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〔学習指導案〕

佐藤 美弥子

と き 七月一日 一時限目

ところ 東京成徳大学 二〇四教室

対象者 国語科教育法受講三年生

本時の目標

・少女時代の作者について理解させる

・本文の内容を理解させる

・重要な文法や単語を理解させる

本時の展開例

テキスト 高校の国語・

『更級日記 門出』一時限目(計四時限)

指導展開案

起立、礼、着席。

今日は新しいところに入ります。教科書の二三二ページを開いてください。

『更級日記』、作者は菅原孝標女です。それでは二三六ページを開いてくだ

さい。孝標女は菅原道真の五代目の子孫、お母さんは歌人藤原倫寧の娘で、

『蜻蛉日記』の作者藤原道綱母の腹違いの妹だった人です。孝標女には二人

のお兄さんと一人のお姉さんがいましたが、二人のお兄さんは文学や歌に関

わっていた人で、本文四行目に出てくる継母は高階成行女という人で、後拾

遺和歌集に一首詠んでいる歌人です。このように、文学や歌に携わる人の中

で育った孝標女は、早くから文学に興味を持った子供でした。結婚したのは

少し行き遅れて三三歳の時で、夫と死別したのは五一歳の時でした。その後、

自分の人生を振り返ってみようと思って、五三歳頃までに、一三歳から五三

歳までの出来事を思い起こして書いたのが、この『更級日記』です。

それでは二三二ページに戻ってください。今日は『更級日記』の「門出」

の冒頭の一文を半分位やっていこうと思います。○○さん、冒頭の一文をゆ

っくり読んでください。

・・・・○○さんの音読・・・・

ありがとうございます。

もう一度、同じ所を読んでもらいます。○○さん、お願いします。

・・・・○○さんの音読・・・・

ありがとうございます。それでは本文を細かく見ていきましょう。

まず、「東路の道の果て」ですが、脚注の・を見てください。これは、現

在の茨城県で、過去に常陸の国と呼ばれていた土地を指すものです。「よ

り」は動作の起点を表す格助詞で、「も」は強意の係助詞です。「なほ」は

副詞で、<さらに>とか<もっと>という意味です。「奥つ方」の「つ」は

連体修飾格の格助詞なので、これは<奥の方>という意味になります。脚注

の・を見てください。作者は十歳の時に父親の赴任地である上総の国に京か

らやって来たので、この「奥つ方」というのは上総の国を指します。「に」

は場所を表す格助詞、「生ひいで」はダ行下二段活用「生ひ出づ」の連用形、

「たる」は完了の助動詞「たり」の連体形です。

ここまでの訳を書きます。(訳を板書)ここまでを訳すと、<常陸の国よ

りもさらに奥の方の上総の国で育った人>となります。では、この「人」と

いうのは誰のことでしょうか。○○さん。

・・・・○○さんの答え・・・・

「人」というのは、この日記を書いた作者自身のことです。

「いかばかり」は状態や程度を表す副詞で、「かは」は疑問の係助詞、

「あやしかり」は形容詞「あやし」のカリ活用の連用形です。三一五ページ

の形容詞の活用表を見てください。シク活用の右側の列の「しく・しく・し

・しき・しけれ」がシク活用の本来の活用で、左の列の「しから・しかり・

・・」というのが、カリ活用と言われるものです。

二三二ページに戻ってください。この形容詞の「あやし」ですが、これは、

自分には理解しにくい異様なものを不審に思う感じで、大きく二種類に分け

ることができます。(板書して説明)こちらは現在の「あやしい」と同じで、

奇妙だ、とか、不思議だ、という意味です。こちらは、貴族の目から見て、

身分の低い者や卑しい者を「理解できない不思議なものだ」と思ったことか

らできたもので、<卑しい>とか、<粗末だ>という意味です。ここでは・

の字を当てて、<田舎びている>と訳します。「けむ」は過去推量の助動詞

「けり」です。では、これの活用形は何形でしょうか。○○さん。

・・・・○○さんの答え・・・・

「けむ」の下には「人」という単語を補うことができるので、この「け

む」は連体形です。

「を」は逆接の確定条件の接続助詞で、<〜なのに>という意味です。上

に単語を補うことのできる「を」は、普通は格助詞ですが、この「を」は例

外で、接続助詞です。ここまでを訳すと、<いかばかりかは・どんなにか、

あやしかりけむを・田舎びていたであろうに>となります。(訳を板書)

「いかに」は疑問の副詞、「思ひ始め」の終止形は「思ひ始める」ではな

く「思ひ始む」で、マ行下二段活用の連用形、「ける」は過去の助動詞「け

り」の連体形です。「に」は断定の助動詞「なり」の連用形、「か」は疑問

の係助詞です。「か」の結びは省略されていて、この下には「ありけむ」と

いう言葉を補うことができます。(板書して説明)断定の助動詞「なり」の

連用形に、疑問や反語の係助詞がつく時の結びは、「にや」の場合は、ラ変

動詞「あり」の未然形+推量の助動詞「む」の連体形で「あらむ」、「に

か」の場合は、ラ変動詞「あり」の連用形+過去推量の助動詞「けむ」の連

用形で「ありけむ」となります。

「世の中に」の「に」は場所を表す格助詞、「ものの」の「の」は主格の

格助詞で、<〜が>と訳します。「あんなる」の終止形は「あんなり」で、

「あるなり」の撥音便です。これは、ラ変動詞「あり」の連用形と、伝聞・

推定の助動詞「なり」とでできた言葉で、<あると聞いている>という意味

です。「あんなるを」の「を」は、単純な接続をする接続助詞です。「いか

で」は副詞で、<どうにかして>とか、<なんとかして>と訳します。「見

ばや」の「見」はマ行上一段活用「見る」の未然形です。それでは「見る」

を活用してもらいます。○○さん。

・・・・○○さんの答え(板書)・・・・

このように、「見る」は、「み・み・みる・みる・みれ・みよ」と活用し

ます。今度は、「見る」に似ている動詞の「見ゆ」を活用してみます。(板

書)

「見ゆ」の方は、「え・え・ゆ・ゆる・ゆれ・えよ」というヤ行下二段活

用です。「見る」と「見ゆ」との違いですが、「見る」は、自分の意思を持

って見ることで、「見ゆ」は、目の前の情景が視野に入ってくるという意味

を持っています。(図で説明)似ている単語ですが、活用も意味も違うので

覚えておきましょう。

「見ばや」の「ばや」は、自己の希望を表す終助詞で、<〜したい>とい

う意味です。「と」は引用の格助詞、「思ひ」はハ行四段活用「思ふ」の連

用形、「つつ」は反復・継続の接続助詞で、<〜し続ける>とか、<しきり

に〜する>と訳します。

それでは、ここまでの訳を書きます。(訳を板書)この続きは次回にやり

ます。

それでは○○さん、復習と予習を兼ねて、冒頭の一文を読んでください。

・・・・○○さんの音読・・・・

今日は冒頭の始めの部分を読んできました。重要な単語や難しい接続助詞

などが出てきたので、よく復習しておいてください。次回は今日の続きから

やります。

起立、礼。

 

指導内容確認

・指導予定の内容をどの程度理解させられたか。 優・良・可・不可

・板書は正確で見やすかったか。 優・良・可・不可

・時間配分は適正であったか。 優・良・可・不可

・発問と回答はかみあっていたか。 優・良・可・不可

・説明は聞き取りやすかったか。 優・良・可・不可

  〓〓〓

〔学習指導案〕

とき 十一月十八日 一時限目

ところ 東京成徳大学 二〇四教室

対象者 国語科教育法受講三年生

本時の目標

・和歌の内容を理解する

・和歌の世界を味わう

本時の展開例

テキスト 高校生の国語~「和歌 恋の歌」二時間目(計三時間)

指導展開例

起立、礼、着席。

二〇五ページを開いてください。今日は小野小町の歌からやります。「恋の歌」はあと四首ありますが、和泉式部の歌は説明が長くなってしまうので、次の授業にやります。今日やる三首をざーっと見てみてください。

平兼盛の「忍ぶれど〜」の歌と式子内親王の「玉の緒よ〜」の歌は百人一首にも入っている歌です。小野小町と和泉式部も百人一首に歌が入れられているので、そちらの方の歌も紹介していきたいと思います。

では、小町の歌を読んでもらいます。○○さん。

繙繙○○さんの音読繙 ありがとうございます。

さっき配ったプリントを見てください。助動詞は二重線で、その他の単語はただの線で書いてあります。参考にしてください。

それでは、歌の内容に入ります。

「思ひつつ ぬればや人の 見えつらむ繙繧の人のことを思いながら寝たからあの人が夢に現れたのだろうか。夢と知りせば繙繧烽オ夢とわかっていたなら、さめざらましを繙纐レを覚まさないでいたのに。」となります。

それでは、訳を書きます。

現実では逢えないけれど夢では逢える。夢というはかないものを頼りにするほどの切ない恋心を読んだ歌です。

文法を一つ見てみます。「思ひつつ」の「つつ」ですが、これには二つの意味があります。一つは反復・継続で、もう一つは二つの動作の並行です。

この歌では「思いながら寝た」ということだったので、iです。

今から書く文の「つつ」はhとiのどちらか、答えてもらいます。

「野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり」これは『竹取物語』の一文です。hとiのどちらでしょうか、○○さん。

  繙繙○○さんの答え繙繙

そうですね。これは反復・継続で、<野や山に入って竹を取っては、いろいろなことに使っていた>となります。

では、小町の百人一首の歌を紹介します。○○さん、読んでください。

繙繙○○さんの音読繙繙 ありがとうございます。

「花の色は 移りにけりな いたづらに 我が身世にふる ながめせしま に」これはとても有名な歌なので、きっとどこかで聞いたことがあると思い ます。<咲き匂っていた桜の花の色は、春の長雨に打たれてすっかり色あせてしまったことだ。そして私の容色も、すっかり衰えてしまったことよ。いたずらに恋の思いに明け暮れて物思いにふけっている間に>「ふる」は「降る」と「経る」の掛詞で、「ながめ」は「長雨」と「眺め」の掛詞です。桜の花の色や香りが衰えてゆくのと、自分自身の衰えを掛けて、小町の空しい気分を詠んだ歌です。

では、次の文にいきます。○○さん、読んでください。

繙繙○○さんの音読繙繙 ありがとうございます。

「忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人のとふまで」この歌には会話文が一つあります。それはどこでしょうか、○○さん。

繙繙○○さんの答え繙繙

そうですね。この「ものや思ふ」<物思いをしているのですか>ここが会話文です。

「忍ぶれど繙辮lに知られまいと胸に秘めていたけれども、色に出でにけり わが恋は繙辮F纒\情や態度繙繧ノ現れてしまったなあ、私の恋心は。ものや思ふと繙纒ィ思いをしているのですかと、人のとふまで繙辮lが尋ねるほどに」となります。それでは、訳を書きます。

自分では一生懸命恋心を隠していたのに、顔に出てしまった。忍ぶことが できないほどの切実な思いを暗示させている歌です。

教科書を見てください。この歌の題名は「天暦の御時の歌合」です。「天暦の御時」繙繿コ上天皇の時代繙繧フ「歌合」繙繼纔Z〇年三月三十日の内裏歌合の時に詠んだものです。歌合というのは、左右に分かれて歌の優劣を競う貴族の遊びです。その時に争った歌を紹介します。○○さん、読んでください。

繙繙○○さんの音読繙繙 ありがとうございます。

「恋すてふ わが名はまだき 立りにけり 人知れずこそ 思ひそめしか」<恋をしているという私の評判は、早くも世間に知られてしまったことだ。誰にも知られないよう密かに思っていたのに。>この二つの歌でどちらが勝ったかというと、兼盛の歌が勝ちました。二つとも甲乙がつけ難くて、優劣を決める判者が悩んでいたら、天皇が兼盛の歌を口ずさんだので、兼盛の歌が勝ち、ということになりました。負けた壬生忠見は、そのことがとても悔しくて、死ぬときには、そのせいで悶え苦しんだと言われています。

では、次の歌にいきます。和泉式部の歌は抜かすので、式子内親王の歌を、

○○さん、読んでください。 繙繙○○さんの音読繙繙

ありがとうごさいます。

式子内親王は後白河天皇の娘です。「何でショクシって読むの?シキシではないの?」と思った人がいると思いますが、これはどちらで読んでもかまいません。正確な読み方が伝わっていないから、後世の人が勝手に「シキシ内親王」とか「ショクシ内親王」とか呼んでいます。

「玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする」。玉の緒というのは、命のことです。「絶え」、「ながらへ」、「よわり」は、玉の緒の縁語です。「もぞ」は不安や心配を表すもので、<〜すると困る、〜したら大変だ>という意味です。

では、今から書く文の意味を言ってもらいます。

「雨もぞ降る」、これはどういう意味でしょうか。○○さん。

繙繙○○さんの答え繙繙

そうですね。「雨が降ったら困る」または、「雨が降ったら大変だ」という意味です。

「玉の緒よ繙緕рフ命よ、絶えなば絶えね繙辮竄ヲるならばいっそのこと絶えてしまえ。ながらへば繙繧アのまま生き長らえていると、忍ぶることのよわりもぞする繙纓心を胸に秘めている力が弱まり、人目に現れてしまったら困るから」となります。それでは、訳を書きます。

今日は「恋の歌」を三首やりました。次回は、今日抜かした和泉式部の歌と、「うつし世の歌」をやります。ざーっと目を通しておいてください。

起立、礼、着席。

指導内容確認

・指導予定の内容をどの程度理解させられたか。 優・良・可・不可

・板書は正確で見やすかったか。 優・良・可・不可

・時間配分は適正であったか。 優・良・可・不可

・発問と回答はかみあっていたか。 優・良・可・不可

・説明は聞き取りやすかったか。 優・良・可・不可

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