決まっているが、 さて困った。 要は加湿である。 空気清浄機は二の次なんだけど。 「日延べ猶予はならんぞ」、とは落語『大工調べ』の台詞でネ。
'07年01月15日

はてなのデジタル

 音楽CDをパソコンに録音して、それを携帯プレイヤーに転送する。 何だか面倒なことをやっているが、この方が気楽に聴けるのがいい。 ちかごろはCDプレイヤーのスピーカーよりも、 携帯プレイヤーのイヤホンの方が場所を選ばないので使っている。

 ドライブにCDを入れるとパソコンの方で何やらデータを送っている。 何処かのデータベースと照合して、まもなくCDのタイトルにアーティスト、曲目と時間などのリストがずらずらと現れる。 ときにはジャケットの画像も出て来るが、珍しいことではない。
 5年以上前からそうである。 使い始めた頃は、ついでに歌詞も出て来ればいいのにと思ったが、そう云う流れに発展しなかった。 それでも不思議に思うことがある。

 最近では不正コピー防止を施したCDと云うのがあってパソコンでは再生できない場合があると、注意書きを見ることもある。 ネット時代になるとそんなメーカーが現れても気にもしないが、 パソコンに録音するときにどう云うように照合するのかと思った。 インターネットが普及して10年。 はじめはCDに目印を埋め込んでデータベースと照合できるようになったのかなぁ、と思っていたが、そうじゃない。 古いCDも使えるのだ。

 長らく聴いていないCDを幾つか試してみた。 MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の『コンコルド』、サラ・ヴォーンのバラード集『ラヴァーズ・コンチェルト』、 フォーレの『レクイレム 作品48』(クリヴィヌ指揮、国立リヨン管弦楽団/合唱団)などは、 古いのだがリストがずらずらと現れる。 すると、デジタルだとこんなことも出来るのかねぇ。
'07年01月13日

日暦

 正月の松の内はどうも新年になった気がしなかった。 と云うのは卓上のカレンダーが去年の儘だからで、 さあ松がとれたので新しいのを買いに行った。 スーパーの文具売り場のカレンダーはすまして去年の値で売っている。 ところが、百貨店は去年に売れ残ったカレンダーは季節外れの商品と思っているのか半値の赤札がついている。

 年中行事の売り物に余念なく今は雛人形を並べて忙しい。 で、売れ残りのカレンダーを物色して半値で買ってきた。 月ごとにめくるごくシンプルなもので、はしには来月と先月の分が小さく印字されている。 この前後があるのが結構役に立つのだ。

 もうひとつ取り替えているのが、カードサイズのカレンダー。 これは色々あって、表に一年分のカレンダーが載って裏には広告というのもある。 本屋のカウンターなんかに置いてある。 紀伊国屋に這入ってみるとあった。 この本屋さん創業80年だそうだ。
'07年01月11日

冬の台風

 こんなこともあるんだね。 きのうは冬型の気圧配置に低気圧が急激に発達して、北海道の中心気圧は台風並み。 ぐるぐると回る気圧線は列島を囲んでいて、各地で色々と被害が出た。 この様な低気圧を専門業界では「爆弾低気圧」と云うらしいが、 台風も爆弾も範囲は限られている。 ところが、鹿児島では強風が吹いたと云うし、 大阪空港行きの日航機が着陸前の紀伊水道上空で乱気流に巻き込まれて、 客室乗務員が浮き上がって天井に頭をぶつけ、落ちたときに負傷したと云う。 そのまま業務を続け、着陸後に自分で病院に行ったとかで、まあ無事で何より。 冬の台風並みの低気圧が、これ程広範囲に影響を与えるとはと少し驚いた。

 向田邦子脚本のドラマに『冬の運動会』と云うのがあって、舞台にかかることもある。 たしか一昨年の正月にはリメイク版のTVドラマが放送された。 『運動会』とは、東京オリンピックのことで当時は10月の開催だったと云う。 夏のオリンピックを冬にやっても構わないとは思うけれど、 冬の台風は困るだろう。 惨事は無かったものの、天変地異には謙虚でなければいけないとは思う。 でも、きょうは寒いが晴れだった。
'07年01月08日

崇徳院

 出入りの大家(たいけ)に呼ばれてきた熊五郎。 若旦那が重い病気だと云う。 方々のお医者に診(み)せたが、 どの医者もただ首をかしげるだけで病気が分からない。 ところが、二、三日前に来てもらった医者の見立てによると、 何処も悪いところはないのに痩(や)せ細っていくのは気の病(やまい)だ。 それを訊(き)き出して思いを叶(かな)えてやれば良くなる、と。 大旦那と番頭でもって懸命に訊いたが、内気な若旦那、何としても言わない。 で、とどのつまり、熊になら話をしてもいいと云うので、熊さんが呼ばれてきたのである。

 若旦那の病は恋患(こいわずら)い。 上野の清水さんへお詣りに行ったとき、茶店で休んでいたら、目の前に供の女中を三人連れた、 どこかのお嬢さん風の人が腰をかけた。 このあたり、若旦那と熊さんのちぐはぐな会話が頗(すこぶ)る可笑しい。

「あたしゃそのお嬢さんの顔を見て驚いたよォ」
「へェえ、…目が3つ?」
「そうじゃないよゥ…水の垂れる(水のしたたる)ような人なんだ…」
「それァかわいそうにねえ。 へーえ。じゃア早え話が、ミカンを踏んづけたような顔なんですかァ?」
「違うよォ。…元気ならぶつよ、もう」

 若旦那が見とれていると、向こうも若旦那を見つめている。 暫くして、お嬢さんが立ち上がったとき、膝の上の茶袱紗(ちゃぶくさ)が落ちた。 それに気づかず行きかけたお嬢さんに、急いで拾い後を追って渡すと、 真っ赤な顔をして蚊の鳴くような声で礼を言った。 それから、包みの中から短冊を取りだし何かしたためて、若旦那にその短冊を渡し軽く会釈して行って仕舞った。 見ると、「瀬を早み岩にせかるる滝川の」と云う崇徳院(すとくいん)の上の句が書いてある。 下の句は「われても末に逢(あ)はむとぞ思ふ」、 今は別れ別れになっても、末には夫婦になりましょうと云う心の歌。

 それからというもの若旦那、何を見てもお嬢さんに見える。 「床の間の掛け軸の達磨(だるま)さんがお嬢さんに見える。鉄瓶がお嬢さんに見える。 こうしていたってお前(まい)が…お嬢さんには見えない…」
「なんであっしだけ外すんだよ」、と熊五郎。

 話を聞いた大旦那、熊さんにそのお嬢さんを捜してほしいと頼む。 見つけてくれたらお前が住んでいる三軒長屋をお前にやると云われたが、 何しろ手がかりは崇徳院の上の句だけ。 雲をつかむような話で、引いてしまう熊さんに大旦那が追い打ちをかける。 倅(せがれ)の命はあと五日ぐらいしか保たない。 もし、倅に万が一のことがあったときには、お前を倅の敵(かたき)として名乗って出るッ!。

 困った熊さん、兎に角いったん家に帰って茶でも飲んで、落ち着いて考えよう。 女房に相談するが、もし見つけると三軒長屋の大家になれると訊いた女房、 「行っといで行っといで…行ってきなさい!」、と家を追い出される有様。 それから毎日、混んでいそうな湯屋、床屋を回ってセヲハヤミぃ、セヲハヤミぃと怒鳴っているが埒が明かない。 とうとう湯屋へ二十軒、床屋へ三十六軒と回り、顔がピリピリしちゃって、ふらふらンなって、 床屋で休んでいた。そこに客が入ってきた。

「ここンとこ忙しくてねえ」
「お仕事?」
「いやァ、そうじゃねェんだい。ばかなはなしなんだよッ」

 と、お店(たな)のお嬢さんが恋患いして、相手の若旦那を捜していると云う。 「その手がかりってのがばかな話なン、くだらねェんだよ」、と崇徳院の歌を詠み上げた。

 「こんなところに三軒長屋がいた」、と熊さん。 男と掴(つか)み合いになる。 床屋の親方が止めに入るも鏡が割れて。 「なあに親方、心配するねえッ。割れても末に買わんとぞ思う」。 志ん朝落語(『落語名人会27』、ソニー)、『崇徳院』の一席。
'07年01月06日

三が日

 正月の三が日はごく普通に過ごした。 雑煮に御節(おせち)、それから初詣と、いつもと変わらない。 そして相変わらずなのはテレビがつまらないこと。 毎年がこの為体(ていたらく)ぶりだからテレビは見ないのである。 ただし今年はひとつだけ、元日の夜にやっていた『相棒』の2時間半スペシャル、「バベルの塔」は最後まで見た。 ゲスト出演は大塚寧々。 ラストはどんでん返しになるのは分かるが、どうなるのだろうと見ていたンだけれど、 これにははじめから伏線が用意されている。 そのキャスティングの冗談ぶりが可笑しかった。 だって、よその番組の刑事を借りてきたようなものだもの。

 さて、元日からの三日間はテレビを見ない。 代わりに以前は、ビデオのシリーズ物なんかを纏(まと)めて見ると云うこともあった。 しかし、いつもそうだとは限らない。 で、今年は正月にちなんだ噺(はなし)を幾つか改めて聴いてみた。 勿論CDである。 例えば、『芝浜』だとか『御慶(ぎょけい)』。 『御慶』は去年の正月に書いたので(去年も似たようなことをしてるンだ)、今回は『崇徳院(すとくいん)』、 長屋の熊五郎が主人公の。 そう落語と云えば、ご隠居に八っつぁん熊さんで、その熊五郎。 この噺は邪気(じゃき)がなく、くすぐりも豊富で聴くたびに可笑しい。 続きを書くつもりでいたけれど気が進まない。 勝手な都合で恐縮するけど、これでお仕舞い(つづく)。
'07年01月05日

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