バンベルク交響楽団

指揮:ホスルト・シュタイン

11月5日 サントリーホール
ブラームス:交響曲第2番、第4番

11月6日 新宿文化センター
ブラームス:交響曲第3番、第1番



(デデのひとりごと)

久しぶりにバンベルク交響楽団を聴いてきました。この前聴いたときは確かツィンマーマンというヴァイオリン弾きが一緒で、やはり、ブラームスのコンチェルトと、シンフォニーの1番だったような気がします。その次の時はアルヘリッチがソリストで、あまりに値段が上がったんで行かなかったと思う。それで、今回は久々に“色物”抜きのブラームスの交響曲ばっかりの演奏会なんで、トコトコ出かけてみましたんですニャー。

スタンダールだったかロマン・ローランだったか、(ずいぶん違うって、まあ、たしかに)「音楽の快楽は肉体的快楽が伴わニャーいかんのよ」てなことを書いた人がおりましたが、これは絶対に当たっていると思うんですニャー。中にはものすごーく聴き手の精神的な緊張を要求する演奏ってのもありますが、あれは演奏者との電波の波長が合わないと地獄です。

最近のドイツのオケはどうでしょうか。ベルリンフィルはこのところゼーンゼン聴いていないので(あまりに高すぎるよねー)、よくわかんないけど、カラヤンの末期の頃はバランバランだったような記憶がありますニャー。その一方で、チェリビダッケのミュンヘンフィルとか、その他シュトゥットガルトやフランクフルト、北ドイツ放送なんかの放送オーケストラがものすごく上手ですね。それこそ一糸乱れぬ演奏っていうんでしょうか。18編成(つまり第1ヴァイオリンが18人で、ベースが10人)の巨大なオケで、ブルックナーのトレモロが完全に揃っているなんてのは、すごいニャーと思うんですが、如何せんあのチェリの音楽にはちょっと・・・ついていけない。

ヴァント親父がやっていた北ドイツ放送のオケも一糸乱れぬタイプですが、こっちは音楽が生きていたような気がします。で、このバンベルクのオーケストラですが、昔からどちらかというと、のんびりとした、大らかな、細かいことには構わないタイプですね。ヨッフムとかカイルベルトなんかと、ちょっと時代がかったブルックナーをやってましたね。

決して上手なオーケストラじゃないんですが、メンバーがホントに音楽が好きで、隅々までわかって演奏しているニャーっていう気がするんです。たぶんスコアでも見ながら聴いていたら、あっちこっちに演奏の間違いが見つかるんでしょうけど、そういったことはいっこうにお構いなし。俺達のやりたいようにやるんだわさって雰囲気です。弦は透明で艶があって粘りがあるといったどこかのオケとは正反対で、ちょっとくすんでいて、さりとて粘りがあるっていうほどでもなくて、でも、出るときには出てくるって言うんでしょうか。存在感があります。

管楽器もしかり。かなりのんびりとした吹き方で、たとえば2番の有名なオーボエのソロでもすんなりと流れるような吹き方はしません。前打音を鋭く短くするとメロディーは流麗に聞こえるんですが、ここのオーボエ吹き(女性だった)逆にアクセントは抑えて長めに吹くんですね。するとどうなるかってーと、ドタ靴を履いたブラームスが、花いっぱいの草原で踊っているような雰囲気になるんですニャー。わかりますか。あの、『赤いハリネズミ亭に向かうブラームス』の影絵の雰囲気です。

あ、そう言えば指揮者のシュタインもずいぶん変わりましたね。いや風貌は40代からほとんど変化ないんですが、今年で70歳だそうで、どうも膝でも悪くしているのか、歩くのも億劫な様子でした。でも一度音楽が始まると、それはそれ、成り行き任せのように見せておいて、締めるところはきちっと締める。でもそれが、統率とか規律とかいったものでなくて、バラバラに伸びようとする枝をま〜るく刈り込む植木屋の職人のようなやり方といったらよいでしょうか。絶対に煽ることはないし、不自然な手の入れ方はしないんです。

2番の最後は通常、猛烈にアッチェレランドして金だらいをぶん投げたような感じでガシャーンと終わることが多いですが、そんなお下品なことはしませんね。ブラームスの書いた音を慈しむような終わり方でした。ベートーヴェンのエンディングってかなりしつこいですよね。運命の最後とか、9番の最後とか。ブラームスは結構あっさり書いてあります。そこを煽りすぎるとかえって、終わったあとなんだかさっぱり感が、いや増しに増すようで、うん、じっくりと終わってみるのもよいかなっと思ったりしたわけです。

4番の最後のパッサカリアは、出だしでトロンボーンが吠えますね。でも、シュタインはここはじっくりと抑えて、何番目の変奏だったか、もう一度金管が戻ってくるところで全開にしてました。1番の頭のティンパニがどうもおどろおどろしいっていうか、大げさというか、こけおどしというか、なんか変な気がしたことありませんか?あそこもリズムを刻むんじゃなくて、和音を添えるような感じに叩くと、うん納得。3番の第3楽章はワルツなんでしょうか。2拍子と3拍子の間を揺れ動く、いかにもブラームスらしいメロディーです。杓子定規に演奏すると字余りができてしまうんですが、ここは弦のメンバーがフレーズをたっぷりと自然に歌って、大発見というわけではないですが、そうなっておったのかと、生理的に満たされる感じを持ちましたニャ。

いや、2日連続だったですが久々に楽しめたオーケストラの演奏会でありました。それから、新宿文化センターってパイプオルガンを入れてからでしょうか?ずいぶん音がよくなりましたね。2階の後ろから数列目で聴いたんですが、とてもよい響きでした。前日のサントリーのRDよりも響きがまろやかで、音圧もあったように思えましたニャー。



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