Aプロ:「虎牢関」、「小宴」、「金鎖陣」
Bプロ:「鳳凰二喬」、「戦馬超」
5月15日〜18日 東京芸術劇場中ホール
ただ本質的に違うのは、役者が歌も歌うという点。青龍刀や槍、矛なんかで大立ち回りをやったあと、息も切らさずに一曲歌ってみせる。ここらへんがすごいところ。 今回は上記の二通りのプログラムですが、いずれも三国志からの演目。「虎牢関」と「小宴」は三国志のごく始めの物語。勇猛だがちょっとおまぬけな呂布(りょふ)がからんだ芝居です。「虎牢関」では呂布と関羽、張飛らの立ち回りが見どころ。空手や剣道なら寸止めって言うんでしょうか、まさに真剣勝負の迫力がある上に、体操の床運動さながらの宙返りの連続技などもぴたっと決まる。やっぱり体操は中国だよね。
うってかわって「小宴」はしっとりとしたお色気の芝居。呂布父子を、世に言う「美女連環の計」にはめようとする一場面。中国三大美女の一人といわれる豹蝉(ちょうせん、ちょっと文字が違うけど許してちょ)の色香に迷った呂布の腑抜けた仕草が見どころ。(ちなみに三大美女のあと二人は、「西施がかんばせをなからしむ」とたとえに出される傾国の美女西施と、覇王別姫の虞美人・・・でよかったかな?ともかく、楊貴妃何ぞは及びもつかない超弩級の美人ぢゃ。そういえば、映画「覇王別姫」も名作であったニャ。邦題は「さらば我が愛」だったな。)
「金鎖陣」は曹仁と趙雲との合戦が中心。趙雲役の葉金援という役者が見事。日本にも相当ファンがいるみたいで、登場しただけで拍手がわき起こる。
Bプロの「鳳凰二喬」は女の立ち回りと、色仕掛けを両方味わえる演目。絢爛豪華な衣装もあでやかな舞台です。
最後の「馬超戦」は馬超と張飛の一騎打ちのお話。孫子の「夜戦すべからず」の掟を破っての夜半に及ぶ戦いが見どころ。これも馬超役の葉金援が素晴らしい出来でした。
とにかく豪華な衣装と、簡素な舞台での立ち回り、これに尽きます。一度ご覧になったら病みつきになるかも。ドラ、チャルメラ、胡弓なんかの賑やかな音楽で心ウキウキ。歌舞伎と似た様式美の世界だけど、スピーディーな立ち回りや、賑やかな音楽、ケレン味タップリの見得など、エンターテインメントに徹している点で、はるかに現代的な演劇です。
7月の中旬まで全国各地で公演するようですから、皆さんのお近くに来たらぜひのぞいてみてね。
ちなみに、東京での追加公演は、6月7日(土)が昼夜で、Aプロ、Bプロ。翌8日がBプロです。