CoCo:またまた、北トピア音楽祭に行っちゃった。今日はヨーロッパで大活躍のヒロ・クロサキを中心として、木村美穂子、シモン・ヘイリック、イサベル・セラーノという4人のヴァイオリンと、若いソプラノのイザベル・プールナールの演奏会。
ガンバ:ヒロ・クロサキと木村美穂子、それに今度(28〜29日)「ピグマリオン」を指揮する寺神戸亮とか、日本人(?)のヴァイオリンが大活躍だよね。ただ紹介文では、寺神戸亮がパリ音楽院教授、ヒロ・クロサキがウィーンとザルツブルクの講師ってなってるけど、センセになっちゃうと演奏家として先が心配なんだよね。
C:まあまあ抑えて。今日は前半がテレマンの4つのヴァイオリンのための協奏曲で始まって・・・
G:テレマンてやっぱりすごい作曲家ね。何がすごいって、本当のど素人でも結構楽しめる音楽を書いてるんだけど、でもそれなりに技巧の限りを尽くしていて、本当に面白いわ。
C:うん。イタリア風の教会ソナタの形式だけど、4つの楽章でそれぞれに楽器の持ち味をよく発揮してるよね。次に、パーセル(1659-1695)と同時代の作曲家の作品が数曲。プールナールも加わったんだけど・・・
G:ここらへんは、作曲家の技量がよく見えたわ。大陸に比べると、イギリスの芸術家ってどうしてもイマイチでしょ。絵画でも、文学でも。そんな中で、パーセルって“天才”ってもてはやされるけど、どうなんだろう。去年のクリスティーのところがやった「妖精の女王」もモリエールの「病は気から」に比べると、才能の欠如が明らかだったけど。
C:ああやって並べてやるとかわいそうだよね。でもあの時は上演方法というのか、演奏自体、工夫が足りなかったよね。特に「妖精の女王」の方は。
G:今日も、北トピアの小ホールっていうすごくドライなホールだったせいもあるけど、どうもピンと来なかったニャー。
C:間に器楽だけの4声のパヴァーヌを挟んでいたけど、これも本来はガンバの曲だろう。
G:ニャー。
C:それが、ヴァイオリンだとどうもしっくり来ない。なんか鳴りすぎてるってかんじかな。
G:やっぱパーセルはガンバよね。フムフム。
C:で、前半は最後にもう一曲テレマンをやって終わり。
G:後半は良かったね。
C:全部おフランス尽くし。おいらは最初のルクレールの2つのヴァイオリンのためのソナタが気に入ったニャ。半拍遅れできわどく弾き交わすカノン風の一楽章。色気タップリのサラバンド。第三楽章もカノン風の入りでそのあとグジャグジャ。
G:おフランス物って譜ヅラはすごく単純でしょ。ルクレールはどうかわからないけど。+とか〜とか不思議な記号が散りばめられてるけど、五線譜自体は至って単純よね。そこをどう色づけするかって問題よね。後半になったら演奏者の顔色が変わったみたい。ヒロ・クロサキと木村美穂子の二重奏だったけど、本当に慣れ親しんだ音楽をやってるって感じね。
C:確かに、フランス・バロックは面白いからなあ。クロサキも木村も、クリスティーやヤコプスのとこで、フランス物やる機会が多いだろうし。
G:ラモーのオペラからの編曲物も楽しかったわ。
C:そうだね。どういう人か知らないけど、ラベ・ル・フィスって人の編曲による「ピグマリオン」、「プラテ」それに「優雅なインド人」。ここらヘンから俄然乗ってきたね。
G:やっぱりバロックはオペラよ。オペラがなきゃバロックじゃない。あの語り口・・・
C:うん。サヴァールの時にも話題になったけど、語りこそバロックの本質だね。モンテヴェルディが通奏低音とレチタティーヴォをもってバロック音楽を切り開いたとき、言葉こそ本質だった。
G:パルラーレ・カンタンドね。
C:そう。それで、モーツアルトの同時代人サリエリになると、音楽が第一になっちまう。これは一体何なんだ。
G:形式の変化が第一の理由だろうけど。
C:でも、フランス・バロックは17世紀からメロディー中心で、ポリフォニー的な側面はどんどん切り詰めて行ったよ。
G:ふーむ。
C:一時代前の人だけど、パイヤールなんていう人はフランス・バロックっていう概念すら認めなかったよね。
G:確かに、フランス語では前近代はすべて古典派ね。
C:でも、今晩みたいに舞台での上演を彷彿とさせるような演奏に出会うと、やっぱりフランスにもバロックはあったんだって気がするんだ。
G:そうね。楽器で語るのよね。フランスのバロック・オペラって実演は見たことないけど、舞台を彷彿とさせるような演奏だったわ。
C:ビオンディもそうだったけど、バロック・ヴァイオリンのレヴェルがぐんと上がってきて、楽器の技術を意識しないで済むようになってきたのかなあ。とにかく、4人のヴァイオリンがすごくおしゃべりだったね。
G:でも、2人の日本人に比べるとあとの2人がちょっと・・・
C:まあそうだけど。
G:プールナールってソプラノもとっても清楚な語りを披露してくれたわね。
C:「ピグマリオン」が楽しみだニャ。