デデ: 秋のシーズンが始まって、いきなり超弩級の演奏会が続いています。9月の25、26日は都響の定期で、デュメイがベートーヴェンのコンチェルトを弾きました。指揮はマーク・ストリンガーというユダヤ人。どなたかご意見は?
ブチッケ: はいな。このところいつもベートーヴェンばっかですニャー (=^^=;; これはいかがなものかと。
ジャパンアーツ+都響事務局 :ご意見として承っておきます。
ブチッケ: リサイタルもやってほしいけど、相方がチャイコフスキーコンクール3位、ショパンコンクール4位のあのお方だとちょっと……
都民劇場事務局+カジモド :あのお方はデュメイさんより人気がありますんで……
ガンバ: というわけで、リサイタルは聞く気がしないし・・・都響の定期が唯一デュメイの音楽に触れる機会ってことになっちゃたのよねぇ。困ったもんだ。
CoCo: で、演奏ですが、いつものように雄大なスケールのベートーヴェンでしたニャー。例によって一音一音確かめるように、噛みしめるように弾き進んでいくわけですが、これがどういうわけか、とてつもなく大きなものを生み出すんですニャー。
デデ: オケの提示部で第一主題が短調になったあたりから、客席に背を向けて弾き始めて徐々に調子を上げておいて、ソロの最初の一音で完全に聞き手の心を掴んでしまう。世の中には最初はあまり鳴らなくてっていう人もいるけど、デュメイは出だしから最上の音を出しますねぇ。デュメイ特有の悠然としたテンポで弾き進んで、弾き崩す瞬間が一つもない。緩む瞬間がない。
ガンバ: そこらへんの緊張感に耐えられない人もいると思うよ。でもそこで眠らないと、すごい音楽に出会える。
ブチッケ: そうですニャ。五線紙を持っていたら、音を聞きながらすべて書き取れそうなテンポだね。とにかく楷書。長い間の弾き慣わしで、一般にはポルタメントを使ったり、あるいはテンポを崩したりってのがあるわけだけど、この人の場合はそういうのは一切なし。ただ、ひたすら自分の弾き方を貫いてオケのメンバーまで自分の音楽に巻き込んでしまうってところが、ちょっと並じゃない。
デデ: 今回は第二楽章も天国的な長さと美しさだったじゃないですか?
CoCo: うん、ビブラートっていうのは、装飾音なんだよねぇ。あのテンポで弾かれると、つくづくそう思った。のべつ幕無しにビロビロ左手を揺すっているヴァイオリン弾きが多い中で、これほど音色にこだわる人って今時いないよね?
デデ: たぶん、いないと思う。世界を席巻しているジュリアードのユダヤ系ヴァイオリンと、ロシアのブロンの系列のところってのは、どうも弓を弦に目一杯押しつけて、左手は常にビロビロっていう弾き方を指導しているようだけど、これは音楽から潤いを奪っているよね。
ブチッケ: 第二楽章から第三楽章に飛び込むところ、それから短いコーダの盛り上がり、これは何度聞いてもいいねぇ。最後はオケのメンバーが喜んじゃって、ステージの上の方が拍手が大きかったんじゃない。
デデ: ピリスと別れてからちょっと衰えたのかなぁって気がしないでもないんだけど、でも世界を見渡して、今だにこれだけ弾けるヴァイオリン弾きはいない。
ガンバ: それは確かだ。
デデ: 両日とも後半はブルックナーの6番という、めずらしい作品が演奏されました。(おそらく)