歌と古楽器で奏でる

ザビエルの時代の音楽

<前半>
16世紀前半のスペイン、フランス、イタリアの音楽

<後半>
イギリス古謡など

<演奏>アンサンブル・エクレジア

1999年12月3日 イグナチオ教会



(デデのひとりごと---ぶつぶつ。正確には音楽会とは言い難い代物だったので、書くかどうか迷ったんですが、一応こんなのもあるという教訓として残すことにしました。)
つのだたかしとそのお仲間の演奏会に行って来ました。前半はザビエルの時代のスペイン、フランス、イタリアの音楽、それにグレゴリオ聖歌。ソプラノの波多野睦美はすなおに伸びる美声の持ち主。発音もきれいでした。対照的にカウンターテナーの太刀川昭はかなり発音に難ありです。日本人歌手にありがちですが、子音が弱くモゾモゾっとした声です。ただし男女の性差を越えてこの2人、かなり似通った声。

どうしてこの2人を組み合わせたのかはまったくわかりませんが、交互に歌ったり二重唱をやったりしました。波多野の声の美しさが堪能できたのは後半最初の「聖母マリアの子守歌」。17世紀のメルーラの曲ですが、和声短音階を使ってちょっとオリエンタルな情緒が漂います。この雰囲気に波多野の声はぴったり。しかし、モンテヴェルディ風のエンディングになるととたんにつまらなくなってしまう。こういう様式には向いていないのか、自分の音楽がないんですニャー、この人。譜面をお上手に歌うんですが、遊びというのか、音楽の喜びがまったく感じられない演奏で、かなりがっかり。その代わりと言ってはなんですが、グリーンスリーブスの替え歌や、乾杯の歌といった、イギリス民謡はそれなりに楽しく聴かせてくれました。

器楽の方はというと、リコーダーは懐かしい響きがしました。20年あるいは25年以上前でしょうか、古楽器の演奏が始まった頃のような素朴な吹き方。楽器の特徴を生かすと言うよりも、どちらかというとアンサンブルを合わせる方に心が行っちゃって、なかなか音楽の流れが掴めない様子。初めてルネサンスの譜面を前にして、どうやって演奏するんだろうって手探りしている初心者のような感じといったらおわかりになりますか? ガンバの人もかなりたどたどしくて、有名なオルティスのレセルカーダなど、微笑ましい限り。

通常、古楽の演奏会はゆったりとくつろげるものですが、教会での演奏会ということもあるんでしょう、信者さんらしき人が一曲毎にパラパラと拍手を始めたり、演奏中に立ち上がる人間がいたり(客席に傾斜がないので、後ろの方からはステージが全然見えない)。はたまた、出入り口が開けっ放しになっているのか、演奏途中に入ってきて席を探したり、ボランティアだか尼さんだかが、後ろの通路をひっきりなしに行ったり来たりと、かなり神経がいらだつ一夜でした。やはり音楽会は、こうした騒々しいところではなくて、静謐な環境で楽興の時にひたることができる、ちゃんとした演奏会場でやってほしいものです。

というのは、どうやら我々素人の願望らしく、信者やら招待客やら、その筋の人間で超満員。休憩時間には、ロビーに山と積まれたCDを尼さんが売りさばいておりましたが、かなりの売り上げとみました。現代の免罪符ということでしょうか。あるいは家内安全・商売繁盛のお守りにでもするつもりなのか?

あ、つのだのリュートの音はほとんど聞こえませんでしたが、かなり懐かしめな演奏。おまけに帰りしな、出口に尼さんが箱を抱えて待ちかまえているではありませんかっ。この上さらにお布施でも要求されるのかとギョッとしたんですが、アンケートを提出せよということでした。(実際に、ヨーロッパの教会などでは有料の演奏会なのに、坊主が肥柄杓のようなものをこちらの目の前に突き出して、お布施を要求するところもあります。)相手は善意のつもりでやっているんでしょうから、傷つけちゃいけないなと配慮して、アンケートはもちろん丁重にお断り。いやはや、どっと疲れた一夜ではありました。



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