東京オペラシティ コンサートホール
オープニングシリーズ
ウインドウ

ネクサス(パーカッション・アンサンブル)
ストルツマン(もちろん、クラリネット)
In Reflections

ライヒ:木片の音楽(ネクサス)
ライヒ:ニューヨーク・カウンターポイント(ストルツマン)
エンゲルマン:ララバイ(ネクサス)
近藤譲:ノクターナル(ネクサス)

武満徹:雨の樹(ネクサス)
ストラヴィンスキー:クラリネット独奏のための3つの小品(ストルツマン)
ネクサス:「祈り、希望、平和」によるリフレクションズ(ストルツマン&ネクサス)
ガーナ民謡(ネクサス編曲):フラ・フラ(ストルツマン&ネクサス)

10月7日 東京オペラシティ




オペラシティのオープニング第3弾はパーカッション・グループ、ネクサスの登場。ストルツマンとの楽しい協演。最初にライヒのミニマルを2曲。「木片の音楽」は、5人の奏者がクラベスと呼ばれる拍子木を打ちならす曲。各奏者の拍子木の音高はそれぞれ異なっていて、たぶん中央の奏者が一定のリズムを刻んでいる。他の4人が順に入ってくるわけだが、それぞれ固有のリズムパターンがあるようで、それが全体としては少しずつずれていくという趣向。単調な拍子木の音なんだが、つい2週間ほど前までうるさいほど聞こえた、虫の音色を模しているような雰囲気になる。1匹が鳴き始めると、それにつられて他の虫もそれぞれの音色で鳴き出す。例えて言えばそんな感じだろうか。リズムがはっきりしてなかか楽しめる曲。

もう一つのライヒは、有名な「ニューヨーク・カウンターポイント」。これはストルツマンの十八番。日本でも来日の度に演奏している。曲のスタイルは、1曲目の「木片・・・」と同様に、リズムのパターン、メロディーのパターンを積み重ねていく様式だが、この日の演奏はかなりアクセントとシンコペーションを強調した、いわばロックンロール風のノリ。というのもたぶんホールが響きすぎるせいではないだろうか。客席のほぼ中央で聴いていたんだが、ホールの後ろに反響して帰ってくる音がはっきりと聴こえ、それが次の音と混じり合って、音楽の進行の妨げになっているような気がした。この曲はひょっとしたらカザルスホールのような、ややドライなホールでやった方が映えるかもしれない。

ララバイを作曲したエンゲルマンはネクサスのメンバー。スティール・ドラム、バス・ハーモニカ、ウォーターフォーン、チベットのシンバル、中国箏(たぶん楊琴)、日本とチベットの鉢、サンダーシート、マリンバ、カウベル、トイ・ピアノ、日本の茶碗、ダラブッカ(中東のハンド・ドラム)、木製のスリット・ドラム、テナー・ドラム、ガラガラ・・・まあこのような楽器が登場して、ウルトラ現代音楽が始まるかと思いきや、出てきたのはものすごくきれいなメロディー。カンツォーネかシャンソンかなあなんて思いながら聴いていたんだが、後でプログラムを見たら、スペインのマラガ地方やアンダルシアの情緒を喚起するムードなんだそうだ。まあともかく、美しい子守歌でありました。

近藤譲の「ノクターナル」は今回が委嘱初演。パーカツの曲なのにリズムがない、時間が流れない、とまあデデの理解を越えた音楽でありました。次の武満・・・むむうまたしても武満じゃ・・・は、大江健三郎の『頭のいい「雨の木」』にヒントを受けた作品とのことだが、水滴をため込んだ木の葉から水が滴り落ちる情景、そして水たまりの上に水紋が広がっていく様子などを勝手に想像しながら聴いておりました。

ストラヴィンスキーの「3つの小品」はもう20世紀の音楽の古典と言っていいでしょう。1楽章は深い瞑想、2楽章は・・んーとサーカスのざわめきかな。第3楽章はにぎやかなジャズとラグタイム。ストルツマンの名人芸が遺憾なく発揮された、胸のすくような快演。

当日の目玉は最後の2曲。「リフレクションズ」は即興演奏ということだが、ネクサスの5人とストルツマンとで大いに盛り上がるかと思いきや、非常に内省的、瞑想的な演奏。最後に一転して「フラフラ」は八木節のリズムとノリ。大小5つのタイコを縦横無尽にたたき出すネクサスの技量はさすが。ストルツマンも巨大なマラカスのようなものを振り回していたが、これがなかなか愛嬌があってよろしい。そのうちパーカツの1人が、横笛(たぶん鼻笛ではないだろうか)を持ち出して吹き出したんだが、この階調は日本の篠笛のそれにそっくり。むむう、ますます八木節じゃ。笛に合わせてストルツマンのクラもなにやら怪しげな即興演奏を始める。それはやっぱり学生のコンパの雰囲気。気分はすっかりガーナチョコレート、ん?やってるのは全員白人なんだが・・・



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