ツィマーマン:軍人たち

指揮:若杉弘

2008年5月7日 新国立劇場


デデ: このところ好調な二国ですが、5月は総力を結集して巨大オペラを上演しました。

CoCo: いやあ、すごかったですねぇ。とんでもないものを見せてもらった。

ガンバ: 4月の「魔弾の射手」もそこそこ大がかりな舞台で娯楽超大作風に楽しめたけど、この「軍人たち」はねぇ・・・すごかったねぇ。

デデ: 20世紀のオペラというわけで、いわゆる「ゲンダイオンガク」なんですが、これが楽しめる、というか、引き込まれる作品でしたニャー (=^^=)

ブチッケ: 今回の上演は、ドレスデンの演出をアレンジしたアムステルダムのオペラからのレンタルという形で実現したみたいですが、これがなかなか優れものの演出でした。二国の大きな舞台の中空に、横長の映画スクリーンのような空間を切って、芝居はその中で進行するわけだけど、これが何とも宙ぶらりんで不思議な空間。机や椅子などの道具が多少使われる以外は、ほとんど無機的な箱といっていいんだけど、突然壁に窓が開いたり、奥の壁が向こう側に開いたりして、外部からよそ者が入ってくる。

CoCo: よそ者ってのは大抵が貴族(=軍人)で、これがブルジョワの生活に土足で入り込んでくる。言ってみれば、フィガロの世界に非常に近いよね。

デデ: 原作者のレンツはまさに啓蒙時代というか疾風怒濤の時代というか、そんな頃を生きた人だから、その時代精神、階級意識といったものが強く投影されているんだろうねぇ。ストーリーはブルジョワの娘マリーが軍人貴族にたぶらかされて、とことん堕落していくという、それだけの話だけど、4幕15場にちりばめられた細かなエピソード一つ一つに、貴族の堕落と横暴、ブルジョワの虚栄といったテーマが丹念に描かれていく。

ガンバ: 15場といっても、オムニバス風にいくつもの場面が同時に進行することもあって、たぶん30回ぐらいは幕が上がったり下りたりしていたんじゃないかなぁ。

ブチッケ: そこまで幕が多かったかどうか? でも一つの場面がせいぜい5分程度で、スパッと切り替わっていくっていうのも、見ていて飽きないよね。しかもどの場面も思わず身を乗り出してしまうような瞬間が用意されていて、演出もなかなか考えられていたと思う。

ガンバ: 衣装もきれいとか汚いとかいうわけじゃなくて、貴族とブルジョワがはっきりと色分けされていて、その意味では「鮮やか」なイメージだったかな。でっぷりと太った軍人貴族がカフェーで女と戯れている。ベジャールのボレロよろしく、机を寄せ集めて大きな台にしているわけだけど、その台の下で必死に机の脚を支えているのは兵卒。兵は貴族じゃない。そんな対比も面白かったわね。

ブチッケ: それから最後に、横長の舞台が30度ほど傾いて、マリーが坂道を転げ落ちるように堕落していく様子を視覚的に見せていたけど、なかなかやるねぇって思ったよ。19世紀的なグランドオペラのドラマトゥルギーとはかなり異質だけど、こういう作品をみごとに視覚化してくれた演出には舌を巻くね。

CoCo: ピットに入りきれない楽器はリハーサル室から中継するほど大規模なオケだったわけですが、これだけの大作をみごとに交通整理してみせた若杉にも大きな歓声が沸いていましたニャー (=^^=)

ガンバ: マリーを歌ったルキアネッツや主要3役以外にも、日本人の歌手が立派に役を務めていたね。これはすごいことじゃない。

デデ: オペラと呼んでいいのか、それとも芝居と言った方がいいのか、従来の形式感では割り切れないものだけど、まさに総合的な見せ物としてものすごく完成度が高い公演でしたニャー (=^^=)ノ



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