日常茶飯

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目次

天気予報

 天気予報が当たらないのは昔も今も同じで、それを咎(とが)めるつもりはない。 一時期、よく当たるようになったと思ったけれど、一時的な気のせいだった。 それでも技術の進歩はあって、前線の通過など大きな節目は言い当てるから見事である。

 気象予報士が現れる前は、気象台の予報官がテレビに現れて解説をすることがあった。 名前は忘れたが、その元予報官が一度だけ体験談を語ったことがある。 あしたの海はひどい時化(しけ)になりますと予報したら、まんまと外れた。 大漁を逃した地元の漁師が乗り込んで来て、机を取り囲んでさんざん怒鳴り散らしたと云う。

 いつのまにか天気予報と云わないで気象情報と云うようになった。 外れようと情報に違いはない。 情報と云えば知らんぷり出来る。 と思っていたが違ってた。 気象庁、気象台は今でも天気予報と云っている。 気象情報と呼んでいるのはNHKである。 民放の方は見ないから何と呼んでいるのか知らないが、まあ似たり寄ったりだろう。

 気象予報が民間に解放された今では、テレビに気象予報士が出るようになった。 天気予報の民間会社も現れて、天気を気にする会社が顧客になった。 JAL(日本航空)のホームページには民間の天気予報が載っている。 その予報がときどき気象台と違うことがある。 どちらの方がよく当たるのか、誰か調べて発表してくれると、 予報する側も張り合いが出るだろう。 それにしても、きょうは予報の通り寒かった。
'06年03月29日

シナリオ

 以前、『七人の侍(さむらい)』の脚本がどの様に執筆されたのかを、何かで読んだことがある。 そして、いま読みはじめたのが、都築政昭著『黒澤明と「七人の侍」』(朝日文庫)で、 豊富な資料を基に、映画の誕生の過程を追跡したものである。

 脚本は黒澤と、橋本忍に小国英雄の三人で、 熱海の閑静な旅館に投宿し共同執筆された。 二階にある日本間の仕事部屋では、「朱の大机を三人が囲む。 窓に面した席に黒澤が構え、対面に橋本が、両者を左右にして小国が座る」。

 共作の方法がユニークである。 黒澤と橋本が同じシナリオを別々に書く。 それを小国が読み比べて忌憚なく意見を言う。 「何度も行きづまるが、その都度小国はその壁を破る重要な役目を果たす」。 『七人の侍』は、百姓に雇われた浪人の侍が村を野武士の襲撃から守ると云う物語で、 人物の造形が素晴らしい。 中心人物である侍大将の勘兵衛(志村喬)は「特に綿密なデザインがなされた」。 そして勘兵衛の人格や行動でドラマが動いて行く。 「七人の侍が集められるが、戦う集団としてのチームワークを組むために、さまざまな人格と能力が巧みに配される」。

 ついに七人の侍が揃って村へ乗り込むと村人は全部戸を閉めて仕舞う。 「本当だったら、ここで侍は怒って帰ってしまうところなんだ。 気位も捨てて折角来てやったのにその反抗的な態度は何か、と言ってね」(黒澤明)。 ここで、シナリオは行き詰まる。 三日ほど、「汗みどろになって考え抜いても、侍が帰る方が当然だとしか思えない」(同)。 ひとりの侍の人物設定を変更した。 それが、百姓でありながら百姓を嫌い、そこから抜け出そうとして「ニセ侍」になった菊千代(三船敏郎)である。 「菊千代を得ることでシナリオは一気に様相を変え、ダイナミックに動き出した。 緊急用の板木(はんぎ)を菊千代が打ち鳴らすことで、広場には村人が集まり、 駆けてきた侍たちと期せずして対面することになり、シナリオの難関を一挙に突き破った」。
'06年03月26日

ネット書店

 以前、本を取り寄せたことがある。 余り聞かない出版社の本で、本屋にないので取り寄せたのである。 一週間ほどして葉書が来た。 ご注文の本を取り寄せました。 つきましては所定の期間内に、この葉書を御持参されたし。 本を手に取ってご覧になり、もしお気に召しましたらお買い上げくだされまし、と云うような内容だった。

 普通は電話で知らせそうだが、葉書を使うスマートなやり方は気に入った。 しかも返品がきくのが良かった。 葉書が来たときに、買う気がしなければそのまま放っておけばいいし、 実際に本を確かめて買う買わないを決めることが出来る。 本屋はジュンク堂だったけど、もっと小さな本屋だったら返品は出来ないだろう。 届くのに一週間かかるのは余り気にならないし、実際に確かめて返品することも出来るので、 この次も利用しようと思っている。 だから、ネットで注文するネット書店を使ったことはない。

 そのネット書店について、新聞記事(毎日)からダイジェストする。 始まりは95年に丸善が手掛けて、紀伊國屋書店がこれに続いた。 業界全体の売上げは98年は25億円だったが、99年が50億円以上、 00年は95億円と急成長し、04年は670億円に膨らんだ。 現在その売上げの半分以上を占めるのが、00年に日本市場に参入したアマゾンだと云う (アマゾンは売上高を公表していない)。 1500円以上の注文は送料無料。 受注後24時間以内の商品発送が受けての急成長。

 24時間以内の発送とは本屋ではなく物流業である。 千葉県市川市にある物流センターには常時100人以上が働いて、注文のリストをもとに本を棚から拾う。 一分間に3冊がノルマだそうだ。 コンピュータによる在庫管理を徹底し、本を拾う移動距離を出来るだけ短くなるように、 集める棚の本が割り振りされていると云う。
 すでにネタを明かしたように、これは物流業である。 新聞は「活字離れ、出版不況の救世主となるのだろうか」と結んでいるけれど、 話の筋が違うんじゃないかなぁ。
'06年03月24日

二年目

 一日が終わって仕舞い、あとは寝るだけと云う本当に寝るまでの曖昧な時間を、 以前は本を読んだりテレビを見たりしていた。 テレビはニュースショー番組で、これがあんまり支離滅裂な事を云うものだから見なくなり、 代わりに作文を書くことにした。

 勝手気儘(まま)に綴っているので、ときどきは脱線ばかりで違う方向に行ったり、 書いている途中で終わったりと、あまり大きな口は利かないのがいいかも知れない。 そのうえ、寝酒が入るときもあり、書いて翌朝なんにも覚えていないこともある。 だから、成る可(べ)く悪口は遠慮しているけれど、それでか悪酔いする事はない様だ。

 段々と分かったことは、気力より体力で、忙しさとは関係ない。 だから書く気がしない日は書かない。 それでいて翌日には新鮮な気分で書きたくなる。 文章を書くことは精神にいい様である。 気分が良くなるのである。 脳科学者の云う事には、脳味噌は情報のインプットとアウトプットがあって、 その両方がないといけないらしい。 本を読んだりテレビを見たり、或いはネットを見たりするのはインプットの方で、 作文はアウトプットだから、 それでバランスが取れるのか知らないけれど書くことは気分が良い。

 毛筆の書道をする人は、好きな文字を綴ることで精神をリラックスさせるのだと聞いたことがある。 だったら、作文も手書きの方が尚更いいだろう。 手書き入力ソフトなんかが現れたら試してみたいと思うのだ。 そう云うわけで、この欄、二年が過ぎた。
'06年03月22日

マンションの見分け方

 夕飯のあとから読み始めた、碓井民朗(うすい・たみお)著『一流建築家の知恵袋 マンションの価値107』(講談社+α新書)が、 もう少しで読み終える。 本当にいいマンションを見分けるポイントを解説したもので、 一流建築家の知恵袋とは大きく出たものだ。 読んでいておもしろいのはマンション建築業界の体質と云うか悪知恵である。 目に見えるところは見栄えよくするが、 見えない部分は平気で手を抜く。

 初版は3年前なので、耐震偽装の話が出る以前だが、 欠陥だらけのマンションは元来あるのである。 著者によれば、マンション設計は経験工学だと云う。 新築マンションのモデルルームに目が眩(くら)んで衝動買いしたものの、いざ住んでみると住みづらい。 それで騙されたと云う苦情から学んで段々とマンション設計は良くなる。

 構成は、モデルルームに始まり、間取り、キッチン、トイレに浴室、窓やバルコニーなどと、 チェックすべき部分を要領よく解説している。 最新の防犯設備や室内設備についても知ることが出来るし、わかりやすく書いてある。 ロフトは梯子(はしご)で登る天井裏と知っていたが、メゾネットは知らなかった。 階段で登る天井裏だと云う。
'06年03月20日

日本語変換

 日本語入力はATOKを使っている。 きょねん何年振りかのバージョンアップをした。 長年使っている間に単語も色々と覚えさせたし、自動学習機能もあるので賢くなっている。 たいがいは思い通りに、一発で、かな漢字変換していた。 ところが最近、ときどき変換をしくじる事がある。 きのうの稿では、「編集狂時代」と書こうとローマ字で打って変換すると、「偏執狂時代」となる有様で、 目の前に見ていて暫(しばら)くは間違いに気づかなかった。 どうやら賢くなり過ぎた様である。

 余りに辞書を充実させたから混乱したのだろうと考えて、辞書の中身を整理しようと思いついた。 マニュアルは読まないので細かな使い方は分からないけれど、確か辞書を鍛えるツールがあったと思い出して、 「AI辞書トレーナー」と云うツールを見つけた。 ワープロなどの文書から、辞書に登録されていない単語を自動的に抽出して辞書に登録するらしい。 使った事がないので、ためしにこのWebページの文章、きのうの稿を学習させてみよう。 学習した単語を確認できるように設定して実行した。

 するとどうだろう。 リストに固有人名の語順を学習したと云う漢字がずらずらと並んでいる。 ただし、書いた覚えのない文字である。 初め怪しんで、思い当たった。 さては文字コードのせいだな。 このWebページのHTMLファイルは、国際規格のユニコード(UTF-8)で書いている。 ユニコードを知らないのだ。 そこで、このHTMLファイルの文字コードを従来のシフトJISに変換して、も一度やり直すと、 柳田國男などの人名がリストに現れる。 きのう、一発目の変換では、柳田国男だったから少しは賢くなった。 只、このツールはユニコードが使えない。 たいがいのWebブラウザはユニコードに対応しているのだけど、 それ以外のソフトでは対応していない場合が多い。 これは、いまのパソコンの厄介な問題であるのだが、別の話なので、また書こうと思う。
'06年03月18日

編集者

 ちかごろ、ちくま文庫のライン・アップはおもしろい。 扱うジャンルの間口が広いのである。 何年か前に出た「内田百閒集成 全24巻」はよかったし、もともと何十年も前に死んだ人の文章を読むのは好きである。 古典落語も以前は演目を集めた全集は講談社文庫にあったが、 ちくま文庫には噺家別の口演速記がある。 去年完結した「志ん朝の落語」や、いま刊行中の上方落語「桂枝雀爆笑コレクション」などと。

 その編集者で筑摩書房の幹部である松田哲夫と云う人の『編集狂時代』(新潮文庫)によると、 ちくま文庫は1985年の創刊だそうだ。 初年度から黒字で、重版商品も多く、いまでは文庫が売り上げの主要な部分を占めるようになったと云う。

 <売上げもさることながら、文庫を創刊してよかったと思ったのは、 『柳田國男全集』に入れた読者カードの一枚を読んだ時だった。 四十代のサラリーマンはこの葉書に「柳田國男が通勤の友となるとは思いませんでした」 と書いてきた。 文庫という器に入った時、全集はそれまでの「積んどく」ものから気楽に読めるものに変わってきたのだった>

 ちくま文庫の太陽と月のマークは、安野光雅さんによるデザインで、 安野さんによる装幀の本も多い。 松田さんの『編集狂時代』を読んでいたら、若いころの安野さんの写真が載っている。 松田さんは、むかし安野さんが小学校で図工を教えていたときの教え子だったのである。 話が抜群におもしろく、授業と云うよりは、寄席のような雰囲気があった。 とりわけ好きだったのは、「二等兵物語」だったと云う。 それから十数年後、編集者になっていた松田さんが、職掌柄、本屋を見て歩くことが多くなった頃のこと。 あるコーナーを占めだしている絵本群に気がついた。 若い女性が次々とその絵本を買っていく姿に惹(ひ)かれて、一冊手にとり開いてみた。 それが安野光雅さんによるものだった。

 <懐(なつ)かしかった。 ぼくは、しばらくして手紙を書いた。 「安野二等兵先生。私は武蔵野第四小学校で教えて頂いた生徒の一人です……」
 それから数年して、編集者として安野さんに仕事をお願いする機会が初めて訪れた。 〈ちくま文庫〉の創刊にあたって、この基本的なデザイン・フォーマットを、安野さんにお願いしたいと考えたのだ >
 その申し出を安野さんは二つ返事で引き受けたと云う。
'06年03月17日

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