音楽

佐々木節夫 メモリアル・コンサート

<出演者>

アントネッロ
波多野睦美&つのだたかし
寺神戸 亮
オトテール・アンサンブル
タブラトゥーラ

1999年12月27日 津田ホール


(音楽評論家の佐々木節夫さんが亡くなってちょうど1年。今日は彼にゆかりの演奏家が一堂に会して、盛りだくさんのプログラムを聞かせてくれました。終演後、カフェ“粉雪亭”にて。)

ブチッケ: 日本はまともな音楽評論家が育たないと言われて久しいですが、そんな中で佐々木節夫は数少ない“まともな”評論家でしたニャー。

ガンバ: 数少ないというのか、あたしゃ日本の音楽評論家でまともに評論を書ける人間は2人しか知らないね。そのうちの一人が佐々木節夫だった。

デデ: まわってくる招待券は絶対に使わなかったっていうね。音楽が好きだから音楽会に行くんだ。だから自分の聞きたい場所で聞くんだっていうわけで、全部自腹で音楽会に行っていたそうだ。

ガンバ: どうでもいいことみたいだけど、音楽会評を書く場合にはすごく重要なことね。ジーンズにジャケット、ノーネクタイっていうラフな姿で、これはっていう音楽会には必ず現れたわねぇ。

CoCo: そうですニャー。バロックだけじゃなくて、クラリネットのストルツマンを日本でまともに取り上げたのも彼が最初だったかもしれない。ストルツマンの演奏会には必ずいましたニャー。ところで、やたらと本を出したがる人がいるけど、この人は本を書かなかったですニャー。音楽が楽しくてやっているんだからそんなことは勘弁してくれってことだったみたい。

ガンバ: そうそう、音楽を聞く耳がないから、予定通りの提灯記事を書くか、陳腐な文明評論でお茶を濁す評論屋もいるけど、ああいうのって新聞に載せられるとすごく迷惑ねぇ。こっちは金払って取ってやってるんだぞぉって、新聞社に怒鳴り込みたくなるわよ。

デデ: その手の奴らに限ってやたらと本を出したがったりしてね。

ブチッケ: あ、それホントですニャー。まあ、誰が誰って言っても始まらないけど、例えば「バッハの精神性」、「音楽の深み」なんてのことを平気で使う人間にはちょっと気をつけなくてはいけません。猫は絶対にこんな言葉遣いはしませんからニャー。

デデ: んだ、んだ。佐々木節夫は自分の心で音楽を聞いて、その感動を誰にでも理解できる言葉で表現しましたねぇ。「精神性」や「深み」という言葉を使うのなら、まず先にその言葉の意味を誰にでも分かる形で定義することから始めなければ、ただの自己満足に過ぎません。当たり前のことだけど、これがわかっている人は数少ないということですニャー。言語分析で、悪文としてやり玉に挙がるのはまず演奏会評ですからニャー。

CoCo: というわけで、彼ゆかりの演奏家が一堂に会したわけですが、どうでしたでしょうか。

ガンバ: ん〜む。そうねえ、懐かしい人もいれば、それほど馴染みがあるってわけじゃない人たちもいたけど・・・

デデ: 最初のアントネッロというグループはコルネットの濱田芳通を中心としたアンサンブルでしたニャ。セルマ、カステッロ、メルーラなんてな懐かしい初期バロックの名曲を聞かせてくれました。濱田はリコーダーも吹きましたが、これがなかなか闊達な演奏で愉しませてくれました。

ガンバ: ただ、どうかしらねぇ。もう猪突猛進というのか、あらかじめ自分で決めたブレスを守ろうとして、ちょっと不自由なフレージングになっちゃったのかなぁ。ものすごく練習して、うまいところを見せてやろうっていう意気はよくわかるんだけど。でも、まだ若い人みたいだから、これから、音楽の作り方もうまくなってくるんだと思うけど。

CoCo: ふむふむ、そうなってほしいですニャー。ストロッツィのラメントとメルーラのチャコーナを歌ったソプラノの鈴木美登里という人は、やや堅めのストレートな声ですが、どうでしょう、ややこれも策におぼれた感じかニャ?

デデ: というのか、もうちょっとリコーダーやコルネットと掛け合うような合い口があればなあ、ってところかなあ。ソプラノとコルネットだと、2本のトランペットが掛け合うような華やかさが欲しいところですニャー。それと、本当に久々に堀栄蔵作のイタリアンを聞きましたが、これいい楽器でしたニャー。80年代にずいぶんたくさん製作したんだけど、最近はあんまり名前を聞かなくなっちゃいましたねぇ。どうしたんだろ。

ブチッケ: そうそう、注文してから3年待ちとか何とか言われていましたニャー。後半にオトテールの連中が使ったフレンチもいい味を出していました。

ガンバ: うんうん。それに津田塾のホールがまた、響きが極上だし、そういう点では音の楽しみがあったわねぇ。

CoCo: 波多野&つのだは今月の始めに上智の教会でも聞きましたが、あの時は体育館みたいなところだったから、まともな音楽会とは言えない代物でしたけど、今回は波多野の歌唱力に惚れましたニャ。特にダウランド。この人、英語のネイティブ並に発音がしっかりしている。それに歌詞の内容に即した歌い回しや、表情付けがうまいですねぇ。それに対してイタリア語のメルーラになると、どうやっていいのかちょっと戸惑っている感じでしょうか。やや平板に流れちまいますニャー。今、英語の歌を歌わせたらカークビーよりも魅力的かもしれない。

ガンバ: それは言えてる。そして、今更ながら思うんだけど、佐々木節夫がこの連中のレコーディング・ディレクターをやったのは本当によかったわねぇ。「古歌」、「サリーガーデン」といった、やや陳腐に流れて、ヒーリング系に括られそうなものだけど、とにかく録音がすばらしいわ。特別な技巧を凝らしているわけじゃないんだけど、この人たちの一番いいところを引きだしてあげてるのね。日本のレーベルは録音技師の耳を疑いたくなるようなCDを平気で作るけど、この人たちの演奏の録音は確かに世界レベルだ。

デデ: そこですニャー。日本の録音技師の中にも、多少なりとも音楽がわかる人が出てくるといいんですがねぇ。え〜っと、後半は寺神戸のヴァイオリンでビーバーのパッサカリア。こりゃあまあ、なんですニャー。

ブチッケ: うん、なんですニャー。独奏で、しかも一曲だけっていうわけですから、まあ、大変といえば大変でしょうが。

デデ: それから懐かしい、オトテール・アンサンブルがクープランのコンセールなどをやりましたが・・・

ブチッケ: 懐かしい響きがしましたニャー。ここらへんは現在第一線でやっている人たちじゃないから、まあ、同窓会っていうわけでしょう。

CoCo: 最後がタブラトゥーラ。これはまあ、古楽と言うよりはジャムセッションといった方がいい。まあ、盛り上がりましたニャー。

デデ: んだんだ。


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