Last Up Date 2001.11.01          

日記を物語る 2001年10月INDEXホームに戻る              


10月30日(火曜日)

『元輔集』の注釈のため母校へ行く。『貫之集』との重出となる屏風歌のため、解釈は難航。しかし、この考証のプロセスが大切です。

10月31日(水曜日)

明治大学。漱石の「一夜」、こちらの二クラスもあと一時間というところまで来ました。来年度、明治大学は新学科三つの設立に伴い、140コマ増が見込まれるため、教室の確保が厳しいので、この一週間で出講日程の申告をせよとのこと。それゆえ、教務の担当者と視聴覚教室の確保で知恵を絞りました。


10月01日(月曜日)

明治大学。月曜日は今期初登場。テストを返し、レポートを受け取る。「論文演習」のレポートである夏休みの日記七日間は、それぞれなかなか楽しいものばかり。東南アジア旅行や、ショッピングにデート、部活の合宿などなど。今後の展開、多いに期待しましょう。

10月02日(火曜日)  Thanks 73000 Hits!!

終日、『うつほ物語』に向かう。夕方は、水泳。夜はまた勉強。

中川先生から東洋音楽学会の例会で「源氏物語の注釈」なる発表があるらしいとの情報を頂戴しました。中國音樂勉強會からの情報も貴重ですから寄ってみて下さい。

10月03日(水曜日)

明治大学。夏目漱石「一夜」。初期の難解な作品です。

10月04日(木曜日)

やはり今日も『うつほ物語』。ただしちょっと、クールダウン。

10月05日(金曜日)

明治大学。論文演習は産能短大編の『大学生の日本語/ノートを取る』を使って、「睡眠の意味」と「グリット理論」の講義から学べる事を考えました。おおいにためになったものと思います。 青山学院女子短期大学。三時限目は「女楽論」の三回目。四時限目は大学一年生のための『源氏物語』クイズから物語は始まります。みんなニコニコ。「早蕨」巻を読み終えました。

夕方、慶應大学で「小右記」の会。長元元年五月廿八日条。紫式部と思しき女房の初出箇所。黒板伸夫先生を車でお送りする。充実した一日でした。

10月06日(土曜日)

所沢の松井公民館で『源氏物語』「少女」巻。夕方からは、神田 学士会館で《フォーラム・「詩の起源」を考える》。辰巳正明先生の話題の大著『詩の起原』の出版を記念して行なわれた会でした。万葉学の泰斗がずらりとならぶ壮観な顔ぶれ。懐かしい渡瀬昌忠先生にお会いして全五巻からなる著作集刊行のお話を伺う。また辰巳先生からは参会者に『万葉集に会いたい。Love Song Road』(笠間書院.2001.10/\1600)を頂戴しました。装丁も美麗な『詩の起原』の姉妹編です。二次会は國學院の青木周平先生、院生のみなさんと御一緒に。ありがとうございました。

10月07日(日曜日)

古代文学会の例会500会記念のシンポジュウムで共立女子短期大学。この企画力はさすが古代文学会です。古橋信孝さんの『詩の起原』批判には誠実に耳を傾ける必要があるように思いました。

10月08日(月曜日)

二日間の古代文学研究の現在を体感できた余韻に浸りつつ、『うつほ物語』。そろそろ、別のテキストのことも考えたいものですね。

10月09日(火曜日)

國學院の『うつほ物語』の会は僕が約三年ぶりのレポーターでした。五本の影印と五冊の校訂本文を校合して本文を立て、諸註を集成して解釈を試みると言うオーソドックスなスタイルなのに、今、各大学の大学院で、こうした形式の演習は、ほとんど行なわれていないようです。先日の古代のシンポで、ポストモダン的思考に、テキストをつまみ食いしてはめ込むような研究を批判する、厳しい発言がありましたが、現代語訳で古典の論文を書く院生ばかりが量産されるのは、研究者養成期間における注釈軽視の傾向が拍車を懸けているようですね。変体仮名の読めない人、古典学者と自認するなかれ。と言うのが、僕の一貫した立場です。

会の始まる前に、室城秀之さんから、氏の校注になる『うつほ物語 全』(おうふう)が改訂版として再刊されるので、僕の手になる題箋も再利用するとのお話。初版をお持ちでも改訂版ですから、ぜひ御高架していただきますように。

10月10日(水曜日)

またまた雨の水曜日。明治大学。漱石との関連で芥川龍之介の『蜘蛛の糸』などの梗概などをクイズ形式で質問する。何人目かでスラスラ答えられる生徒がいて安心する。講義はやっとエンジンがかかり始めた感じですが、身体の疲労はピークに来ているような。今週は原稿を書くのを休むことにします。

10月11日(木曜日)

ノーベル賞に輝く野依良治博士はハーバード大学への留学の後、33歳で名古屋大学教授に迎えられていたと言う。凄すぎる。。。今夜は『白氏文集』でも読みますか。“楽天”家の詩人とともに。(注:「楽天家」の出典は『易経』「楽天知命《繋辞》」によりますが、白居易の字もこれに学んだものと思われます)

10月12日(金曜日)

明治大学。「論文演習」は『大学生のための日本語/ディスカッションの仕方』。ビデオをみて問題点を整理してから、ひとりひとり感想を述べてもらいました。かなり濃密な一時間だったのではないでしょうか。 青山学院女子短期大学。三時限目は「女楽」論の最終回。以前、自分が書いたものを中心にまとめましたが、十年前に書いたものを読み挙げたりするのは、気恥ずかしさをともなうもの。でも、それなりの論理は備えていて、講義中こっそり自分に感心しておりました。。。四時限は「宿木」巻を読む。巻の半分まで進めるつもりが、前半五章どまり。これでは「夢浮橋」巻まで辿りつけないな。帰りがけに見た青山通りのビル群と黄昏のコントラストはあまりにも美しく瞼に焼き付いて離れません。

10月13日(土曜日)

上野の東京藝術大学で東洋音楽学会の例会に伺う。『説話と音楽伝承』の大著で知られる、磯水絵先生の「源氏物語の音楽−注釈をめぐって」のために。『御堂関白記』の「琴」の弁別について、中世源氏学における古注の展開中、「青海波」の「詠」の見解のルーツは、定家の「第二次 奥入」に遡源されること。定家説は、実は定家説ではなく、多氏の書簡をそのまま添付したものであろうこと。また和製漢詩の朗詠は「音読み」であろうことなど、新知見に満ちたものでした。満足。

星山健さんから、菊田茂男先生編『源氏物語の世界−方法と構造の諸相』(風間書房、2001.09)を頂戴しました。卒業生の論文に加えて、旧帝大系の大家の先生の論文が並びます。菊田先生、センター試験の入試の最高責任者だったのですね。先生の「あとがき」の40年余の文学活動の感慨を綴ったくだりには感銘を受けました。星山さんに感謝。

10月14日(日曜日)

日本文学協会の『枕草子』の会。問題の段《ちごは…》を橋本治さんの『桃尻語訳』で辿り返して見ると「子供はねぇ、ヘンテコリンな弓や長い笞みたいなもんを振り回して遊んでいるの。すっごく可愛い。車なんか止めてさ、抱き入れてもみたいしさ、欲しいなァってこともあんの。そんでね、そうやってくると薫物の匂いがメチャクチャかかってくるのなんてのがさ、ホント、すっごく素敵なのよ」。なるほどね。。

10月15日(月曜日)  Thanks 74000 Hits!!

明治大学。前期とはやや趣向を変えて質問攻めにする。@島崎藤村の詩集を四つ言いなさい。A藤村の小説を二つ言いなさい。B漱石作品の登場人物を五人言いなさい。Cホトトギスの漢字を三種類書きなさい、などなど。テキストの音読や漢字テストなどを含め、ほぼクラスの三分の一の人が当たります。来週は芥川龍之介作品で勝負だ!!。「論文演習」は夏休みの日記に『大学生の日本語』の二本立て。こちらもようやく軌道に乗ってきましたね。

10月16日(火曜日)

午前中、朝一番に先月ピッキングに遭った車の助手席のキーを修理する。鋭利な金属で断ち切られていたと言う。被害総額 \8510円なり。ドライバーのみなさん、気をつけて。夕方は國學院の『うつほ』の会へ。春宮と藤壺(あて宮)の「消息文」のやりとりが、国譲り後の後宮の差配のありようを定位させているようです。

10月17日(水曜日)

またまた雨の水曜日。明治大学。月曜日と比べて日程消化が早いので、こちらはお約束の芥川龍之介作品について質問、質問。もっともっと読書をしよう。

岡部隆志さんから、『古代文学会叢書T 神の言葉・人の言葉』(武蔵野書院.2001.09)を頂戴しました。全五巻の編成の緒となる一冊。研究観の異なる、身近な他者のことばに耳を傾けることは自身を相対化することが出来るのかもしれません。

同時に届いた「古代中世国文学」(17/広島平安文学研究会、2001.09)は稲賀敬二先生追悼号。先生の「死出の旅路」への準備が、いかに厳粛なものであったのかが伝わってきました。

10月18日(木曜日)

江東区大島からおおみや市へと移動してガストでランチ。板橋区成増で水泳、さらに赤塚を経由すると言う強行日程。過労気味のため明日の予習は移動のあき時間にします。

10月19日(金曜日)

明治大学。論文演習は『日本語練習帳』を使って、「敬語」。敬語の使用法で退陣関係がわかるという話。 秋空の表参道を抜けて青山学院女子短期大学。三時限目は「横笛論」。四時限目は「宿木」巻。十一月は講義が二回しかないので急がないと、終らないことが判明しました。

夕方、慶應大学で「小右記」の会。長元元年五月廿九日条。『法華経』「方便品」の講演のくだり。帰りはいつものように黒板伸夫先生を車でお送りしました。

10月20日(土曜日)

中古文学会出席のため、羽田空港へ。8:30、定刻に離陸、10:05、予定より10分早く福岡空港に到着。地下鉄で福岡市博物館へ。東京で見逃した「天神様」をこの地で見ることが出来てラッキーでした。常設展もよかったですね。お昼は博多ラーメン。そして九州大学へ。学会は九大関係者オールキャストと言った趣でした。懇親会のあとは、中州の屋台で盛り上がる。そして博多の夜は更けて行ったのでした。

10月21日(日曜日)

雨。発表は僕個人にとって興味深いものばかり。いずれも今後の研究の肥やしとなることでしょう。帰りはいつものみなさんで反省会。。会員のみなさん、来年は風薫る五月に、聖心でお会いしましょう。

10月22日(月曜日)

稀に見る楽しい旅ではあったものの、すっかり身体は“死んだ”状態で明治大学へ向かう。はやめに着いて気分を一新。「国語」二クラスを、敬語と「一夜」の読解に費やす。「論文演習」では、『日本語練習帳』を使って、家族間、友人との“呼び名”から「敬語」を考える。なかなか楽しかったでしょう?

木曜日の日本大学文理学部国文学科の特別講義のために、甲州街道経由5分で大学に辿りつく。途中幾度か車でお送りした恩師のお宅の前を過ぎり緊張。助手さんと打ち合わせ。あとは僕の琴の調律だけです。。。

学会でお約束した、塩田公子さんが主任を務められる、岐阜女子大学文化情報メディア学科をリンクしました。インターネットを活用したパーソナルな指導を試みておられるとのこと。学校の先生方には、ぜひ参考にしていただきたいものですね。

10月23日(火曜日)

終日自宅で過ごす。先日、自転車の鍵を無くしてしまい、駐輪場に置きっぱなしにしておいたので、引き取りにゆきました。ところが、頼みの自転車屋さんが休み。そこで交番に駆け込むと「そいつぁ困ったな」と言いながら、気がついたら鍵ははずされていました。「おいら、泥棒できら」だってさ。なにはともあれ、ありがたく爽快な秋空の風の中を、地元にとって返し、最寄のお店で修理してもらう。すごく安く済んで驚いていると、駅に近いと組合があって値段が高めなのだそうです。ひとつ勉強になりました。

東洋琴学研究所の稗田先生から、Url変更の通知を頂戴しました。資料にあの「碣石調幽蘭」のテキストデータがアップされバージョンアップされていました。萬謝。

10月24日(水曜日)

明治大学。前もって内容の変更を予告しておいた、スペシャル・バージョン「君が契りの琴−『源氏物語』の音楽」。感想を書いていただき明日の参考としました。時間配分、楽器の差異の説明方法、音楽史と『源氏物語』の物語内容の比重のかけ方など、様様なアドバイスを頂戴しました。文末に「明日、頑張ってください」と何人もの人が書いてくれていました(マジ、感激)。

10月25日(木曜日)

日本大学文理学部。国文学会主催の特別講義。ビデオ故障というハプニングはあったものの、予定の三曲の演奏は奇跡的にノーミスに近い出来で安心。曲の由来の漢籍の解説から『源氏物語』明石巻へとなんとか連結しました。ちなみに、レジュメの一部はこちらに掲げました。

10月26日(金曜日)  Thanks 75000 Hits!!

明治大学。「論文演習」は「手紙の書き方」と『日本語練習帳』の「敬語」を学ぶ。次回はレポートとしての「手紙」を読むことにしましょう。 青山学院女子短期大学。三時限目は「横笛」論から「宇治十帖の音楽」へ。金曜日は休みが多いのであと五回でまとめないといけません。四時限は「宿木」巻を読了。いよいよ浮舟登場です。乞う、御期待。

10月27日(土曜日)

学燈社の牧野編集長から電話があり、昨年12号に書いた僕の文章のうち、古琴のCDについての問い合わせがあったとのこと。刊行後、一年も経っていますが、こんなこともあるのですね。午後には、古代言語蔵開の会のため、駿河台の明治大学リバティータワーへ。吉備真備の設立した二教院が重要な鍵を握るようですね。

10月28日(日曜日)

来月は三本、累計180枚の締め切りを抱えているため、そのための準備として片桐洋一『源氏物語以前』(笠間書院、2001.10)の「『源氏物語』の文献学的研究」を読む。夕方、中国から帰国された余明先生のスタジオで琴のレッスン。先生、仙台でもスタジオを開かれるとのこと。忙しさに見捨てられぬよう、せっせと稽古に励みましょう。

10月29日(月曜日)

明治大学。「国語」は漱石の「一夜」。後一回で読了と言うところにこぎつけました。「論文演習」は「デスカッション」の仕方。モデルケースを参考にこれを批判してもらう。実用性重視の演習です。


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