Last Up Date 2006.04.01          

日記を物語る 2006年03月INDEXホームに戻る 

            


03月30日(木曜日)

快晴。原稿は二日で70枚になってしまい、大幅に削って二分割。自著の再校を終えました。琴関係、書籍関係の図版も十図ほど入ります。今、版下作成の際、図版は一葉700円で済むそうです。前の出版の際、図版は経費の関係でNGだったので、出版に関するデフレスパイラルが功となることもあるのですね。ただし、版権を持つ独立行政法人の掲載許可料が明らかに値上がりしているのは困ったことではありますが。

03月31日(金曜日)

快晴。論文はいったん擱筆。不明な点はセカンドオピニオンとして、その分野の第一人者にメールで確認して意見を頂戴し、しばらくこの論文のそのものを寝かせておくことにしました。ワインの如き味が出ればよいのですが。自分の本の索引が出てきて、注釈二本と自著の校正(計600頁強)を持ち歩きながら折を見てチェック。「浜」と「濱」で同一項目が二つになっていたりするのはここで発見できます。


03月01日(水曜日)

雨。肌寒い一日。午前十時から一時間毎に出版社の編集部を三軒ハシゴする。辞典企画の前提整備に、自著の初校と索引の戻し。そして、勉誠出版では、現代語訳担当の若い先生と詳細な原稿チェックを行う。持参したおみあげは、近所にある皇室御用達 和菓子 大吾の「爾比久良」。名門百貨店でも毎月販売日指定限定品と言うレアものです。三時から明治大学で2006年度教科書会議。国語担当のスタッフが顔を揃えると、著名な研究者でもある諸先生の講義、演習の際の工夫などについて、教育者の側面もまた勉強になることばかり。懇親会では、法哲学の土屋法学部長の話や、定年の先生の御挨拶に耳を傾ける。今年は全学的には受験者数も早稲田、立命館に次ぐ三位に上昇したが、法学部は800人減であったとのこと。また国語科主任の徳田先生からは叢書編集の際のアドバイスなども頂戴して恐縮。二次会は毎年恒例の沖縄料理店で。出版に、講義に、この仲間でたちと、この一年の精進を誓ったのでした。

03月02日(木曜日)

曇り。土曜日の古典講座のため、テキストを用意する。母校の書店さんに仕入れていただきました。親子で経営なさっているのですが、お母さんから、図書館の指定業者を大手書店に変更された上に、教科書販売の売り上げが落ち込んで、たいへん厳しい状況とのお話を聞かされてどっぷり気の重い帰り道となりました。清瀬の友人の喫茶店で校正。マスターは大学の同級生。

03月03日(金曜日)

快晴。三種類の校正に目を通す。原稿書きも再開したいが目のリハビリも大切。鄙びた温泉にでも行きたいところです。

03月04日(土曜日)

快晴。安藤徹さんから『源氏物語と物語社会』(森話社.2006.02.28/\6600)を頂戴しました。昨年の秋の学会でお会いした時にはまったく話題に上らなかったので、予期せぬプレゼントにびっくり。索引を繰ると、僕よりひとつ上の(上野)項の女性社会学のパイオニアより引用回数が一回多かったことを素直に喜ぶ。午後は所沢市松井公民館で「古典に親しむ会」藤裏葉巻より。今月も時節柄「雛遊び」の話から。後半は茶話会。司会の方が気を利かして下さり、「三月三日は紫式部幼名「もも」説によると、昨日が誕生日でしたね」とのお話。この伝記もぜひまとめておきたいところ。それにしても日に日に暖かくなってきましたね 。

03月05日(日曜日)

快晴。ジムに行った他は終日、校正に読書などなど。春休みこそ、一日72時間は欲しい。やらねばならぬこと山積満載だからです。

03月06日(月曜日)

快晴。校正は小さな山を越えた小康状態。読書三昧。

03月07日(火曜日)

快晴。池袋の書店を回り、よみがえる源氏物語絵巻や新大系の買いそびれていた説話関係などを購入。前者は美麗な図版満載にして資料性も高いのでお勧め。また、僕が気になっていた『長秋記』の源氏絵制作のくだりの訓読には諸説あるものの、「源氏絵間紙」を、ともあれ「紙」と認定しているだけでも成果だと思いました。なぜかと言えば、このようにしか読めないと思うけれども異説しか流通していなかったからです。

03月08日(水曜日)

快晴。かなりペースダウンで本文校訂の再チェックなど。『大島本源氏物語』は他本と見合わせると孤立例多し。来期の教材をビデオからDVDにダビングする作業もぼちぼちやっております。

03月09日(木曜日) Special Thanks 225,000 Hits

快晴。明治の授業評価と原豊二さんの『源氏物語と王朝文化誌史』が届く。前者は、前期には目も眩むようなキツイ意見もありましたが、後期分はおおむね納得出来る内容。近代漢文の訓読はもっとゆっくり読み下し、訳すことなど。確かに悦に入って早口だったかも知れないからです。原さんの著作はタイトルがいいですね(命名者は僕ですから− p(^o^)q)。原さん架蔵の図版も、もともと古典影印がこの出版社の始発であったとのことで美麗、鮮明。内容も充実。みなさんも、ぜひ御高架をお願いします。

03月10日(金曜日)

雨。明治大学のシンポジューム『源氏物語』と平安京に出席。雨にもかかわらず、250名収容の教室は立ち見もでたほどの盛況。平安京の考古学的レポートに、建築学、日本史学、そして文学的に見地から多面的にアプローチを加えたものでした。講演要旨をまとめたレジュメも必携。休憩中、『人物で読む源氏物語』のパンフレットでもお世話になった源氏学の泰斗からお声を掛けていただき恐縮。昨日届いた原豊二さんの『源氏物語と王朝文化誌史』に目を通され、本の命名者として僕の名前を見つけられたそうで、充実した本の内容に関するお褒めの言葉を頂戴しました。自分のことのように光栄の至りです。

03月11日(土曜日)

快晴。青山学院女子短期大学同窓会国文学科会主催の「源氏物語講座」へ。一月に続き、リレー講座の第八回目を担当。タイトルは前回が「家の風として」、今回が「琴・笛・譜」。「譜」はもちろん、国宝琴譜「碣石調幽蘭第五」(けっせきちょうゆうらん)を中心に。パワーポイントを使いましたが、この「譜」がスクリーンに美しく映えていました。担当のみなさんの配慮もありがたく。

03月12日(日曜日)

曇。日曜の表参道に何年ぶりかで行く。とにかく人、人、人。喫茶店にも入れず、かなりのストレスとなる。夕方はチャンコダイニング若で。洗練されたちゃんこでした。ここでは小さな主役が大活躍。奇麗に巻いたおしぼりを頭に乗せて「おすもうさん」、鼻に充てて「ぞうさん」の瞬間藝。

03月13日(月曜日)

快晴。昨日の人並みで汗をかき風邪を引いた模様。読書三昧でのんびり過ごす。

03月14日(火曜日)

快晴。飯能市内の高校で進路講話。すっかり春の装いで景色の眺めも美しい。

03月15日(水曜日)

快晴。東京駅からの高速バスで、昨年八月に神栖町と波崎町が合併した誕生した神栖市内の高校で進路講話。 控え室でご一緒した企業の人事担当者の方のお話によると、鹿島臨海工業地帯は、2007年問題に備えて高卒の求人が激増、一気に買い手市場に転じているとのこと。すっかり象牙の塔に潜り込んでいる観のある僕にとっては、何事も勉強です。帰りがけ新聞の広告で見つけた『益田勝実の仕事2』を購入、電車の中で読み耽り、帰宅してからまた読み耽る。

03月16日(木曜日)

曇天のち雨。熊谷市内のイベント会場で進路相談会+模擬授業「源氏物語と音楽」。どちらも全員女子生徒さんが参加してくださいました。たくさんの大学・専門学校からの出校あり。

余明先生が上海からお帰りになっていると言うことで、レッスンしていただく。新たに「良宵引」をレパートリーに加えるべく、さわりからあれこれと細かい指導を頂戴しました。

03月17日(金曜日)

快晴。ただし、突風で電車が運休になるほどの一日でした。僕の窓にもプラステックがぶつかる恐怖を味わう。九十九里浜、犬吠埼のある市内の高校で進路講話+小論文指導。野球の名門高で、僕も中学生時代に、近所の高校との練習試合を見に行ったことがありました。現監督は往年の名監督の息子さんだそうです。試合開始前に挨拶をしていたことを思い起こしました。

03月18日(土曜日)

快晴。物語研究会は明治のリバテータワーで。シンポのテーマは「異本」。まるで僕のために開いていただいたような有難いテーマで、ひとり浮かれていた感じ。これは揃えて活字にしていただきたいものです。二次会、三次会と暖かい言葉をたくさんかけていただき、先輩研究者の心根の暖かさ、また友人たちの有り難みを実感する。角張っていた雰囲気がだんだん丸みを帯びてくるような気配があることを喜ぶ。

03月19日(日曜日)

快晴+突風。昨日の延長で、狭い我が家にお泊めした若い友人達と砂漠状態の武蔵野をドライブがてら食事をする。食欲旺盛、健啖ぶりに驚く。北朝霞駅まで送ってからは校正三本。学会前の刊行は確実に。

03月20日(月曜日)

快晴。川口市内の高校で進路講話。なんと07時45分にスタッフと待ち合わせて高校入り。コンビニが待ち合わせ指定だったので、僕が着いたら、スーツをばっちりかっこよく決めている若い諸君がみな口をモコモゴさせていました。大学・専門学校が50校近く出校すると言う大規模のガイダンスでした。今期はあと一回で終わり。でも六月まで予定が入っています。すでに三月だけで数回ご一緒し、馴染みになってしまった先生もあり。

03月21日(火曜日)

快晴。大塚で『枕草子』「雪山」の段。諸註を精確に読むのもひとつの試練なのですね。二次会は、昨年、『動態としての枕草子』を上梓された津島さんの出版のお祝い。周りの友人先達が、著書と学位は持っていて当然という環境を当たり前のように思っていましたが、僕の学問に有形無形の恩恵をもたらしてくれているものと思います。三次会、「お前はねぇ」と僕のおつむを叩いているお姉様がおりました(爆)。ごちそうさまです。

03月22日(水曜日)

午前中は快晴。鴻巣市内の高校で進路講話。ご一緒した母校の広報部長さんに、今年度の私大の受験動向などをあれこれと御指南頂く。一万人以上受験者を増やしたのは立教と東農大の二校、七千人減らしたマンモス私大がワーストなのだそうです。会場ガイダンスは、大学も格差社会が鮮明になる残酷な所なり。帰宅して僕の単著の図版使用許可願いを書き綴る。国立博物館の申請書はダウンロードできるようになっていることを知る。一部、著作権者を探して、中央公論新社編集部にご教示頂いたりしてほぼ完了。後はカバーのデザインなり。雨となった夜は、上京した原さんの『源氏物語と王朝文化誌史』出版祝いをふぐよしで。ぴくぴく動くふぐは美味でありました。書名にお褒めの言葉を頂戴しているようで何よりです。

03月23日(木曜日)

曇天のち雨。佐倉の国立歴史民俗博物館で「日本の神々と祭り」展へ。ナビゲターの先生の手配宜しく、招待券のみならず、図録の謹呈に預かり、VIP扱い。加えて、先生の懇切な解説付きで、出雲大社、伊勢神宮、厳島神社の成り立ちと特質、思想的背景を個人講義をしていただく。ありがとうございました。ここには紀州徳川家伝来の七絃琴「冠古」「谷響」「幽蘭」それに無銘琴の四張を蔵しています。こんどはこれも見せていただくことにしましょう。館蔵資料画像データベースで「七弦琴」と検索すると見ることが出来ます。

03月24日(金曜日)

快晴。小学生以来三十余年ぶりに歯医者さんに行く。徹底的に治しておこうと思い、それは選びに選びました。大泉学園駅を起点にしている僕は自転車でいつも通り過ぎていた閑静な住宅街のクリニックでした。紫の「白衣?」のよく似合う若い女医さんでしたが、レントゲン写真を丁寧に解説しながら、僕にとっては、結構残酷な宣告を頂戴する。「長い戦いになりますけど、がんばりましょうね」。考えてみると、親元を離れてこの方25年、はじめて「保険証」に記載がなされたほどの健康体、メンテナンスはジムで身体を動かすだけでしたが、ボチボチこちらも勉強しておかないといけないようです。午後は國學院での「小右記」の会の第二部隊「長元四年条注釈」にお邪魔をしたあと(まさしくそんな感じ)、編集作業であちこちを移動。さらにジムで水泳も少しばかり行いました。

03月25日(土曜日)

快晴。桜も綻び始める。五島美術館のよみがえる源氏物語絵巻展へ。情報として@土日より平日のほうが混んでいる。A四時半過ぎで入るのが一番待ち時間が短い。Bあさいちは観覧者の年齢構成からしてほとんど苦にならない世代故、NG。C閉館時間は延長になる。を得ていたので、環八通りのファミレスで時間をつぶし、のろのろと混み合う幹線道路を一路南下して予定の時間へ。僕の記憶では、とぐろを巻くように人が並んでいるはずのあの前庭も空いており(90、00年の『源氏物語絵巻』展をさす)、なんと車も駐めさせていただけました。模写を並べると、絵師による細部の考証、解釈の相違が鮮明になり、図録をつぶさに眺めるとまた新しい発見があるはずです。折しもこの二ヶ月は本文・注釈の行間に中村義雄先生の挿絵を入れる作業を行っていたので、調度や細部にやたら詳しく、うるさくなっている僕でした。

そんな折、帰宅すると鈴木日出男=監修・執筆王朝の雅 源氏物語の世界(別冊太陽 日本のこころ 140/平凡社、2006.04)を鈴木先生の共同執筆者である木谷真理子さんから頂戴していました。ほぼ著書一冊書き下ろしの渾身の御仕事。そのさなかに『人物で読む源氏物語』勉誠出版の書き下ろし(玉鬘、女三宮/共に刊行予定)を二本同時に書いていただいています。ありがとうございました。

03月26日(日曜日) Special Thanks 226,000 Hits

曇。母校で『元輔集』の注釈三首。厳密とは集中力と耐久力であると悟りました。尊経閣文庫の複製ですが、装飾性が強く葦手が多用されている伝俊成筆の『元輔集』の写本を紐解くのも一興です。ちなみに解説は池田亀鑑名ですが、萩谷先生の代筆です。

03月27日(月曜日)

快晴。またまた校正作業。ある章は筆が止まるほど文章が混乱しているところあり。締め切りが五本同時と言う、立て込んでいたときのものですが、推敲はなんどしても、し足りない気がします。

03月28日(火曜日)

晴のち曇り。明治のリバテータワーで古代言語蔵開の会。『続日本後紀』はもちろん所蔵してはいますが、これを丹念に読んだことはありませんでした。物語文学では直接に繋がってこないからなのでしょうが、物語前史を考える上では重要なトポスであることを再認識しました。合間に図書館に行ったところ、お世話になっている先生が何人も勉強なさっておいででした。このエネルギーが学校の底知れぬエネルギーを生んでいるのでしょう。

03月29日(水曜日)

晴。校正と原稿に終日費やす。音楽関係です。琴韻もこの陽気でよい音が出ます。「良宵引」の冒頭を何度も繰り返し、疲れたら少しうたたね。BS11の『巨人の星』は今日の一話の録画を忘れました。これが本日の最大の悔いと言う平和な一日です。大泉学園町のバス通り(通称桜通り)の桜が満開でした。


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