09年の春から秋まで




デデ: え〜と、ちょっとサボってしまって、ずいぶんしばらくぶりなんですが、とりあえず、何らかの印象に残った公演について、一口コメントを並べて記録しておきましょうか。

ガンバ: 4月21日はル・ポエム・アルモニークの公演があったけど…

CoCo: あった、あった。確かに。

ガンバ: 印象に残っているっていうのとはちょっと違うかニャー。

ブチッケ: この30年ぐらいの間に、いわゆる『古楽』と言われるものの分野がとてつもなく広がって、今まで知られていなかったものが次々と発見、発掘されてきましたニャー。なかなか面白い発見もたくさんあったと思うんだけど、このエール・ド・クールっていう、いわゆる宮廷の流行歌というか歌謡曲のようなもんはねぇ、どうだろう?

デデ: 最近にわかに取り上げる人が出てきているけど、歴史の彼方の塵芥というのか、そっとしておいた方がいいジャンルかもね。ル・ポエム・アルモニークに関しては、ぜひオペラを持って来てほしいね。

ガンバ: 連休が明けた5月7日、二国で『ムツェンスク郡のマクベス夫人』がありました。当初は若杉楽長が指揮する予定でしたが、まあ、残念なことで、マリインスキー劇場のコレペティさんが急遽代役を務めましたねぇ。

ブチッケ: うん、これは稀代の名演だった。コヴェントガーデン制作の舞台だったけど、暗くて救いのないストーリーをアッケラカンとした演出でみごとに戯画化していたと思うんだなぁ。

CoCo: カテリーナ・イズマイロヴァのステファニー・フリーデ、ボリス・イズマイロフのワレリー・アレクセイエフ、セルゲイのヴィクトール・ルトシュク以下、キャスティングがとても充実していたし、何より東京交響楽団とエキストラのラッパ隊が凄かったよね。ショスタコーヴィチの諧謔味を余すところなく表現していたと思うよ。

デデ: あのラッパの迫力はちょっとしたもんだった。翌日まで耳がジンジンしていたよ。

ガンバ: ショスタコってやっぱり凄い作曲家だよね。二国ではその後、5月21日にバレエの『白鳥の湖』。これはもう二国の定番と言ってもいい出し物。オデットのザハロワ、王子のウヴァーロフのボリショイコンビが踊った日で、盛り上がったわねぇ。

ブチッケ: それにアレクセイ・バクラン指揮の東フィルも粘り強いサウンドで、なかなかの名演だったと思いますですよ。

CoCo: 6月に入って、4日と5日にモスクワ放送交響楽団。折しも「低額給付金シート」なるものが突然売り出されて、Sが1万円とか1万2千円とかなんとか。席は選べないんだけど。まあ、値段に釣られて行ってみるかと…

ガンバ: 正規の料金で早々と前売りを買っていた人は、どんな気がするだろうね。

CoCo: あたしだったら、怒りますよ。差額を返せって怒鳴り込むかも。

デデ: ロシアの音楽界は「冬の時代」を通り越して、「ツンドラ時代」に突入したようです。4日は白鳥の湖の抜粋なんかをやっていましたが、ちょうど二国のバレエの直後ってこともあって、何とも薄っぺらな音に辟易しました。まあサントリーと二国の響きが全然違うってこともあるけど(サントリーの1階席ってあんなに響きが薄いんだ!)……シェフのフェドセーエフもオケの技量を知り尽くしているがゆえに、安全運転に徹していましたニャー。

ガンバ: 5日は演奏会形式でチャイコフスキーのオペラ『イオランタ』。バレエの『くるみ割り人形』と対になる作品で、作曲者には一晩で両方を上演する意図があったとか。どう考えても滅多に演奏される曲じゃないですねぇ。

デデ: 蝶よ花よと育てられ、目は涙を流すための器官だと教えられているめくらのお姫様が、サラセン人の医者のカウンセリングによって、目が見えるようになるというお話。

ブチッケ: 6月12日は二国で『チェネレントラ』。シラグーザの王子様、カサロヴァのシンデレラでちょいと話題になりました。

CoCo: シラグーザの二枚目半的な演技が光ってたね。カサロヴァも歌はよかったんだけど…

ガンバ: 王子様、最後のアリアでアンコールに応えて、ハイDまでピタッと決めましたニャー (=^^=)

デデ: その後、チェンバロがカデンツァをなぞったりして、楽しかったねぇ。

ブチッケ: 場内爆笑でした。

ガンバ: 6月29日はバレエの『コッペリア』。もちろんプティの振り付け。

デデ: 前回(2007年)はルシア・ラカッラ、シリル・ピエール夫妻が主役でしたが、今回はタマラ・ロホとホセ・カレーニョのコンビ。こちらもなかなか悪くない。でも、どうしてもコッペリウスを踊ったルイジ・ボニーノに目が行っちゃいますねぇ。

CoCo: ロホもよかったよ。でもプティの舞台に出てくるヒロインて、みんなヘップバーンみたいな雰囲気だよねぇ。ふふふ。

ガンバ: さてさて、7月に入ってすぐ(3日)、ピッコロ座の『二人の主人を一度にもつと』を世田谷パブリックシアターというところで見ました。座席数600ぐらい。ギャラリーからアングルが突き出して、グレーチングが渡してあり、その上に照明機材が乗っかっていたりして、なにやら巨大なスタジオって感じ。

ブチッケ: ミラノのピッコロ座と同じくらいの大きさかな。オペラもこのくらいのところでやるといいのにね。まあともかく、フェルッチョ・ソレーリのアルレッキーノをまた見られただけでもよかったですニャー (=^^=)

ガンバ: 汗を滴らせながらの体当たりの演技と、機関銃のように発射される早口の台詞。人間の肉体表現の極限を見る思いだよねぇ。

デデ: 79歳かな? 10年前とはちょっと動き方や、ポーズの決め方が違っていたけど、いくつかヴァリエーションがあるのかなぁ。まあともかく、今では残り少なくなったストレーレルの演出共々、懐かしいものを見た気がしました。

CoCo: それと、今回初めて字幕がついたんで、ストーリーもずいぶんわかりやすくなったよね。

ガンバ: うまくかいつまんで、ストーリーの流れを理解しやすいようにできていた字幕だと思う。

デデ: さてさて、秋のシーズンの開幕は『オテロ』(9月29日)。リッカルド・フリッツァの棒が一閃すると嵐の場面。海戦を見守る群衆の合唱の迫力といったら!! 二国の合唱団、いいねぇ。

CoCo: 装置は重厚な町並みの真ん中に、猫小屋(?)。その周りには水が張られて、たぶんヴェネツィアの運河を模しているんだと思われる作り。猫小屋が実はオテロとデズデーモナの住まい。ほとんどベッドしか入らない小屋が場面によって方向を変える。とまあ、なかなか凝った舞台でした。

ガンバ: なんかよくわかんない説明だけど、歌手ではオテロのステファン・グールドが心の葛藤をぐっと抑えて好演。シャウト系じゃない、上質な心理劇の表現だったと思う。イアーゴのルチオ・ガッロ、かっこいいねぇ。ドン・ジョヴァンニのときもよかったけど。

ブチッケ: デズデーモナのタマール・イヴェーリは、はまり役かな。以前ボンレスハムのようなおみ足のデズデーモナのベッドシーンを見ちまったことがあるけど、やっぱり普通の人の方がイイ!

デデ: このところなかなか高水準の舞台が続いていますニャー (=^^=)ノ

ガンバ: 10月に入って、14日にバレエの『ドン・キホーテ』。キトリがザハロワ、バジルがウヴァーロフというボリショイコンビ。バレエのファンてオペラ以上に熱くて、もうザハロワがポーズを一つ決めるごとに拍手喝采。確かにスケートの選手なんかに比べると、似ているようでいて体の柔らかさ、しなやかさが全然違うね。

デデ: ま、スポーツ選手は筋肉がついているから、足を上げるんでも両手で掴んで、どっこいしょって引っ張り上げる感じになっちゃうけど、ザハロワはホントに柔らかいねぇ。それから俗に言う、グラン・パ・ド・ドゥの「32回転のフェッテ」。4拍子8小節の間に32回転ということらしいけど、この日のザハロワは4拍目に2回転を入れて、合計40回転していましたニャー。見ている方が目が回りそうでした。

ブチッケ: 地味な役柄だけど、ドン・キホーテの長瀬信夫とサンチョ・パンサの吉本泰久もコミカルな演技が面白かった。

ガンバ: うん、サンチョ・パンサよかったよ。

デデ: というわけで、いつもながらきらりと光る好演もあり、ちょっとなぁ〜と首をかしげたくなる公演もあり……



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