テレマン・アンサンブル+中野振一郎

バッハの2台・3台・4台のチェンバロのための協奏曲

2台チェンバロのコンチェルト ハ長調 BWV1061
3台チェンバロのコンチェルト ハ長調 BWV1064
4台チェンバロのコンチェルト イ短調 BWV1065
2台チェンバロのコンチェルト ハ短調 BWV1062
3台チェンバロのコンチェルト ニ短調 BWV1063
中野振一郎、森裕、下西美都、林美枝

7月11日 上野の小H




いやあ暑かったですねえ。道を歩くとネコどもがべたっとはいつくばってゼイゼイ息をしていませんでしたか。そう、ネコは夏はまるでダメなんですニャ。でもきのうからやっと秋めいてきて鈴虫の声が聞こえてきたりして。めっきり涼しくなってきましたニャ。このまま冬になるといいのだが・・・

なんてぜいたくを言っても仕方ないですが、夏休み前の最後の演奏会(たぶん?)がけっこう行けたんでレポートしますデス。テレマン協会のアンサンブルと中野振一郎を始めとするチェンバリストによるバッハのチェンバロ・コンチェルト。今年一番のめっけものだったかも知れない。前日の朝日の夕刊で記事になっちゃったからけっこうお客さんもつめかけて、ほぼ8割は埋まった感じ。当日券で4千円という演奏会も今時希少価値かも知れない。

そして何よりも4台のチェンバロのためのコンチェルトを実演で聴くのは何年ぶりだろうか。10数年前に渡辺順生がやったのを聴いた覚えがあるが、デデ個人としてはそれ以来。4台の歴史楽器がずらっと並んだ様子はちょっともうウニャウニャもんですニャ。あの狭い文化会館の小ホールにどうやって4台を並べたかっていうと、舞台のほぼ中央、普通に独奏楽器を置く位置に第一チェンバロ(デュルケン)、そこから奥に向かって順次第二、第三と並べる(第二以下はブランシェ)。視覚的には奥の楽器は見にくいし、ステレオ効果は期待できないんだが、面白いのは、ポリフォニーの引継にクレッシェンド、ディミニュエンドの効果が出てくるのじゃ。そして、中央のチェンバロの右にヴァイオリンからヴィオラまで、左にコンティヌオのチェロ、バスが位置するといった案配。

かなり珍奇な配列ではあったが、結果的には成功だったのではないだろうか。聴く前はヴァイオリンから順に3・3・2・2・1という楽器数もちょっと多いかなあと思ったわけだが、なんのなんの、やっぱり、時代楽器が4台並ぶとすさまじい音がしますニャー。ここらへんはノイペルト(現代楽器)の時代からすると隔世の感あり。

バッハの作曲した複数台のチェンバロのためのコンチェルトは全6曲。そのうちBWV1060のハ短調を除く作品が演奏された。全ての曲について細かなコメントをするのは不可能だけど、リズムの切れ味、音の柔らかさと鋭さ、そして弾むようなテンポ感、どれをとっても超一級品の味わい。テレマン・アンサンブルは一時期、時代楽器と現代楽器の二足のワラジを履いていた時代があったが、最近は古楽器に特化したのだろうか?時代楽器に即したデュナミーク、アーティキュレーションなどがすっかり身に付いていた。

それから、何と言っても5曲中4曲で第一チェンバロを弾いた中野振一郎のすばらしさ。もって生まれた才能というのだろうか、一般にはレパートリーがさほど広いとは思われていない演奏家だが、実演では本当にその作品を生き生きと描き出してくれる。フランスものが得意と目されてはいるが、バッハもなかなかのもの。重厚長大なモダン楽器の時代には考えられなかったような粋なテンポ感、しゃれた装飾、そして、本当にバッハが弾いているのではと思わせるような超絶技巧をこれでもかってな具合にたたみかけてくる。

これは才能。いくら指が回る人でも、15年前には考えもつかなかったような演奏だ。アレグロ楽章の鋭いリズム感、緩徐楽章ではヴァイオリンかオーボエのような歌もある。

というわけで、夏休み前の最後の演奏会を堪能してきましたデスニャ。バッハのライプツィヒ時代の作品。当時それが作曲者の手で毎週演奏されたという、カフェ・ツィマーマンの情景を彷彿とさせる演奏会でありました。

今回始めてわかったのだが、中野振一郎にディレクターという役割が振られていた。指揮者は相変わらずの延原武春だが、音楽は紛れもなく中野の音楽。テレマン・アンサンブルもこれからが楽しみだあ!!!




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