デン・デレン・デン あるいは、「黄金時代のスペイン音楽1492〜1592」

サヴァール指揮、ラ・カペラ・レヤル・デ・カタルーニャ+エスペリオンXX
10月15日北トピア さくらホール



(アトリエ・ハウス前の空き地にて、猫正宗を飲みつつ語る)

デデ:秋になってからこれって音楽会なかったから、こうやって集まって演奏会評やるのも久しぶりだニャ。涼しくなってきたし、三日月がガンバの眉毛みたいだね。

ガンバ:何言ってんだか。デデ、もうよっぱらってんの?

D:まあまあ。今日行った北トピア音楽祭ってやつ、確か数年前からそれらしいのを始めていたけど、本格的に回数を数え始めてから2回目だね。今回は、サヴァールを中心にして、最後にはバロック・オペラまで登場する。

ブチッケ:クイケン一族なんぞを呼んでいた頃はどうなるかと思ったけど、結構形になってきましたな。

CoCo:よかったねえ。何がいいって、安くて空いてる。

G:それじゃ続かないじゃない。そうじゃなくって、やっぱりサヴァールって素敵。今日は「黄金時代のスペイン音楽」ってタイトルで、ほぼ16世紀のスペイン音楽ばっかり並べたプログラムだったけど、この人たちってやっぱり、すごいわ。古楽の演奏家って、結構レコードで名が売れてる人たちでも、聴いてみると何だこりゃって感じのが多いけど、サヴァールのところは本当のプロ中のプロの集団ね。

通りがかりの怪しの猫:うう、うめえなあ、猫正宗。エステヴァンさんの太鼓、最高っす。ヨーロッパとアフリカの味をミックスしてるよ。五線譜を意識させない、不思議な太鼓たたきだね。リルヴァンさんのヴィウエラもよかったよ。あの人はフラメンコ・ギターもうまそうだね。あのピシッという音の止め方といい、弾きながら板を叩くセンスといい・・・

B:まあまあ、順を追っていきますってえと、いとも名高きanonym氏の2曲に続いて、カルセレスの「私はここにひとりぼっち」。

「私の夫は出かけてるの・・・いつだって昼は戻らないの、今こそがその時よ、もしアナタが来たいのなら」

ブフッ、フィゲーラスが団地妻よろしく切々と歌っていると、サヴァールが粋な合いの手を入れたりして・・・あそこらへん、夫婦関係はどうなっているんでしょうな?

D:それからカルセレスの有名な「素敵な子供、ラ・ドゥルンデーラ」。アンファン・テリブルの話。そういえば誰も言わないけど、今年か来年あたりキリスト生誕2000年ってことじゃないかなあ。

G:ゲレーロの器楽作品の後、ムーア人の女の歌、グラナダ陥落の歌など、いかにもっていう曲が続けざまに演奏されたわよね。

B:レコンキスタにおける民衆のマンタリテとでも言いますか、エートスと言ってもよろしいかな。イスラムの心情になったり、キリスト教徒の建て前に戻ったり。イスラムの方がはるかに文化的にも経済的にも、色恋沙汰でも魅力が大きいんだろうけど、でもバテレンの大儀もあるし〜。でもムーア人の男ってたくましいし〜。あたし困っちゃうう。

怪しの猫:そうですね。西方の回教国って言うのか、ウマイヤ朝にまだ後ろ髪を引かれつつも、キリスト教万歳ってとこかニャー。それに、エステヴァン氏の土族的な太鼓が何とも言いがたい響きですニャー。

D:アンタ、見かけない顔だけど誰?

怪しの猫:ニャー。

D:ま、いいか。そうそう、エステヴァンて人、ヨーロッパで教育を受けた後で、セネガルでアフリカン・パーカッションを学んだとあるね。初めてサヴァールが来日したときから、この太鼓はただ者じゃないと思ってたけど、やっぱり。

G:リズムがあるような、ないような。拍子があるような、ないような。

C:それを言い出すと、今日の演奏会の半分ぐらいは拍子もリズムもないに等しい曲だけど・・・

G:まあそうね。日本の尺八や琵琶の音楽に似てるって感じもするけど。

D:そんなこんなで、十八番の「ラ・ボンバ」で賑々しく中入り。ディンディリディン、ディンディンディン。デン・デレン・デン、デン・デケ・デン。

G:なああに、その歌?・・・



D:後半は、色恋、ダンス・ミュージックが中心。こいつが結構面白いんだニャ。ここではやっぱり、打ち物と、リルヴァンのヴィウエラがすごかったね。それに、ここまであまり話題にならなかったけど、フィゲーラスを始めとする声楽陣の力量もたいしたもの。一応カペラ・レイヤールの一員っていうことだけど、カウンター・テナーのカルロス・メーナって人どう思う?

C:後半の最初の曲(「おお、輝く月よ」)で、フィゲーラスのエコーを歌ったけど、声の質がそっくりだった。最初、ステージの袖で歌っていて姿が見えなかったから、フィゲーラスのテープでも使ってるのかと思ったよ。

B:フィゲーラスはソプラノでもヴィブラートが少なくてボーイッシュな声だよね。その声の質と良く調和しているって気がしましたな。さすがに、えーと何て言いましたか、あの、コーモリのオルロフスキー歌い。

G:コヴァルスキー?

B:そうそう、コヴァルスキーもよくさらってきたものはそこそこに歌うと思うけど。彼も化けの皮が剥がれてから、太鼓持ち評論家は別として、話題にもならなくなりましたな。古楽の方では、カウンター・テナーの活きのいいのが、続々出てきますな。アンドレアス・ショルとか・・・

G:このメーナって人、若手の中ではショルほどの美声じゃないけど、チャンスよりはずっと色っぽいわね。

B:やっぱり、大陸の歌手は表現したい物がはっきりしている。ナアナア、トロドロ、なしくずしってことがないですな。

C:サヴァールの演奏会って本当に盛り上がるね。北区の公民館でやっても、最初一体なんだって顔して聴いてたお客さんが、最後には身を乗り出して暖かい拍手を送っている。

G:一流の証ね。クリスティーのところもガーディナーのところも、どこか素人っぽい部分があるし、オランダのセンセ達の音楽はかなり硬直していて昔の名前で出ていますってことが多いけど、サヴァールのは本当のプロ集団ね。

D:下卑ることなく、おもねることなく、最上の音楽を聴かせる。かなり珍奇なレパートリーには違いないけど、初めての人まで納得させてしまうんだよね。

C:日本にも似たような団体があるけど、西陣織の陣羽織を着てやればいいってもんじゃない。

B:要するに、中味ですな。


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