ファビオ・ビオンディとエウローパ・ガランテ

エウローパ・ガランテ
指揮+ヴァイオリン:ファビオ・ビオンディ

ヴィヴァルディの「調和の霊感」から2番、8番、11番
オペラのアリアを数曲

1999年6月24日 紀尾井H


(デデのひとりごと---ぶつぶつ)

エウローパ・ガランテの来日は2年ぶりでしょうか。前回もソプラノのサンドリーヌ・ピオと、メゾのグローリア・バンディテッリを伴って、ヘンデルのイタオペのアリアをたっぷり聴かせてくれました(アーカイヴの025を参照してください)。それで、今回もその路線を継続して、二人の高音の歌手を連れてきたんですが・・・

まず、調和の霊感の2番の協奏曲。まだちょっと楽器が鳴らないかなって感じ。でもメリハリの効いた演奏スタイルは健在。次がソプラノのアリア。歌の曲目はどれも聴いたこともない作品ですから、いちいち説明はできませんが、全部ヴィヴァルディのオペラからのものでした。マクファーデンもレーギンも、結構なメジャーレーベルにちょい役としてかなり前から登場している歌手ですが、デデは実演を聴くのは初めて。というわけで、その実力や如何にと、楽しみにしていきました。ところがところが、やはりと言えばやはり・・・どれもこれもダカーポ・アリアで、歌詞はどれも5〜10行程度の長さであるにも関わらず、ご両人とも3曲ずつ譜面を見ながら丁寧に歌ってくださいました。暗譜してこいってんだよ、こんにゃろ。おほほほほ、失礼いたしました。ついついお言葉が優しくなってしまって・・・だけどあの不器用なコヴァルスキだって一応は覚えてくるぜ。

まあ、そんなわけで、オペラのアリアであることを忘れさせてくれるような、まさに譜面を舐めるように几帳面な歌唱でございました(お歌の感想はおしまい)。

歌が2曲に調和の霊感が1曲といった割合でプログラムは組まれていました。コンチェルトの8番はイ短調という調性もあるんでしょうが、やたらとヴァイオリンが響き始めました。さらに、11番はかなりオペラチックなというか、劇的な作りになっていましたニャー。ヴィヴァルディのコンチェルトって、やたらと同音型の繰り返しや、同音の刻みが多かったり、何やら意味ありげなGP(Generalpause)がちりばめてあったりして、そのまま弾いたら単調なことこの上ないんですが、このグループの手にかかると、そんな譜面が突然呼吸を始めるんです。自在なテンポの揺れ、人間の自然な感性に逆らうようでいて、妙に納得させられるアクセント、それから、強弱の変化。ここらへんがビオンディの音楽づくりの特色でしょうか。とにかく、譜面を一度フレーズ単位まで分解して、その一つ一つにかなり大胆に表情をつけていくやり方なんでしょうね。

「アナリーゼ=分析」的、あるいはより的確には「デコンストラクション=脱構築」と呼ぶ方がふさわしいでしょうか。音楽の持つ内的な前提に基づいた正直なアプローチだと思われますが、一歩間違うとかなりの危険が潜んでいることも確かです。たとえば、一時かなりの人気を博したムジカ・アンティカ・ケルンのように、「デコンストラクション=解体」したまま全体が見えてこなくなる、なんてなこともままあるわけです。ビオンディはこのあたりのバランス感覚が絶妙。全体が部分の総和であるように見せかけながらも、ちゃんと全体にも配慮を怠らニャーだよ。11番冒頭の序破急的な部分での、テンポやダイナミックの設定に、このことがよく表れていましたニャ。

アンコールは4曲。歌を1曲やった後は、3曲とも器楽曲。ヴィヴァルディの「田園風」では低音のドローンとVn-Vaのユニゾンが奇妙なフンイキを漂わせ、コレッリのコンチェルトを挟んで、最後はご存知「四季」から夏の終楽章。レコードとも違うし、今まで何度も日本でやったのとも違う、いっそう大胆な演奏でした。誰だい、そこでお腹を抱えて笑っているのは? 「弁慶が飛び六方を踏んだ後で、もう一度大見得を切る」感じとでも言ったら、比喩になるでしょうか。リストの譜面に、五線譜が途切れて、点線がグニャグニャと書かれているものがあります。
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この点線の感じでポーズを取れという意味なんでしょう。最後の音が鳴る直前のかなり長い空白の間、デデの目には、弓と弦の間に点々がはっきりと見えましたニャー。

アンサンブルの中では、ナッデオが相変わらず達者な チェロを聴かせてくれました。今回からチェンバロが、アレッサンドリーニに代わってセルジョ・チョメイになりましたが、この人はかなり弾けるな。アレッサンドリーニと異なり、自分から仕掛ける所もありましたニャー。ただ、どこかの貸し楽器なんでしょうが、フレンチのチェンバロでヴィヴァルディはちょっとかわいそう。もうちょっと張りのある楽器を貸すところはないのかな?それから、ホールで売っていた新譜。テレマンのリコーダーとヴァイオリンのトリオソナタですが、これはかなりいけます。ビオンディが一人ではしゃいでいる感がなきにしもあらずですが。



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