仲道郁代(ピアノ) ドイツ三大Bリサイタル
4月4日(金)19:00〜 カザルスホール

(“おさにゃん”さんのご投稿です)



ドイツ三大Bとは言うまでも無く,Bach,Brahms,Beethovenのこと。曲目はバッハ −パルティータ4番,ブラームス−間奏曲Op.118,全6曲,ベートーヴェン−ソナタ32 番Op.111。彼女が3年前から始めた三大Bのリサイタルも今年で四回目。今日,こ んな重々しいドイツの作曲家の音楽を,一度に三人とも取り上げるピアニストは世界 でも珍しいのではないだろうか。仲道はむしろ主にロマン派弾きで,しかも大変な美 人ということで有名な人。

この日の演奏は,最高の出来。非の打ち所がない。深みと翳りのある本当に良い演奏。 深く内省的な音楽。こんな事は滅多にあるものではない。全く驚いてしまった。彼 女がこれほどの演奏家になるとは。今までに聴いたあらゆるピアノの中で最も感銘を受けた 日になった。私は彼女をリサイタルで7,8回 は聴いているが,仲道に何があったのだろうか。(少々顔も細めになっていたが... 彼女は昨年末に出産したらしい..。)私は彼女への評価をまるっきり変えざるを得な い。彼女は素晴らしい音楽家になった。

一音一音しっかりと,しかも堂々した肉厚の音,ピアノの響きも美しく彫りが深い。 バッハはバッハの音,ブラームスにはブラームスの音がする。OP.118の2や6などは思 わず涙 が出てきた。BRAHMSの寂寥感,哀しみ,孤独といった感情を余すところ無く表現して いた。一体,三十台前半の日本人の女性にこれ程,陰翳に富んだ音楽が出来るものだ ろうか。ベートーヴェンの最後のソナタも見事と言う他にない。最初の一音から 正にベートーヴェンの世界。強い意志,集中力,確固としたゆるぎない音楽を奏でて いく。第2楽章は....ああ私は信じられなかった。天高く舞い上がっていくような, 神々しいまでのBeethovenの最後のピアノソナタ,それを完全に彼女は表現している 。ステージの上にいるのは,シュナーベルでもE・フィッシャーでもバックハウスで もケンプでもブレンデルでもない,仲道郁代なのだ。彼女のこの日の演奏は全く大家 の演奏に一歩も退けを取らないどころか,年齢を重ねた大演奏家のみが表現し得るも のであった。彼女は作曲家の心境を完全に投影することが出来る希有の演奏家になっ た,若くして。

私は誇張では無くして敢えて断言したいのだが,これは日本人の演奏史における一つ の歴史的事件と言っても過言ではないのではないか。ただただ驚いた。そして心から 感動した。彼女にはもっともっとバッハやベートーヴェンな どドイツ音楽を弾いて欲しい。仲道郁代はすごい音楽家になった。脱帽!。Encoreは エルガーの愛の挨拶。NHK衛星放送での放映(日時未定)が楽しみだ。 私は感動のあまり,暫し言葉を発することが出来なかった。彼女に心からの感謝を込めて 拍手をし,深い満足感を抱いてコンサートホールを後にした。



追伸: ブラボー柳沢!!(←むむう、深い・・・デデ)



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