マウリツィオ・ポリーニのリサイタル

4月25日 サントリーホール



〔おさニャンさんのご投稿です)

POLLINIリサイタル。サントリーホールでは初。今回はB券,RA4-22,23。Beethovenの30,31,32番。一口で言って,彼は老いた。良くも悪くも老いた。30番の第一楽章の出 だしから,以前の彼には無かった柔らかい音がしばし聴こえる。おやと思う。しかし 昔の尋常ならざる超人的な集中力,音のキレ,感覚の映え,フォルムの完成度と言った ものはもう現在の彼には殆ど無い。そもそも望む方が無理というものだろう。彼も既 に56才。年齢よりも老いて見える。彼は既に過去のピアニストになりつつある,と言 うのが率直な感想だ。POLLINIの芸術は年齢と共に深まっていくといった類のもので はない。精神的内省の声が聞こえるというのでもない。多少暖かみが出てきたか,と 言った程度だ。がそれに反して失ったものが多すぎる。全盛期は既に過ぎ,峠を越え てしまった演奏家になった。技巧派の演奏家の苦しいところだ。残念ながら,これが 現実だろう。

  31番もぴんと来ない演奏だった。32番の第一楽章では,さすがと感じ るところもあったが,第二楽章は弾き急いでいるばかり。Beethovenの究極の精神の 昇華といったものが全く感じられない。もっと落ち着きを。もっと深みを。

しかし初めてPOLLINIを聴いたカミサンは,「鳥肌が立った」と驚いていた(昔の彼 を聴かせたかったなあ)。客席からはブラボーが,総立ちの拍手が...。今までの 演奏会にはなかったことだ。どこを聴いているのだろうか。文化からサントリーに場 所が移動したら,客の「耳」質も低下したということだろう。最早,彼に望むものは ない。早めに現役を引退する方がよい。怒りよりも,哀しみが消えなかった。

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これは少々言い過ぎかもしれません。でも以前の彼ではないことだけは確かです。 新聞評が見たいところです(評論家の耳をごまかせても,俺の耳はごまかせないぞ, POLLINIよ。もうあんな程度なら日本に来ないでくれまたえ。)2日のチケットは 売り払ってしまいました(ディアベリ・ヴァリエーションとヴァガテル)。

(それでもシュトックハウゼンの日は行くのです。これが聞き納めになるか...。)

私の側の聴く嗜好が変化したこともあるかも知れません。技巧的に巧い演奏家 を受け付けなくなっているのです。(俺がオジサンになった?)。 昨日もフィッシャー・トリオで,幽霊と大公を聴きました。



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