ザ・ハープ・コンソート

音楽監督アンドルー・ローレンス=キング(スパニッシュ・ハープ)

「灯火と北極星」と題するスペイン・バロック音楽のパフォーマンス

1999年3月9日 カザルスホール



(デデのひとりごと)

話題のハープ・コンソートなるものに行ってきたです。アンドルー・ローレンス=キングという人は、さまざまな団体の一員として何度も来日している人ですが、デデは彼のソロを聴くのは初めて。彼を中心として、ギター(S, A, T, B)、ガンバ、テオルボ、それにパーカツなどが加わった6人の楽しいアンサンブルでした。特にギターのカルテットはいかにもスペイン風というか、ラテン風の味わいを出しておりましたニャ。

さて「灯火と北極星」という演奏会のタイトルですが、ローレンス=キングが書き下ろし、松田啓子なる人物が訳したという、超難解な「プログラム・ノート」によると、どうもリバヤスとうスペイン人が書いたギターとハープのための教本ないしは、ラテン舞曲集といったものの題名らしい。

最初にイタリア風のコレンテ(クーラント)を3曲を、まじめに(?)演奏したあとは、歌あり、踊りありの楽しいパフォーマンスが繰り広げられました。比較的耳に馴染があるディエゴ・オルティスやカベゾンといった作曲家の作品も飛び出してきて、サービス精神も満点。ギターを弾いていたスティーヴ・プレイヤーという人が、ダンスも披露するんですが、これがなかなかの見もの。比較的スローなパートでは、ジャンプして1回転ターンとか、ジャンプして足を急速に交差させたりといった、クラシックバレエの基本技術が出てきて、さながら脚線美自慢のフランス国王陛下を彷彿とさせましたが、やっぱりスペインですニャ。これだけじゃ終わらないわけで、次第に「手の舞い足の踏み場を知らず」状態にトランスしていきます。オルティスの「ミランに基づく即興」だったかでは、パーカツとダンスのタップとの掛け合いを演じてお客さんを大いに沸かせました。そうそう、オルティスの有名な「レセルカーダ」では、ガンバを弾いていたお姉さん、んーと、ヒレ・パールという人ですが、この人の太くて豪放な演奏がさえ渡りましたニャ。

ムルシアの「カナーリオ」では、先のプレイヤー氏が「セビーリャの理髪師」のフィガロさながらに、ソプラノ・ギターを肩から下げたままお踊りはじめ、勢い余って(?)客席まで飛び降りて、通路を流して歩くといったサービスも飛び出しました。 後半は、ハープがゆったりとコードをかき鳴らし始めたところで、客席後方のロビーからなにやら騒々しい音が・・・今度はプレイヤー氏バグパイプを吹き鳴らしながら登場。この楽器のヒョロヒョロ、ペケペケした音は大好きなんですニャー。一度バグパイプというのをやってみたかったんですが、どうしたわけかうちの近くに教えてくれるところがなくて断念しましたが。

後半一番の聴きもの・見ものは、リバヤスの「馬上試合」だったでしょうか。単純なトニカとドミナントの和音の上で、即興演奏が延々と続くんですが、馬上試合を[ギター+ガンバ]組 vs. ハープという対抗関係に見立てて、なかなか白熱した演奏になりました。しかもここでもプレイヤー氏がかなりユーモラスなパントマイムを披露して、喝采を浴びておりましたニャー。

全体に大変盛り上がって楽しいパフォーマンスの一夜でした。ただ音楽的なことを言うと、カラッとしたラテン風の味わいといったらわかりますでしょうか。底抜けに明るくて、暗い歌まで冗談のように聞こえてしまうんですニャー(あ、そうそう、何曲か歌もありました)。もうちょっと湿り気のあるリズムというのか、フラメンコの手拍子のようなヌチャ・ヌチャっとした引っかかりというのか、そういったものが聴かれたらよかったんですが。これは無い物ねだりでしょうかね。パーカツのお兄さんも健闘していたとは思うんですが、叩き方がちょっと清潔すぎたかニャー。耳で聞く白石加代子という感じで、情念というか怨念というか、そこらへんが表現されたらもっと面白くなったと思うんですが。

最後に、このプログラムはいったい何じゃ(写真やらレコードの宣伝やらを除くと、正味10ページ足らずで500円也)。「プログラム・ノート」の翻訳のまずさは、原文がたぶん下手なせいだと思いますが、それにしても、売り物なんだから意味が通る日本語を書いてもらいたいものですニャー。同じ松田啓子なる人物がやっている、歌詞の対訳に至っては、もっと凄まじい。

ムーアの王は
グラナーダの町を
「自業自得だ、王よ、
王よ、自業自得だった。」
ああ、アラーマよ!

なんだか、かっ飛んじゃってますニャー。

えーと、ニムさんご夫妻もお見えになっていました。なかなかのファンとお見受けしましたが。ニムさんのご感想もご覧下さいニャ。



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