ばらの騎士&ファルスタッフ

ばらの騎士    2007年6月15日 新国立劇場

ファルスタッフ  2007年6月19日 新国立劇場


デデ: このところ二国が絶好調ですニャー (=^^=)

CoCo: はいな。先月のバレエ「コッペリア」はルシア・ラカッラが登場して、大喝采を浴びていました。若い頃のオードリー・ヘップバーンにそっくりで、舞台に立っただけでもオーラを発するような存在感がありましたねぇ。

ガンバ: プティの振り付けで、コミカルな役どころを巧みに演じていました。プティの振り付けは女性の美しさを余すところなく表現するわね。それに二国のコール・ド・バレエがまた凄いのよ。

ブチッケ: うんうん、二国のバレエというと「ライモンダ」の海外公演も決まっているみたいで現在絶好調だよね。

デデ: でまあ、オペラの方ではノヴォラツスキー体制の最終作として「ばらの騎士」が上演されました。

CoCo: ♪命短し 恋せよ乙女 紅き唇 褪せぬ間に♪

ブチッケ: お、ピエール・ド・ロンサールでございますニャ。

CoCo: 
                     あ  
                     い  
                     見  
                     て  
                     の  
               む        
               か     後  
               し     の  
               は     心  
         i     物     に  
         権     を     く  
         中           ら  
         納     お     ぶ  
         言     も     れ  
               は     ば  
         オ     ざ        
         ク     り        
         タ     け        
         ヴ     り        
         B              
         ア              
         ン              
         j              
                        
ガンバ: そう来ましたか。では、

                     長  
                     か  
               み     ら  
               だ     む  
               れ        
               て        
               け     心  
               さ     も  
               は     し  
         i           ら  
         待           ず  
         賢     物        
         門     を        
         院     こ     黒  
               そ     髪  
         マ     思     の  
         ル     へ        
         シ              
                       
         リ              
         ン              
         j              
                        
デデ: というわけで、「ばらの騎士」。リヒャルト・シュトラウスの傑作ですニャ (=^^=)
この楽劇のテーマはズバリ、「老い」。

ブチッケ: 介護報酬の不正請求問題やら、ずさんな年金記録の問題等々、国民の怒りも頂点に達しつつある現今、実にタイムリーな上演でございますニャー (=^^=)

ガンバ: ちゃう、ちゃう。ちゃうで〜。元帥夫人(マルシャリン)は確か26か27だし、そのつばめオクタヴィアンに至っては17歳。

ブチッケ: 冗談ですよ。じょ〜だん (=^^=ゞ

CoCo: この上演はまず、キャストが大成功でした。元帥夫人のカミッラ・ニールントは立ち姿があでやかな、いかにもって感じの貴婦人。だけど忍び寄る「老い」をいち早く感じていて、一途なオクタヴィアン「坊や」もいずれは自分の元を去っていくだろうと思っている。ここらへんの感情の機微が、時にコミカルに、時にしっとりと舞台上で演じられていく。

ガンバ: 第一幕の面会者のドタバタの中でこそ、一層マルシャリンの「老い」の予感が際だつような舞台だったかな。オックス男爵のペーター・ローゼ、これもうまかったわね。

CoCo: 役柄にみごとにはまっているというのか、大袈裟な演技をしなくても下司な性格がにじみ出てくる。また声がいいんだニャー (=^^=)ノ

デデ: オクタヴィアンのエレナ・ツィトコーワはどうでしたか?

ガンバ: 声はいいし、立ち姿はオクタヴィアンにぴったりなんだけど…この人、大根だよね。

ブチッケ: うん、演技は過剰というのか過少というのか。

デデ: この役って、ちょうど「フィガロ」のケルビーノに相当するわけで、まあ宝塚だよね。女性のズボン役という意味では大根がふさわしいのかもしれないけど、もう一ひねりあるわけで、女が男を演じつつ、舞台上では女にもなるってところが、難しいのかなぁ。

ガンバ: この人、二国ではケルビーノの他に「こうもり」のオルロフスキーも歌っていたよね。どちらもイマイチの感があるんだけど…

CoCo: そこらへんは好きな人には大受けするんだけど、だめな人には妙な白々しさに感じられるのかな。

デデ: 第二幕から登場のゾフィーを歌ったオフェリア・サラは、始めこそちょっと声が伸びないなぁって感じだったけど、次第に調子を上げてきたんじゃない。

ブチッケ: この人も姿はゾフィーにぴったり、初々しさで元帥夫人と好対照をなす役どころを無難に演じていたと思いますニャー。ファーニナルを歌ったのはベテランのゲオルグ・ティッヒ。いつもニコニコ、人のいいオヤジさんといった役どころを自然に表現していました。

デデ: 第三幕は男爵とマルシャリンが舞台を引っぱっていった感じ。マリアンデルになったオクタヴィアンはさっきも話題になったように、ちょっと演技が白々しい。でも、ひとしきりドタバタが続いて最後にマルシャリンが去っていく瞬間、もう一度オクタヴィアンを振り返るけど、オクタヴィアンはゾフィーに夢中。あの瞬間、夫人の大きなため息が聞こえたような気がしましたニャ。

ガンバ: さて、ジョナサン・ミラーの演出、これはきれいだったよねぇ。

デデ: うん、どの瞬間を切り取っても絵になる舞台。歌手の立ち位置、姿勢、顔の向き、視線…すべてが自然でしかも計算し尽くされていました。

ブチッケ: 照明も自然な光をうまく表現していて、第一幕の衣衣の朝の光。第二幕の昼の光。第三幕の夜の光。それぞれに自然な色合いで、しかも移ろいゆく時間を巧みに照らし出していましたニャ。もう一つ特筆すべきは、脇役陣の充実ぶり。第一幕のテノール歌手から、第三幕の警部に至るまで、まあ文句の付け所がない配役でした。

ガンバ: 新演出の出し物は二国の場合、ほとんど怒号のような「ブラボー」と「ブー」が交錯して、いかにも芝居小屋って雰囲気になるんだけど、今回は珍しくブラボー一色だったわね。指揮のペーター・シュナイダーも東フィルをみごとに統率していたんじゃないかな。オケもいい響きを出していたと思う。

CoCo: オケの響きというと、19日の「ファルスタッフ」もよかったね。もちろん再演ということもあるけど、楽員がヴェルディの仕掛けを十分に理解して、舞台の上が見えているみたいにリアルな描写を聞かせてくれたと思う。

ガンバ: 演出に関しても、たとえば「ホフマン物語」は初演から2年後の再演では、もう演出がドロドロに崩れちゃって、せっかくキャストはよかったのに残念なできになっちゃったでしょ。それに比べると「ファルスタッフ」の再演は、演出が前回よりも徹底した感じで面白さが一層際だっていたように感じたけど。これも演出はジョナサン・ミラー。舞台と登場人物、どの瞬間を取り出しても、フェルメールの絵のような世界。

デデ: このファルスタッフですが、最初はちょうど3年前。ベルント・ヴァイクル、ハインツ・ツェドニク、ジョン・健・ヌッツォなんかが出ていて、なかなか楽しい舞台でした。今回は何と言ってもまずファルスタッフのアラン・タイタスを誉めなくちゃいけませんねぇ。この人、何たってヴォータン歌いだよね。ところが、前回のヴァイクルを上回るブッファのうまさ。

ブチッケ: それは異議なし。フォードのヴォルフガング・ブレンデルも小心な商人って雰囲気をよく演じていたし、アリーチェ(フォード夫人)のセレーナ・ファルノッキアは、長身で気品を漂わせながら、なかなかの策士ぶりを好演。

ガンバ: 私はクイックリー夫人のカラン・アームストロングがいい味だしていたと思うな。ファルスタッフから恋文をもらった二人の女性の使い走りのような役どころだけど、彼女は本当はファルスタッフに気があるんじゃないかな、なんてところを演出のジョナサン・ミラーが読み込んじゃったわけで、まあ、そういった奇妙な立場をコミカルに演じていたでしょ。

CoCo: まあ、ファルスタッフってのは、オックスの10年後の姿というわけですね。そう考えれば、クイックリー・夫人は10年後のマルシャリン。

ガンバ: んなわけないでしょ。

CoCo: でまあ、さっきも言ったけど、オケがうまかったよね。指揮はダン・エッティンガー。二国では常連の指揮者だけど、オケもずいぶんと乗ってたでしょ。

ガンバ: そうそう、ファルスタッフがずぶ濡れになってテムズ川から上がってきて、ワインを飲むところ。最初フルートかな、かすかなトリルから始まって、オーケストラ全体が振動するようなトリルになっていくところ。あそこなんかオケの音を聞きながら大笑いしちゃったよね。

ブチッケ: この公演もまた、脇の歌手がいい味を出していました。フォードの娘ナンネッタを演じた中村恵理、ファルスタッフの従者を演じた妻屋秀和、ともに一場をかっさらう好演でしたニャー (=^^=)

デデ: 妻屋はバラの警部もやっていたから、連日大変でしたねぇ。というわけで、ノヴォ支配人の最後の公演もめでたく終わり、新しいシーズンから若杉支配人になるわけですが・・・

CoCo: 公演の質だけは落とさないようにして欲しいね。

ガンバ: それからロビーを見渡すと若い人が多かったでしょ。

デデ: うん、普段着よりはちょっとだけオシャレしているって感じの・・・

ガンバ: せっかくああいう人たちが見に来るようになったんだから、期待を裏切らないような企画を考えないとね。メトの1階席なんて、加齢臭なんて生やさしいもんじゃない。腐臭、中には死臭を漂わせているような人ばっかで、養老院に迷い込んだ気分になるよね。

CoCo: あそこは小屋も古いし、そういった連中をメインのお客さんにしていると、プロデュースも保守的にならざるを得ないからね。二国はああいう風にはなって欲しくないね。



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