プラハ室内管弦楽団(w/ストルツマン)

5月23日 東京芸術劇場 モーツアルト/交響曲第39番、41番、クラリネット協奏曲

 



(音楽会の後、ヤキトリ屋DeDe Denにて)

デデ:エヘヘ、きのうに続いてほとんど同じような曲目を聴いちゃった。

CoCo:それも同じ小屋の、ほとんど同じ席で。

D:生ビール四つ、ハツにタン、それに奴。

ガンバ:今日は、ストルツマンのコンチェルトを楽しみにしてたんだけど・・・

ブチッケ:ふむ、大きな誤算があった。

G:そう。このプラハ室内管弦楽団っていうのが、すごくうまいオーケストラだったんだ。

D:指揮者のいないオケっていうとすぐにオルフェウスを思い出すけど、全然違うタイプのオケだったね。

B:うん。全く違う。オルフェウスは耳への心地よさって言うのか、環境音楽って言うのか、いわゆるイージーリスニングの線を狙った団体だけど・・・

G:だから、音楽会へ行くと眠くなるのよね。

C:よく眠れる。でも気持ちよく眠れたからってウン千円ってのは高いよね。

D:まあな。でもそれがいいって人も中にはいるんだろうし。でもこのプラハのオケはちょっと違う。チェコってのは昔から東欧の中では西洋指向の強いところなんだろうけど、この連中も最近の古楽ブームはよく知ってるって感じだったね。

G:そうそう。そこら辺がもうちょっと東寄りのオケで、東京だと目の玉が飛び出るほどのチケット代を取るオケと違うんだわ。

C:そう、10倍ほど、お代が違う。あちらはまあ、安定してるというのか、いつ聴いてもそこそこの伝統の味を出すけどね。

G:ただそれだけ。いつ聴いても伝統の味っていうのは高くつくもんね。いつぞやのクライバーの『バラ』なんて噴飯ものよ。誰も言わないけど。

D:今日のオケは、けして伝統にあぐらをかく感じじゃなかったね。

B:古楽器演奏の切れ味とか、軽快さといったものを知った上で、でもオレたちゃこっちでやるって言うような気概を感じたね。

C:人生意気に感ずってとこかぁ?

B:まあな。だもんで、昨日のトントンの演奏会と比べてすごく面白かった。

G:うん。まず、楽器の音色の違いは如何ともしがたいけど、モダンの楽器を使ってもこれだけ表現できるんだぞう〜って主張してたね。けっこう速めののテンポでグイグイって弾き進めて。

D:多分コンサートマスターの人なんだろうけど、オケの中央に立って弾きながら指揮してたね。この指揮が実に細やかでかつダイナミック。39番の1〜3楽章なんかトントンのとこよりも表情豊かだったよ。さすがに4楽章はちょっと息切れしたかな。昨日のABOの39番が良すぎたってこともあるけど。

G:でもどうしても弦楽器主導になっちゃうわね。

D:モダンのオケはどうしても弦を中心に据えてるからね。それに、モダン楽器は管楽器がどうしても丸くなっちゃうというか、調和的になっちゃうね。

B:だから、モーツアルトの時代には当然だったような音色のコントラストが出にくくなる。そこらへん、モダンでやると苦しいところかな。

D:2曲目がストルツマンのソロでクラリネット協奏曲。

G:本日のメイン・エベント。この曲では、事実上ストルツマンが指揮も兼ねていたような気がしたけど。

D:そうだったね。縦の線はコンマスが揃えて、ニュアンスはストルツマンが指示を送るって感じかな。でもそのストルツマンの指示にオケの全員がすごく良く反応するんだ。本当に心からモーツアルトに傾倒してるって様子が良く出ていたよ。

C:ストルツマンて演奏家、昔からすごく共演者に働きかけるだろ。だから、音楽がすごく暖かい。ハーレーにしろ、東京カルテットにしろ、ストルツマンのおかげで救われたっていう演奏会は多いよね。

G:うんうん。約一名救われなかった人がいるけど。

C:ピアニストのI. N. さんね。彼女は典型的なソリストなんだよ。人と音楽をやろうって気がはなからない。人の音を聴かない人だから。

G:このオケは別に救われたってわけじゃないけど、でもモーツアルトを通してストルツマンとオケの呼吸が伝わってくるような気がしたわ。

D:そう、ストルツマンが「こう行こう」って音楽で話しかけると、「うんうん」って感じで、その何倍もの乗りで応えてくる。

B:それから、モーツアルトのクラリネット・コンチェルトって、第一楽章と第二楽章に意味ありげなフェルマータが何カ所もあるんだけど、「伝統的」なウィーン様式では、さも心を込めましたって感じでちょっと立ち止まって、そのまま先に進むよね。でもストルツマンは絶対にそんなことはしない。いつも疑問に思ってたんだけど、ピアノやヴァイオリンのコンチェルトなら必ずカデンツァを入れるところで、クラリネットはなぜカデンツァを吹かなかったのかなあ。

D:???

トンボ:ボクにも生びーゆちょうだい。おばあちゃん。

G:ダーメ。お姉様ってお呼び。そしたら飲ましたる。

C:おいおい。

D:ストルツマンの演奏家としての魅力の一つは、今もみんなが言っていた対話性っていうのか、共演者に対する働きかけのおもしろさだよね。

B:演奏家にもソクラテス型とカント型がございまして・・・

D:急に何言い出すんだよ。

B:いやその、つまり、産婆のように相手から何かいいものを引き出すような演奏家と、絶対的な神の命令でございって感じで我が道を行くタイプがいるってことよ。

D:それからもう一つの魅力は、音色の美しさ。コープランドのコンチェルトのLDの中のインタビューで、毎朝起きたらこんな練習をするんだって言って、聴こえるか聴こえないかのppから、金属的なffまでロングトーンをしてみせてたけど、あの音色の変化、すごいよね。

B:そういえば、メシアンの『世の終わりのための四重奏』の中にもすごいソロがあったね。

D:そうそう、ピーター・ゼルキン達とタッシをやってた頃の名盤だね。

G:ストルツマンの音楽って癒されるわ。セロ弾きのゴーシュのネズミの子みたい。

D:エヘッ、うめそう。

C:ところで、後半の41番も盛り上がったね。

D:うん。時代楽器と違うから、音色という点ではどうしても平板になっちゃうけど、そのかわりダイナミック・レンジが段違い。

C:どうしても弦が主導になっちゃうけど、4楽章はかっ飛ばしたね。

D:それからアンコールに『フィガロ』の序曲。おかげさんであれからずっとフィガロの引っ越しのシーンが頭の中をグルグル。



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