タンホイザー

2007年10月24日 新国立劇場


デデ: 暑い夏もやっと終わって、秋のシーズン最初は二国のタンホイザー。ニュープロダクションですニャ。

CoCo: 二国のワーグナーは今年2月の「オランダ人」以来だよね。小屋主が替わって最初の出し物がワーグナーというのも、意欲が伝わってきますニャー。

デデ: うん、あのオランダ人はなかなかよかったよね。特にこの劇場の合唱団はすごいから、タンホイザーも期待していたんですが、いきなりタイトルロールが代役になって、何かと批判の多いアルベルト・ボンネマ。

ガンバ: でも悪くはなかったよ。ワーグナーの主役テナーって、ジークフリートを始めとして、原則として直情径行型のお馬鹿さんだよね。でもタンホイザーはその中でもちょっとだけ複雑。ローマまで懺悔に出かけるわけだから。ボンネマはそんなところを感情過多に陥らずに、むしろ淡々と演じてよかったんじゃないかな。

ブチッケ: 「ウェヌス賛歌」を歌い上げるところは、メラメラっと燃え上げるけど、全体としてはこの世の中に居場所が見つからない孤独なボクちゃんって雰囲気で、面白いタイトルロールだったね。「ローマ語り」も悪くなかった

デデ: 序曲が始まるといきなり幕が上がって、奥行きが深い二国の舞台の一番奥から順に、5段ぐらいに分かれた巨大な迫りが奈落の底から上がってきます。それぞれにたぶんアクリル製の2階まで突き抜けるような塔がたくさん乗っています。とまあ、ここらへんはちょっと抽象的な感じがしますが、演出は極めてオーソドックス。絵画のように貝がカパッと割れてウェヌスとタンホイザーが登場。もちろんアクリル製の貝ではありますが。

ガンバ: ハンス=ペーター・レーマンていう演出家は、2004年に二国でエレクトラの演出をやった人だよね。あれはなかなかみごとな舞台だったけど、今回も演出が邪魔をしない。盛り上げるところはきちっと盛り上げるという点で、よく練られたプロダクションだったと思う。ただウェヌスベルクの場面では、もっとはじけちゃって欲しかったなぁ。もっと官能の限りを尽くすところを見せなきゃ。

ブチッケ: むふっ。裸踊りですニャ?

ガンバ: まあ、具体的に言えば・・・高いプレミアのチケットなんだから。そのくらいは見せてもいいじゃない。(再演ではなくてもいいけど。)バレエの衣装もかなり地味だったよね。

デデ: あそこらへんライティングで華やかにしようとしたんでしょうが、ちょっと平面的になっちゃったかなぁ。それから第2幕の歌合戦の場面もちょいと地味。二国にはあの「ベリー公の時祷書」から抜け出してきたようなライモンダの衣装があるのに、なんで参考にしないのかなぁ。

CoCo: とまあ、いろいろ不満はありますが、音楽的には第1幕、幕切れのアンサンブルには参りましたニャー。あのハーモニー。ワーグナーがあんなにイタリア風な音楽を書いていたとは。あそこから本領を発揮したのがウォルフラム(フォン・エッシェンバッハ)を歌ったマーティン・ガントナー。特に3幕の「夕星の歌」。抑えた語り口でさりげない歌い回しなんだけど、切々と訴えるものがあったよね。

ガンバ: うんうん。芝居全体のアンサンブルに徹したソロとでも言ったらいいのかな。

ブチッケ: エリーザベトのリカルダ・メルベートもいい歌を歌っていましたが、わたしゃ今回の主役は合唱だと思うね。オランダ人の時もそうだったけど、やっぱり二国の合唱はすごい! 「歌の殿堂を讃えよ」の迫力もさることながら、3幕最後の合唱に至るまで完璧にコントロールされていて、この小屋はこの合唱団なしには語れないって感じがしたね。

ガンバ: カーテンコールでも合唱団に盛んに声が飛んでいたよね。

デデ: 東フィルとフィリップ・オーギャンという指揮者ですが・・・オケは細かいミスは仕方ないとして、まずまず健闘。指揮者はどうなんだろう。あまり官能的なワーグナーではなかったけど、見通しのよい音楽を作っていたかな。欲を言えばもっと瞬間に没入するような、すべてを放擲して、その一瞬に賭けるようなところがあったら、もっと盛り上がったかもしれませんニャー。


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