日常茶飯

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#63 
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眠気の秋

 このところやたらと眠くて仕方がない。 寝不足でそうならわかるけど、そうではない。 内田百閒ではあるけれど、 <夜は安眠する。 八時間から十時間ぐらゐ眠り続ける事は何でもない。 自分で随分賢いと思ふ事も多いが、こんなに長い時間ぐうぐう寝てゐられるところを見ると、 本当は腹のどこかが抜けてゐるのではないかと疑はしくなる事もある>(「百鬼園日暦」、中公文庫『御馳走帖』所収)

 夕方になるとお腹が空いてくる。 秋が深まるにつれて、こう云うことは珍しくない。 寝酒にウヰスキーを呑んで寝ると熟睡するので寝覚めは良い。 ところが日中は眠気を催すのは、どこかが抜けているのではないか知らと思う。 あしたからは11月。
'06年10月31日

高利貸に就いて

 ちょっと長い問答を引用する。

-- だから、山本さんもいくらお金がなくても貧乏ではないんですね。
山本 そうです。 金は天下の回りものと思っていました。 貧乏といえば四谷の堀の土手に枝振りのいい松があって、首くくりの松といってみんなそこで首をくくるんです。 内田百閒さんの家はその近所でね。
-- 百閒さんも貧乏のあまり首をくくったんですか。
山本 あなた何てことを言うんですか。 百閒は戦後芸術院会員に推されて「いやだからいやだ」って断った人ですよ。 貧乏ではあったけれど首くくるような貧乏ではない、勝手貧乏、自業自得貧乏です。 陸軍士官学校、海軍機関学校、法政大学の教授を歴任して、どうしてそんなに困るのか、 困るはずないのねえ。 何ゆえの貧乏かどこにも書いていない。 でも、まあたとえば十円借りるのにハイヤーに乗って行くような人だからね。 バカみたいなことをしてしまいには高利貸とも友になって、死ぬと葬式に行くような仲になる。 ある晩高利貸の自宅を訪ねる、どうしても金ができない。 利息もできないとことわりに行く、いくら声をかけても返事がない、 畳は赤くやけてささくれだっている、裸電球がぶらさがっている。 音もなく狐のような中年の女があらわれる。 高利貸の女房です。 百閒さんは高利貸に女房がいたことにびっくりする。 読者も共にびっくりするように書く天才です。 高利貸だって鬼でもなければ蛇(じゃ)でもない、細君がいたって当たり前なのにねえ。 でも百閒さんも戦後貧乏でなくなるともういけません。 レトリックは同じですが、魂がぬけてしまいました。 貧乏は百閒さんの文の魂だったんですね。 芸術は貧乏と関係があるのですね。
-- 高利貸は、今のサラ金ですね。
山本 高利貸が怖いことをあんた方知らないでしょう。 サラ金で知ったんですね。 昔、西洋でも金貸しは真人間ならしない商売だと蔑(さげす)みました。 物を生産するのが真人間で、 金を貸して、それが利に利を産んで、それで衣食するのは人間のすることじゃないと思っていました。 云々。

 山本夏彦の『誰か「戦前」を知らないか』(文春新書)の一節である。 山本夏彦さんが亡くなって4年になるのを想い出した。 この本の副題に「夏彦迷惑問答」とある。 孫ほど歳の離れた女性編集者を相手に戦前を語ると云うもので、 山本さん主宰のインテリア専門誌『室内』に連載された。 その珍問答ぶりは頗る可笑しかった。 あとがきにこうある。
 <どうしてこんなにトンチンカンなのと聞いたら、彼女も悩んでいたのだろう、 「共通一次」育ちだからですと言い放った。 この一語で私は釈然(しゃくぜん)とした。
 彼女は戦前の才媛に勝るとも劣らぬ頭の持ち主である。 どうして負けてなんかいない、奇手妙手で時々しっぺ返しをする、からかう、虚(きょ)をつく、 そのユーモアのセンスに私はしばしば感服した。
 ここにあるのはいわゆる「ボキャ貧」(語彙の貧困)だけである。 江戸の町人はまじめな話を眞顔でするのを野暮(やぼ)だと恥じた。 すべてを茶(ちゃ)にした。 私はよき聞き手を得てまじめを隠すことを得た>

 さて、内田百閒は「高利貸に就いて」と云う一文で、戦前の高利貸の金利が、日歩五十銭だと書いている。 日歩(ひぶ)は、利息計算期間の単位を一日として定められる利率、と国語辞典にも載っている。 元金100円に対して一日の利息何銭何厘としてあらわすから、 日歩五十銭は年利に換算すれば、182.5%になる。 おそろしい数字である。 <保証人なしの単独の証書を書く場合は、百円について日歩五十銭が普通であるから、 一ヶ月の利子十五円、一年借りると、利子だけが百八十円になる。 つまり百円借りたら、一年目には元利合わせて二百八十円なければ完済出来ないと云う計算になる>

 消費者金融と云ってもサラ金はサラ金である。 いま利息制限法の上限金利(年十五-二十%)と出資法の上限金利(二十九.二%)に挟まれた灰色金利の撤廃でもめている。 直ぐに撤廃すればよさそうなのに、そうしないのは聞かれたくない理由があるのだろう。
'06年10月28日

狐火2番

 Mozilla Firefox 2.0 がリリースされたのでインストールしようと思う。

 まずはFirefox 1.5 のメニューで、「更新を確認」を実行すると、 更新はありませんと云うから、矢張り大きなアップデートなので、ダウンロードしてインストールしないといけないンだ。

 そうなると、いまのFirefox 1.5 をアンインストールしてからと云うことになるけれど、 これが少々不安でね。 これまでの設定が引き継がれるのか、ブックマークにプラグインや、拡張機能などと、 認証サイトのパスワードをもう一度やり直すの、とか。 これらを一からやり直すのは大変だからねぇ。 で、やってみると問題なし。やれやれ。

 この作業をやりながらみていたのはドラマ『相棒』。 水谷豊と寺脇康文コンビの刑事物で、最近はあんまりドラマはみないのだけど、このシリーズはけっこうみている。 町内の人々が共謀して架空の犯人をでっちあげると云う筋書きだったが、 始めから何ンとなく想い出したのは、ヒッチコックの『ハリーの災難』である。 プロットは随分と違うけれど、何ンとなく似ているなあと思っていたら矢っ張りね、まあ結末は読めてた。
'06年10月25日

取り敢えず秋の空

 きょうは二十四節気の一、霜降(そうこう)。 ことしは10月になっても夏日が続いて、昼間なんかはけっこう暑かった。 それがようやく、朝起きる頃には肌寒く感じるようになったから、これから段々と秋は深まるのだろう。 だから、紅葉はまだこれから。

 あさっての早朝にブラウザ Firefox 2 がリリースされると云う。 フィッシング詐欺サイト警告機能などが加わるそうだ。 <偽装サイトの疑いがある場合は警告を表示して、戻ることができるようにします>と、 Mozilla Japan のサイトで予告している。 同じMozilla のメールソフトThnderbird はスパム(迷惑メール)を判別する機能があって使うほど賢くなる。 只し判断したキーワードを示してくれると参考になるのにね。

 さて、ウイルスバスターである。先日、「2007」にバージョンアップしたのだけれど、これが重いので困っている。 パソコンの電源を入れて、使えるようになるまで随分と待たされる。 設定画面を起動すると、サイドメニューと云うのが現れて邪魔なのだが、 現れないように設定しようとしても、どこを探してもないからないのだろう。 ウイルスだけでなく、スパムや詐欺サイトを請け負うらしいが、これが役に立っていないのだ。 ASAHIネットでは、メールの受信は暗号化されている。 サーバーからメールソフトで受信する間は暗号化されている。 ウイルスバスターがいくら頑張ってポートを監視してもスパムは見つからないのである。 なのに、アップデートをするとスパムなどのデータは非常に時間がかかる。 肝心のウイルスのパターンファイルは直ぐなのに。

 要するに無駄なサービスである。 「ウイルスバスター2007」は、ひとつのライセンスで3つのパソコンまで使えるようにした。 これはいいことだったが、暫くしてライセンス料を値上げすると公表した。 いい度胸だなあ。 ライバルのノートン・アンチウイルスを毎年パッケージで買う値段である。 ウイルス対策ソフトは毎年ライセンス料を摂るのは昔からで、 それをパッケージに明示したのはウイルスバスターだった。 だから、昔ノートンから乗り換えたのである。 しかし、ユーザビリティを考えないようでは考えようと思う。
'06年10月23日

麦酒の泡

 ビールを麦酒と書くのは内田百閒の真似で、 長いこと飲んでないので飲めば旨いだろうと買いにいった。 週末のスーパーは買い物客で混んでいる。 お酒の売り場も人で一杯。 まとめ買いするのか知ら、 大概がカートの買い物カゴに箱詰めの麦酒を斜めに突っ込んでレジの列で待っている。 売り場も箱を堆(うずたか)く積んでいる。

 紙をくり抜いて缶麦酒を包んだのがある。 麦酒3本と、おまけにグラスが付いたもので、 ふたつのメーカーがそれぞれの銘柄の麦酒に違う形状のグラスを付けている。 銘柄はどうでもいいとして、どちらのグラスが麦酒に合うだろうかと物色して決めた。

 内田百閒は缶詰を好んだ。 それは缶詰が文明開化の食べ物であると思ったからで、 <中身にしみたブリキの移り香さへ風味の一つに考へた>。 缶麦酒がいつ現れたかは知らないけれど、明治生まれの百閒先生は壜(びん)麦酒のことは色々と書いているが、 缶麦酒が現れるとは思ってもいなかったのか、どうだか知らないけれど。 アルミの香りほど不味(まず)いものはないので、缶麦酒はグラスで飲むに限る。

 で、おまけのグラスである。 飲み口から底へスウーッと細くなって、平らな底ではない。 丸くへこんでいる。 グラスの箱に、 「泡立つグラス」と大書してあって、グラスを傾け底の真ん中に当たるように注ぐことで、きめ細かい泡が立ちます、と。 麦酒の泡は成分が脱(ぬ)けない為の蓋(ふた)である。 さあて、旨い具合に出来ているか試そう。
'06年10月21日

ウォークマン

 電気店で、USBメモリタイプのウォークマンが7千円台である。 ソニースタイルのサイトをみると、ネットで買うより2千円以上お得なのだ。 だから買った。 尤も、ソニーで買うと3年補償なのだけれど、こう云うのは当てにならいので1年で良いと思うのだ。

 ウォークマンはソニーが思いついた和製英語で、 カセットテープの音楽を携帯して聴けるプレイヤーが世界中の人々を魅了した。 その結果、英語圏の人々を納得させた言葉である。 その後、「It's a SONY」と云うコピーをコマーシャルで流すのだが。 これはネイティブが聞いても文句なしの英語で、この話とは別に 米国人の何割か(数字は忘れたけど)は、ソニーが米国生まれの会社だと勘違いしていたと云う。

 パソコンのバイオを発売したときもインパクトがあった。 すみれ色でバイオレットとは実は洒落で、第一すみれ色、紫色は「変態」色。 「VAIO」のロゴをみるとVAは波を打っている。 これは音の波、つまりアナログの意で、IOは、1と0のデジタルと云うことらしい。 今そのブランドは色あせている。 最近ではバッテリーの回収をやっている。

 以前あるノンフィクション作家が新聞に、夢を売る製品を出すのがソニーだったのに、 そうでなくなったのは、ゲームソフトを手掛けるようになってからだと書いていた。 おっと、ウォークマンのことを書いていてソニーに脱線して仕舞った。 いざ使ってみると、このウォークマンも色々あってね。 それは、また書こうと思う。 いやぁ大変だった。
'06年10月19日

リメイク

 ひどい映画だなあと思った。 きのうの日曜洋画劇場「ポセイドン」である。 とは云っても船が転覆するところで見るのを止めたので後は知らないが、このリメイク版の米映画、 果たして劇場で公開されたのか知らないが、そうだとすれば落ちたものだな。

 演劇でも映画でも、時間と場所、それに事件を、それぞれひとつにするのがドラマの常識なのに、 船が転覆するパニック映画にテロリストを加えるのは余計である筈。

 オリジナルは「ポセイドン・アドベンチャー」。 この映画に限って、ジーン・ハックマンは太っていないのは不思議だけれど、 知らなければお薦めです。 DVDで千円以下。
'06年10月16日

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