<<年末年始の二国>>

12月11日 ドン・ジョヴァンニ
12月22日 バレエ・シンデレラ
1月21日 蝶々夫人
1月29日 こうもり


新国立劇場



デデ: 年末オペラシティの方は、近頃はやりの発光ダイオードを使って、闇夜の中にすくっと立つツリーが飾られますが、オペラ座の方は古式ゆかしい電球。ロビー全体が暖かくて華やいだ雰囲気でしたニャー (=^^=)

ガンバ: あたいの好きな首振りトナカイさん、今年も登場してました (=^^=)ノ

CoCo: 最初見つからなくて、キョロキョロ探していたね。

ガンバ: 禿げたおっさんが前に立ちはだかっていて・・・邪魔なんだよ、ったくぅ。

ブチッケ: ドン・ジョヴァンニのプルミエはいかがでしたかな?

ガンバ: 演出のグリシャ・アサガロフって二国では「カバレリア」や「道化師」、それに「イドメネオ」なんかをやった人でしょ。正攻法だけど、話の特徴をうまく掴んで印象的な舞台を作る人だよね。今回は舞台がスペインじゃなくてベネツィア。ドン・ジョヴァンニとレポレッロはゴンドラに乗って登場しちゃいました。

デデ: なかなか重厚な舞台作りだったですニャー。ドン・ジョヴァンニのルチオ・ガッロはなかなか一筋縄ではいかない悪役(?)を重厚かつ軽妙に(???)演じておりました。

ガンバ: どちらかというとスカルピアなんかを聞いてみたい人だわねっ。

CoCo: レポレッロのコンチェッティはまあまあ。ドンナ・アンナのエレーナ・モシュクがなかなか聞かせたね。二国ではヴィオレッタに続いての登場だったそうだ。それからエルヴィーラのアガ・ミコライ、ツェルリーナの高橋薫子と、女声陣がなかなか充実していたと思うけど。

ブチッケ: 演出もうまかったねぇ。エルヴィーラの揺れる女心がきちっと舞台から伝わってきた。指揮者のコンスタンティン・トリンクスって人は、大野和士のアシスタントをやっていたというくらいだから、まだ若い人だったけど、なかなかうまくオケをドライブさせて、すっきりとした音を引き出していたと思う。ただ、チェンバロの通奏低音は、何というか、旦那芸の域を出ていないよねぇ。

デデ: 12月にはもう一つ、バレエの「シンデレラ」がありました。クリスマスの時期ってこともあるけど、華やいだ舞台でしたニャー (=^^=)

ブチッケ: んだんだ。この日はゴージャスな電飾にくわえて、劇場のスタッフも銀色のカツラをかぶって宮廷風の衣装を身につけて、まあにぎやかでした。

CoCo: 鼻の頭に真っ赤な電球をつけたトナカイさんがロビーをうろうろしていましたニャ。

デデ: サンタさんもあっちこっちに出没。それはさておき、プロコフィエフのちょっとグロで諧謔的、でも軽妙で快活な音楽に乗って楽しいバレエでした。

ブチッケ: シンデレラって継子いじめの話だったように思うけど。いろんなバージョンがあるのかな? このバレエではやけに人の良さそうなおとっつぁんが出てきたりして、ちょっと雰囲気が違いましたニャー。

ガンバ: でも一番の違いは二人の姉さんたちでしょ。シンデレラをいじめる二人の姉が、男性のバレエダンサー。しかもとびっきりダサイ化粧をして、コミカルに演じていましたニャー。何というのか、ニューハーフショーの道化と言ったらいいのかなぁ。

CoCo: 確かにシンデレラも王子様も登場するんだけど、主役はあくまでも二人のお姉さん。

デデ: ちょっとトロカデロの雰囲気だったかな。さて年が明けて最初の出し物は「蝶々さん」でした。

ガンバ: これは、これは、これは、すごい舞台だった。

ブチッケ: うん。すごかった。

ガンバ: 外国人が日本のオペラハウスでチョチョサンを歌うっていうのは、かなりの覚悟が必要だと思うし、プレッシャーも相当なものだったと思うわけよ。

ブチッケ: でしょうな。

ガンバ: それがこのカリーネ・ババジャニアンというソプラノ、まったそんな重圧を感じさせずに、可憐なチョチョサンを演じていた。

ブチッケ: ですニャ。1幕の最初にシャープレスに年を聞かれて、「15歳」と答えるあたり、普通だと心の中で「そりゃねぇだろ」ってプフっと笑ってしまうわけだけど、この人ならまあアリかなって気になってしまいますねぇ。それほど可憐。

デデ: で、この演出になってから3度目の再演だったけど、今回がピカイチだったかな。栗山民也の演出がまたすばらしい。3回目でも崩れていないねぇ。アメリカの軍艦アブラハム・リンコルン丸が入港している時には、舞台の一番高いところに星条旗が翩翻とひるがえり、米軍のプレゼンスを印象づける。

ガンバ: “Show the Flag”ってやつよね。

CoCo: そしてアメリカ国歌がグロテスクに響き渡って・・・ねぇ、ねぇ、あのシーンさ、どうしても「ピンケルトンよ永遠なれ」って歌っているように聞こえるんだよね。

ガンバ: そうそう、チョチョサンの時代から100年ちょっと経ったのかな。今でも状況は全く変わらない。アメリカって国は永遠にベンジャミン・フランクリン・ピンケルトンを生み出し続ける国だってことを象徴的に表しているシーンよね。

デデ: え〜と、有名な小話がありましたニャー(=^^=) アラブの大金持ちが、「緑色のラクダを連れてきたら、全財産をやろう」と言ったとか。これを聞いてイギリスのMI6はジェームズ・ボンドにどこを探らせたらよいか連日会議を開き、ドイツ人は図書館にこもって文献を渉猟し、日本人はDNA研究に没頭し、アメリカは世界中に軍隊を派遣した。

CoCo: そして、中国人は・・・緑色のペンキを買いに走った。

ブチッケ: え〜と、ピンカートンを歌ったピサピアという人、なかなか健闘していたと思いますね。前回はなんとジャコミーニが歌っていましたが、これはさすがに独身の海軍士官には見えなかった。ピサピアは若々しい欲望を輝かしく歌い上げていたと思いますニャー。

CoCo: スズキの大林智子、ゴローの松浦健、ケートの山下牧子、ここらへんの脇までしっかり役になりきっていました。でもやっぱりチョチョサンを歌ったババジャニアンの存在感がすごかった。この役、若々しくないといけないけど、どこか内心悟っているところがあるでしょ?

デデ: うん、シャープレスが手紙を読み聞かせるあたりかな。あそこはチョチョサン、手紙の内容がわかっているよね。所詮、自分の立場はラシャメン(現地妻)に過ぎないって。だからこそ、茶々入れをして、本当のことを言わせまいとする。あの駆け引きはみごとだった。

ガンバ: 最後に指揮者のカルロ・モンタナーロ。まだ若い指揮者みたいだけど、この人はうまい。ややもすると単なるオリエンタリズム、あるいはジャポニズムに堕ちてしまう日本のメロディーの引用を、プッチーニの作曲技法に立ち返って重層的に響かせつつ一つ一つの意味をすくい上げて、とっても美しい音楽を作っていたと思う。最初から最後まで息を抜くことができないくらい、音楽に引き込まれたよねぇ。

CoCo: んだ。んだ。プッチーニって本当にいいですニャー (=^^=)

デデ: さて、1月の最後は「こうもり」の再演がありました。プルミエの時に比べるとやや、キャストが落ちたかなって感じもありましたけど、主な役はドイツ語圏の歌手を集めて、それなりに整った配役だったでしょうか。

ガンバ: でもねぇ。今回はちょっとねぇ。初演の時には主に日本人のキャストがドイツ語の機関銃みたいな早口のギャグについて行けなくて、時間が凍り付く瞬間が何度もあったけど、今回は、その逆かな。すべてが緩みっぱなし。指揮者のアレクサンダー・ジョエルっていうのが、やけにのんびりとした棒で、オケも歌手も合唱までちぐはぐになっちゃていたよね。

ブチッケ: 合唱まであんなに乱れるなんて、二国では珍しいですニャー。そんな中で一人気を吐いていたのが、オルロフスキーを歌ったエリーザベト・クールマン。

CoCo: プルミエの時のオルロフスキーがやけに大根だったせいもあるけど・・・

ガンバ: 今回のはよく通る声で、演技もよかったじゃない。「ばら」のカンカンなんか聞いてみたい人だよね。



デデの小部屋(ホームページ)に戻る

音楽の小部屋に戻る

ボクの小部屋が気に入った、または
デデやガンバに反論したい、こんな話題もあるよ、
このCD好きだニャー、こんな演奏会に行ってきました等々、
このページに意見をのせたいネコ(または人間)の君、
電子メールsl9k-mtfj@asahi-net.or.jpまで お手紙ちょうだいね。
(原稿料はでないよ。)