バロックの庭園

ヒロ・クロサキ(ヴァイオリン)
ラルス・ウルリク・モルテンセン(チェンバロ)

ヘンデル:ソナタ ニ長調、フローベルガー:組曲第18番 ト短調(チェンバロ・ソロ)、
バッハ:ソナタ イ長調 BWV.1015、ソナタ ホ短調 BWV.1023、
テレマン:ファンタジア第7番 変ホ長調(ヴァイオリン・ソロ)、ビーバー:ソナタ第6番 ハ短調

12月6日 津田ホール

(デデのひとりごと)




本当に久しぶりに津田ホールの演奏会に行って来ました。先日、カークビーの相方をつとめた2人がこの日の主役。まず、最初のチューニングの音からして、このホールの響きはすばらしいですニャー。チェンバロは先日と同じジャーマンスタイルのミートケモデル(ギタルラの貸し楽器 - ブルース・ケネディ作)。これはカザルスホールでレオンハルトも弾いたものですが、その時には全く鳴らなかった楽器。先日紀尾井ホールで聴いたときにはそこそこの鳴りでしたが、あそこはキャパがかなり大きいところ。この日の津田ホールはキャパがカザルス並に小さいのでよく響くこと。ジャーマンスタイル独特なギャラントな音色が満喫できました。

さて、最初はヘンデルの名曲。ヘンデルのヴァイオリン・ソナタの中では一番演奏機会も多い曲ではないでしょうか。ただし、演奏会の冒頭にもってきたせいか、今ひとつヴァイオリンの調子が乗り切らない感じ。

二曲目はフローベルガーの組曲。チェンバロのソロですが、これがなかなか聴き応えあり。フローベルガーは初期バロックの鍵盤音楽の大家ですが、どうでしょう、日本ではあまり演奏されることも少ないような気がします。どちらかというとフランス風のリュート音楽の形式に則った曲の作りなので、譜面をそのままなぞってもまるで形にならないのが難しいところ。多少遅めの速度で、テンポを自在に揺らす弾き方は往年のレオンハルトを彷彿とさせる風格を感じさせましたニャ。とくに第3楽章のクーラント。この2拍子とも3拍子ともとれる奇妙な舞曲を、まるで拍子を感じさせないエレガントな語り口で聴かせたのには感服いたしました。

前半の最後はバッハのソナタ イ長調。これはチェンバロのパートも書き込んである有名なソナタです。ここらへんからクロサキのヴァイオリンも鳴り出してきて、丁々発止の掛け合い。この形式のソナタはある意味でトリオソナタといってもいいわけで、チェンバロも堂々と自己主張を繰り広げるわけですニャ。フーガ風の展開が進んで、1拍遅れのストレッタになると、それはもう手に汗を握るの表現がぴったりのハラハラ・ドキドキ状態。どちらかというとモルテンセンの方がテンポの主導権を持っていたようで、自在に伸縮するテンポに揺られるのも快感。クロサキの自由奔放な装飾も聴くものをハッとさせる。

後半の最初は、やはりバッハのソナタ ホ短調。これはヴァイオリンと通奏低音のソナタ。多少古い形式ではあるものの、それだけ、ヴァイオリンの妙技が聴き所。第1楽章のトッカータ風の急速調は自由闊達。叙情的な第2楽章の歌の後は、アルマンドとジグの舞曲。どちらも楽しいウキウキするような演奏。

次は、テレマンのファンタジア。ソロ楽器のファンタジアをたくさん書いたテレマンですが、ヴァイオリンのファンタジアを聴くのはたぶん初めて。で、どう感想をしたためたらよいのやら???よく演奏されるフルートの曲にもよく似た感じで、さほどヴァイオリンの特色を出した曲とは思えなかったんだが。それにバッハの直後に演奏すると、やっぱりテレマンは小物かニャっと・・・

最後はビーバーのソナタ。最近ビーバーのソナタはレコードでずいぶん出回るようになったものの、まだ演奏会で聴くチャンスはさほど多くはない。しかし、実に堂々とした大曲。バッハの後に持ってきても十分に聴き応えのある曲であり、演奏もなかなかのもの。レチタティーヴォ風の語りを交えて、連続した3つないし4つの部分から成っていると思われるんだが、あらゆる場面でヴァイオリンの超絶技巧を聴かせる趣向になっている。語りと歌、語りと走句。様々な対比が見事。モルテンセンのサポートも万全で、この日の演奏会を締めくくるにふさわしい立派な演奏でしたニャー。


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