日常茶飯

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目次

神童

 先月からASAHIネットは、五嶋龍くんをイメージキャラクターにした。 五嶋龍くんはフジテレビのドキュメンタリー「オデッセイ」で小さいころから知っている。 だから五嶋龍さんと書くと何だかこそばゆい気がするので、ここでは龍くんと呼ぶことにする。 が、17歳になったのだからもう大人といえる。 今年になってグラモフォンと専属契約を結び、この8月にデビューCDがリリースされた。

 6日の原爆の日には広島平和公園で、平和巡礼コンサートの模様をNHKがやっていた。 指揮者の佐渡裕(ゆたか)さんと一緒だった。 龍くんが7歳でパガニーニの「ヴァイオリン協奏曲」でデビューしたときの指揮者は佐渡さんだった(たしかそうだった)。 そのときから「神童」と呼ばれるようになった。

 年の離れた姉の五嶋みどりさんは海外では Midori の名で通用している。 日本人がファーストネームだけで海外で(特にアメリカで)呼ばれるのはこの人だけだろう。 14歳のときに「タングルウッドの奇跡」と云う伝説的な話がある。 1986年の夏にマサチューセッツ州タングルウッドで、 ボストン交響楽団率いるバーンスタインに呼ばれて共演したときのことである。 最後の楽章に入って弦が切れてしまった。 ヴァイオリンはG線、D線、A線、E線の四弦からなる。 その一番細いE線が切れた。 これ自体は珍しいことではない。 ソリストの傍らにはコンサートマスターがいて、コンサートマスターとヴァイオリンを交換するのが慣わしで、 そのとき演奏が止まったと云う印象はなかったと云う。 ところが、またE線が切れて仕舞った。 オーケストラはほんの一瞬止まったが何事もなかったように再開され最後までひき終えた。 この話は、翌日のニューヨークタイムズが絶賛し、 その後、「MiDori」と云う一文がアメリカの小学校の教科書に載った。 今では日本の高校英語にも採用した教科書があると聞く。
'05年08月30日

普遍と日常

 小津安二郎の『東京物語』は、笠智衆と東山千榮子が演じる老いた夫婦の周吉ととみが、 尾道から上京して、子どもたちの家を訪ねるところではじまる。 子どもたちは歓迎するが、それぞれ家庭を持ち仕事に忙しく家のことで手が一杯、 周吉たちを持て余してしまう。 挙げ句の果てが、ていのいい厄介払いで熱海に行かせたりする。 居場所を失った老父母は予定より早く田舎に帰るが、老母とみは急死する。 映画は、とみの葬儀とそれを終えて子どもたちが尾道を後にするところで終わる。

 この映画では、ふたりの女性を対照的に描いている。 杉村春子が演じる長女の志げは美容院を切り盛りするのに忙しい。 両親を邪険にし、母親の葬式がすむとさっさと帰ってしまう。 この「嫌な感じの女」として写る志げに対して、原節子が演じる戦死した次男の未亡人、 紀子は親身になって義父母の世話を焼く。 映画の終わり近くに、原節子と笠智衆のこんな会話がある。

「いいえ そうなんです わたくし 狡(ずる)いんです」
「いやァ 狡うはない」
「いいえ 狡いんです  そういうこと お母さまには 申上げられなかったんです」
「ええんじゃよ それで やっぱり あんたは ええ人じゃよ 正直で…」
「とんでもない」

 このシーンで多くの人はホロリとする。 欧米人もここで涙を流すそうだから、それがこの映画の一般的なとらえ方だろう。 ところが、これとは違った見方をするのが、坂本多加雄『スクリーンの中の戦争』(文春新書)で、出色である。 坂本氏は、「一人の人間の死を、その家族がどう受け止めて、日常に復帰していくかという、 普遍的なテーマを描いた」のが映画『東京物語』だと云う。 そして、義父母を大事にすることで、死者にすがって生きている紀子こそ「日常に復帰することに失敗した」のだと云う。 長くなるけれど、もう少し引用する。

 <小津がおそらく一貫して描きたかったのは、普遍的な人間の生活の核となる何かでした。 一言でいえば、親子関係です。 男女が出会って家庭を作るという横の人間関係ではなく、親子という縦の関係が、 結婚や親の死によって失われる過程を描いた。(中略)
 小津が丁寧に描く日常は、死や結婚により、家族の一員が欠けたときに生まれる空虚 - 寂しさをより強調します。 起伏に富んだドラマがない故に要求される緻密で豊潤な世界を構築することは、 なまなかな才能にできることではありません。(中略)
 私は、人間を「間柄」でとらえようとする和辻(哲郎)の哲学こそが、小津映画の本質だと思います。 葬儀が終わった後、家族は笑いをまじえながら食卓を囲み、 子供たちがみな尾道にいたころの、お祭りや旅行などの懐かしい思い出を口にします。 葬式という儀式を通じて死者を回想のなかに位置づけ、納得してその死を受け入れるプロセスのひとつなんですね、 この場面は。(中略)
 結婚式も同様です。 父親は、婚礼という儀式を通過することで、娘を失った事実を納得して受け入れられるんです。 小津映画の登場人物たちが、別離に際しても泣かないのは、結局、親の死、娘の結婚による、 縦の親子関係の喪失にまつわる寂しさをどう受け入れていくかを描いているからであって、 別離そのものが主題ではないからかもしれません。>

 以前、松竹編の『小津安二郎 新発見』(講談社+α文庫)を読んでいたら、 問われて小津は女優の四番バッターは杉村春子なんだと答えた、 と岡田茉莉子さんが書いていたので、そのときは原節子でないのが意外に思えた。
'05年08月28日

東京物語

 小津安二郎(おず やすじろう)生誕100周年の2003年に、松竹はDVDボックス『小津安二郎』第一集から第四集を発売した。 それから漸(ようや)く単品リリースを開始した。 『東京物語』をはじめ10タイトルが今日発売されたのだ。

 かつて、映画は映画館で観るものだと云う人は多かった。 2時間なり映画館の中に幽閉されて見ないと本物の鑑賞は出来ないと。 ところが最近、家庭向けにDVDが販売されるようになってから別の主張も現れた。 テレビの画面で見ると映像の端から端まで細部がよく見える。 くり返し見ることで些事(さじ)まで読み解くことが出来ると。

 『東京物語』を改めて見ると構図のうまさに驚く。 一つひとつのカットがまるで絵画を描くかのように創られているのである。 小津作品の評価が近年益々高まっているのも分かる気がする。 ついでに軽妙な小品『お早よう』も好きだ。

東京物語
'05年08月27日

台風情報

 強い勢力を保ったまま北上中の台風11号は、まもなく伊豆半島に接近、上陸する見込みだそうだ。 台風が近付いて来たり地震が起きたときには気象庁のホームページを見に行くようになった。 ただし、アクセスが集中するためかなかなか繋がらない時がある。 観測データも直ぐには更新されないので、結局テレビを見た方がはやかったりする。 それに気象庁のホームページはわかりやすく出来ていない。 むしろ民間の気象情報サービス会社のページを見る方がわかりやすいし便利である。

 気象庁のホームページには民間の気象情報のページへのリンクが張ってある。 その中のひとつ、「ウェザーニューズ」は出来が良い。 フラッシュ・プレイヤーを使って全国の天気図を表示する。 日本地図をマウスでクリックするとその地域の天気を表示し、段々細かくなって「ピンポイント天気」と云うのが現れる。 場所によってはライブカメラの映像を見ることが出来て臨場感がある。

 「雨雲レーダ・チャンネル」ではエリアごとに様子を見ることが出来る。 ちょうど大雨を降らす台風なので中部から関東では渦状に活発な雨が降っているのが分かる。 特に「台風チャンネル」は良く出来ている。 台風が辿ってきた経路を時間と共に動画で表示して、進路予想をビジュアルに示してくれる。 「実況リポート」では各地のユーザーが投稿したコメントで状況が分る。 いいねぇ。


ウェザーニューズ
http://weathernews.jp/
'05年08月25日

恒債無ければ、恒心なからん

 今月の上旬だったかテレビのニュースを見ていると、日銀の福井総裁が現れてにやにやしている。 何だろうと見ていたら、景気は踊り場を脱却しているとの表明だった。 政府も日銀もそろって日本経済が安定した緩やかな回復に入ったと宣言した。

 景気がよくなるのは良いけれど、それで思い出したことがある。いまのゼロ金利(0.001%)である。 銀行にお金を預けても利息は無いのである。 みんな慣れっこになって忘れているのか諦めたのか知らないけれど、誰も文句を云わない。 郵便局の定額貯金は8年前に利率は0.85%だったのが、いまは0.06%である。

 ちょうど20年前の一年を取り上げて、政治、経済、社会、文化を回顧した、 吉崎達彦『1985年』(新潮新書)をぱらぱら読んでいたら、当時の金利に触れている。 それが何と9.0625%もあったんだ。 郵貯定額貯金は5.75%。

 どうせお金の話なら借金のほうが面白い。 それで内田百閒の「無恒債(こうさい)者無恒心(こうしん)」(新潮文庫『百鬼園随筆』所収)を読み返した。 百閒先生いわく、 「小生の収入は、月給と借金とによりて成立する。 二者の内、月給は上述のごとく小生を苦しめ、借金は月給のため苦しめられている小生を救ってくれるのである」。 また百閒先生思えらく、「人はよく、お金の有難味と云う事を申すけれど、 お金の有難味の、その本来の妙諦(みょうてい)は借金したお金の中にのみ存するのである。 (中略)自分が汗水たらして、儲(もう)からず、乃(すなわ)ち他人の汗水たらして儲けた金を借金する。 その時、はじめてお金の有難味に味到(みとう)する。 だから願わくは、同じ借金するにしても、お金持ちからではなく、仲間の貧乏人から拝借したいものである」。
'05年08月24日

iPod に印税を上乗せ

 米アップルコンピュータの携帯音楽機器「iPod(アイポッド)」の価格に音楽著作権の印税を上乗せする動きがあるそうだ。 文化庁と日本音楽著作権協会などの権利者団体が、 音楽の権利者への補償金を課すようにアップルに包囲網を仕掛けていると云う。 日経新聞の記事からダイジェストする。

 MD(ミニディスク)などデジタル方式の記録媒体や録音機器は、 音楽を私的にコピーする対価として販売価格に補償金が上乗せされている。 これは、私的録音録画補償金制度と云う長ったらしい名前の制度で1993年に導入された。 本来、自分の音楽CDを自宅で録音する「私的複製」に著作権は及ばない。 ところが複製しても音質が劣化しないデジタル機器の登場で、CDの売り上げに影響する可能性が高まったとして、 特定の記録媒体や複製機器の価格に一定の補償金を上乗せするようになったと云う。 昨年度の徴収額は「録音」が23億円強、「録画」が15億円弱。

 そして、いまや主流はiPod。 MDの販売は急速に減っている。 その補償金徴収額はピーク時の5年前の6割に減った。 そこで「iPod課税」に成功すれば10億円以上の収入になると、関係者は胸算用したと云う。 この4月に委員会で本格議論がはじまり、 夏ごろにはiPod課金の道筋が整うだろうと文化庁や権利者団体は読んでいた。 だが、甘かった。 予想以上に委員の反発が激しかったと云う。 曰く。 「二重徴収となる恐れがある。 現在はコピー制御が技術的に可能で、(複製を防げないから必要という)制度導入時の論拠もない」。 委員会は先月末の意見集約もままならず、年内の決着は絶望的だと云う。

 背景に著作権法の古さがある。 著作権法が制定されたのは1899年(明治32年)。 いまはネットで流通させる時代である。 それに、「複雑な権利関係がビジネスの拡大を妨げている」。 「ラジカセ時代に始めた補償金を最新の機器に課そうとする。 少なくとも、新しいビジネスを後押しする動きとは言えない」。
'05年08月22日



 夏の晴れた午後に遠雷の音がする。 ふと見上げると夏雲が段々と近づいて来てやがて覆い被さったと思ったら、 ざあざあと雨が降り出した。 暫くすると空は晴れ渡り、地面はすっかり濡れていて、 気温はいっきに下がり涼しい風が吹いて来る。 そんな夕立や通り雨は以前は多かったような気がするが、それとも気のせいか判然しない。

 そう云えばこの夏、打ち水を一斉にやってる場面をテレビでよく見かけた。 何かのイベントに思いついたのかどうだかは知らない。 また打ち水の効果を調べる自由研究だとかで小学生がテレビに何度か出ていた。 打ち水は今年のテレビの流行なんだろうか。

 去年の夏も暑かった。 首都圏がヒートアイランド化するのは、林立するビルが海から吹く風を妨げているからだと、 去年のテレビは頻りに云っていた。
'05年08月21日

新種ウィルス

 一昨日書いた新種のコンピュータ・ウィルスの被害について、新聞やテレビが報じている。 途中から見た昨夜のNHKニュースは、被害はWindows 2000 で起きていて 電源が切れて(シャットダウンだったかも知れない)再起動を繰り返す、 と云っていた。 新聞によると、米国のCNNテレビやニューヨーク・タイムズなどの主要メディアをはじめ連邦議会、空港などに拡大し、 被害は100社・機関以上だと云う。

 それで思い出すのが、4月に起きた日本国内の主要な通信社や新聞社のシステム障害である。 パソコンが起動しなかった。 あの時はトレンドマイクロ社のウィルス対策ソフトのウィルス・パターンファイルの不具合が原因だった。 システム障害をおこした日本の主要メディアは業務に支障を来したけれど、 真面目にウィルス対策を行っていたとも云える。

 そして今度の米国の被害だけど、被害と云っても一部の企業であり、その中に主要メディアが含まれている。 新種のウィルスの感染ルートはTCPポート445番経由に限られると云う。 普通はファイアウオールでそのポートはふさいでいるだろうから外部からの感染ではなくて、 感染したパソコンをLANに繋いで感染が広がったのかも知れない。 案外と杜撰なことをやっているのだな。
'05年08月18日

BOT(ボット)

 先週10日にマイクロソフトが公表した Windowsのセキュリティ・ホールを突いて感染するワームが出現しているそうだ。 ネットに接続するだけで感染する恐れがあると云う。 修正パッチを適用していれば問題はないのだろうが、ワームの出現が早くなった。 これまでは比較的古いセキュリティ・ホールを突いたものが多かったのに。

 IT Pro の記事によると「Zotob」と呼ばれるワームだそうで、以下の活動を行うと云う。 まずTCPポート445番経由でセキュリティ・ホールを突くプログラムを送り込む。 送り込んだプログラムは本体をFTPでダウンロードして実行する。 本体が実行されると、マイクロソフトやセキュリティ・ベンダーなどへアクセス出来なくする。 更に、「ボット」として動作し、 攻撃者からの命令を待ち受ける。 そして、命令に従って特定のサイトへDoS(サービス妨害)攻撃を仕掛けたり、 自身をアップデートしたりもする。 バックドアの機能も持ち攻撃者が自由に感染マシンにアクセス出来るようになる。

 この「ボット」と云うのはまだお目に掛かったことはないけれど、新種のコンピュータ・ウイルスだそうだ。 感染すると、第三者がネットワーク越しに送ってくる命令を待ち、 感染したコンピュータから情報を盗んだり、 感染した複数のコンピュータが協調動作して特定のコンピュータにDoS攻撃をかけることも出来る。 従来のウィルスに比べて亜種が桁違いに多いことが特徴で、 ウイルス対策ソフトの定義ファイルの更新が追いついていないと云われている。 以前のIT Proの記事(7月下旬か)に、 国内インターネット・ユーザーの40~50人に1人がボットに感染していると云う調査結果が載っていたけれど、本当か知ら。


IT Pro
http://itpro.nikkeibp.co.jp/
'05年08月16日

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