コープマン指揮、アムステルダム・バロック・オーケストラ

モーツァルト/交響曲39番、41番 5月22日 東京芸術劇場

 



コープマン+ABOの演奏会については、前項でやまもとさんが書いておられるので、 今日のデデは、勝手な感想文だニャ。



雨上がりのちょっと蒸し暑い夕方、芸術劇場の入りは半分くらいだったかな。おそらくレクイエムの日にはもうちょっと人が集まったのかもしれない。ここでトントンのモーツアルトを聴くのは確か5年ぶりかな。出し物をよく覚えずに行ったら、舞台上にバスドラとシンバルがおいてあったもんだから、てっきりチャイコフスキーの4番かと思ったら(そんなこと思うやついるわけないだろ)、1曲目は「後宮からの誘拐」の序曲。古楽器の大太鼓やシンバルってあるのかなあ???

やや、ゆっくりとしたテンポで弦が入ってきて、5小節目からシンバルとトライアングルとバスドラが主を誉め称える、じゃなかった景気をつける。打ちものが入ってくるとよくわからなくなるけど、弦の透明感と艶はやはり極上。

2曲目はお目当ての39番。出だしのティンパニの「ドーン・ドロロン」の決然とした響き、これでとたんに18世紀の世界に引き込まれちまったよ。このナハティハールって太鼓屋さん、おいらは好きだな。

序奏の後、主部に入るとそこはもうめくるめく色彩の世界。古楽器の演奏会を聴いたことのある人ならわかると思うけど、モダンのオケと比べると各楽器のバランスがかなり異なる。弦の艶のある響きの中から突然フルートのメロディーが浮かび上がったり、ホルンが出っ張ってきたり。モダンのオケでは丸く仕上がるモーツアルトが、時代楽器でやると金平糖のようにゴツゴツしてくる。これが嫌いだって人も多いと思うけど、おいらは好き。ゴツゴツが多いほど面白い。

もっともこのゴツゴツってやつ、やっぱり、演奏者の技量がなけりゃただの耳障りな代物。そうならないところがこのオケのすごいところ。俺が俺がって感じで自己主張しながら、全体のバランス感覚が行き届いている。たとえば、39番の第3楽章。あのとてもじゃないけど踊れないメヌエット。その中間部のクラリネットの有名な一くさり。モダンのオーケストラであんな吹き方したら、周囲の団員から白い目で見られること請け合い。でもそれが聞き手にとってはたまらなく楽しい一瞬だったな。

そういえば、5年前に聴いたときは1階席で、どうもクラが鳴ってないなあっていう気がしたけど、今回天上桟敷で聴いたらよーく聴こえたよ。ここのホールもやっぱり上の方が音が断然いい。5年前のレクイエムの時、アニュス・メロン(ドミニク・ヴィスの奥方)ってソプラノを初めて聴いたけど、なんて小さな声のソプラノだろうって印象だった。でも数日後、天上桟敷で追加公演を聴いたら、彼女の声はちゃんとganz oben, ganz hintenまで届いていた。

そうそう、ゴツゴツの話だけど、この演奏会でこのゴツゴツの良さが一番発揮されたのが、41番の第4楽章だったな。っと書けば、フムフムわかったって人も多いと思う。そう、その通り。フーガなのじゃ。第2楽章、第3楽章ではゴツゴツに面取りが施されていたのか、ちょっと眠りかけたデデでおじゃったが、4楽章に入ったとたんに目が覚めた。

こういうアンバランスなバランスのオケで聴くと、出入りがよくわかる。といってもヤクザじゃない。どの声部がどこで水面下に潜って・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・プハーッと、どこで顔を出して息をしたのか、手に取るようにわかるんじゃい。

そりゃもう、大変なもの。この曲って、トランペットやティンパニは景気付けかと思っていたんだけど、こいつらもちゃんとフーガに参加していたんだな、これが。

さてさて、アンコールがコワイ・コワイ・コワ〜イ40番のメヌエット。あの日本刀と青龍刀が火花を散らすような不協和音の連続。しかも、一小節を一拍に取るような、とんでもなく速いテンポ。トントンの40番は3楽章から疾走する。

どうせなら、第4楽章もやってくれりゃよかったのに。あれからトコトコうちに帰るまで頭の中では4楽章が鳴りっぱなし。心斎橋の小林秀雄状態でおじゃった。フーッ。



デデの小部屋(ホームページ)に戻る

音楽の小部屋に戻る

ボクの小部屋が気に入った、または
デデやガンバに反論したい、こんな話題もあるよ、
このCD好きだニャー、こんな演奏会に行ってきました等々、
このページに意見をのせたいネコ(または人間)の君、
電子メールmatufuji@mail.at-m.or.jpまで お手紙ちょうだいね。
(原稿料はでないよ。)