レオンハルト・オルガン・リサイタル
(3月12日東京芸術劇場)


今日はちょっと寒かった。風も強くて。ねぐらから出る決心がつかなかったけど、ガンバ、CoCo夫妻が「ア〜ソビ〜ましょ」ってやって来たもんだから、一緒にオルガンを聴きに行った。(ネコは、アソビをせんとて生まれけむ、ケムケム。)

チェンバロの時と違って、今回はあの広いホールがほぼ満席。某鑑賞団体の例会になっていた上、地元自治体が住民サービスで、券をばらまいたらしい。入り口脇の、ご招待受け付けのところに延々長蛇の列。おかげで(?)開演が10分ぐらい遅れた。そういえば数カ月前、新聞折り込みの『区報』だかなんかに、レオンハルト・オルガン・リサイタルにご招待だか、ご優待だかって載ってたけど、もうその時には前売り買っちゃってたんだよね。ったく。


(音楽会の後、近所の居酒屋「粉雪亭」で)

ガンバ:今日のお客さんは普通の古楽の演奏会とはちょっと違う感じだったわね。和服着たおばさんなんかいて。ほとんど歌舞伎座みたい。

CoCo:恥ずかしかった?

G:あたいだって毛皮のコートよ。

C:一張羅のね。

G:うるさいわね。あんたの稼ぎが悪いから・・・ってわけじゃない・・か。

デデ:そういえば前回も、レオンハルトのオルガンの方は確か一杯だったよね。やっぱりチェンバロよりはオルガンの方が人を呼びやすいのかなあ。

C:オルガン見たさの人がそう沢山いるわけでもないだろうし、どうなってるんだろう。やっぱりあれだけ入ると、残響が長いホールでもちょっと音が物足りなかったね。始めが「オランダのオルガン」と題して、シャイデマン、プレトリウス、それに有名なアノニマスさんの曲をルネサンス・オルガンで弾いたけど、ちょっと物足りなかったよ。

D:いやいや、ボクはシャイデマンの二曲、プレルーディウムとコラール「主よ、汝によりて」はよかったと思う。ここのホールの木管系の音って好きなんだなあ、これが。シャイデマンって、結構エコーの効果を使うじゃない。主旋律をプリンシパル+リードかなんかで、エコーをブロックフレーテでやってくれると本当にうれしいんだな。

G:そういえば両方ともエコーのような、音色の対比を使った曲だったわね。

D:そうそう。今日のレオンハルトは、音色の対比に随分と気を配ってたように思うんだ。一曲毎にストップを頻繁に出し入れして、曲の途中でも助手の女の人がストップをいじってたし。ガンバみたいに半睡半覚醒状態で聴いてると気がつかないかもしれないけど、見方によっちゃ随分デーハーな演奏だった。

G:失礼ねえ。私だってちゃんと聴いてました。次のプレトリウスの「主よ祝福せよ」は元が合唱曲だっていうから、オルガンだとピンとこなかったけど、その次のアノニマシュサンのはちゃんと覚えてるう。

C:アノニマス(無名氏)です。

G:そのアノニマシュサンの詩篇第23番による3つの変奏。あれきれいだったわ。詩篇って言ってもグレゴリアンじゃなくてコラールかなにかかしら。元の曲は知らないけど、素朴な民謡みたいな親しみやすいメロディーよね。

D:それを手を変え品を変え見事な変奏にしていたね。

G:そうそう、一番の変奏のスケールの多用とか、二番の変奏のリズムやテンポの変化なんかはどうもスウェーリンクの匂いがしたわ。くんくん。

C:プログラムに書いてあります。スウェーリンクの可能性が強いってね。でもボクはあれだけ手が込んでくると、スウェーリンク本人よりはその弟子の世代かなあって気がする。

D:原本は1630年頃の成立っていうから、その時点以前に活躍していた人ってことになるよね。(ちなみにスウェーリンクの死んだのは1621年。これでつじつまは合うんだけど。)オネーサン、ネコ正宗もう一本ね。

C:その後の、「ドイツのオルガン」と題した部分では、ルネサンスから、バロック・オルガンに切り替えたね。構造をよく知らないけど、コンソールの向かって左がルネサンスのストップ、右がバロックみたいだね。最初にブクステフーデのプレルーディウムト短調。さすがにここら辺まで来ると音色が一層豪勢になるね。

D:この曲はトッカータみたいな自由な曲想の合間に、フーガのような部分がサンドイッチになった構造かな。今回のレオンハルトは、このような即興的な曲がけっこう乗りがいいね。その次のヨハン・カスパール・フェルディナンド・フィッシャーっていうのもよかった。(なんて長い名前なんだ!)「音楽のパルナッスス山」っていう組曲から、シャコンヌヘ長調とパッサカリアニ短調。どちらも実に堂々とした曲で、レオンハルトが音色を頻繁に切り替えていくから、変奏曲の構造が手に取るようにわかる。ネーチャン、にぼにぼおくれ。ネコ正宗も、もう一本。(紅マグロとか銀クジラとか言ってますが、デデの常食はにぼにぼ=煮干しなのです)。

G:後半もドイツのオルガンの続き。パッヘルベルのトッカータはなんだか知らないけど、あっと言う間に終わっちゃった。

C:でも豪勢に鳴らしてたね。ボクは次のアントニオ・マルティン・イ・コル(1734年没)ってのがよかったな。

D:初めて聞く名前だニャ。

G:私も。「半音階的ファルサ」っていう題名だけど、レオンハルトは全体に音量は抑えめにして、半音階の旋律をリード系のストップ使ってちょっととぼけたような味を出してたわね。スペインの修道士だったらしいけど。この時代のスペインって、もうスカルラッティーがいた頃よね。この人はスカルラッティーよりは守旧派って感じだけど、でも全体にモノフォニーが勝った感じだわね。

C:その次がジョン・ブロウの「ヴォランタリー」、それからヨハン・エルンスト・エバーリンのトッカータ。ここら辺はだんだんとレジスターを増やしていって盛り上げるぞっていう感じを出してましたな。

G:ベームのコラール前奏曲「キリストは死の絆につかせたまえり」で、ちょっぴり落ちついて・・・

C:最後がバッハだー。これでドーダーって感じの大曲を持ってくるかと思いきや、前奏曲とフーガホ短調BWV.533。デデはこの曲聴いたことある。

D:いや。記憶にないね。レオンハルトはチェンバロだとすごく繊細な味を出すけど、オルガンじゃちょっと小回りがきかないのかなあ。特にここのオルガンは。ペダル・ソロのところなんか横綱土俵入りって感じで、膝に手を添えて踏み込んでたけど、いかんせんレスポンスが遅すぎるよね。この楽器は。

C:そうそう。最後のソナタイ短調っていうのもそんな気がした。何かの編曲ものらしいけど。それにちょっと調律も狂ってなかった?ヴォックス・フマーナでもないのにユニゾンでうなりが出たり、1+1/2'とか倍音を強調するストップがやけに飛び抜けて聴こえたりして、

G:バランスが悪かったわね。オルガンじゃないけど、ラヴェルのボレロでもピッコロが吹き過ぎることってよくあるわよね。

D:そろそろガルニエさんにご登場願わないとダメかな。ね、ね、ネーチャン、ネコ正宗もう一本ね。

G:そろそろ止めたら。デデは飲み過ぎよ。

C:そうだよ。

G:あんただって人のこと言えないでしょ。

C:にゃー。


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