ごちそうと葡萄酒とうた オルランド・コンソート

2003年3月4日 津田ホール


(津田ホール地下 ユーハイムに集うネコども)

デデ: ビール、ぐびぐび。

ブチッケ: ソーセージ、ぷりぷり。

ガンバ: ハンバーグ、むしゃむしゃ。

CoCo: シチュー、とろとろ。

デデ: ぷはぁ〜。というわけで、今晩のオルランド・コンソート、なかなかんめかったですニャ。

ブチッケ: そう、んめかった。プログラムはゴシックからルネサンスまで盛りだくさん。しかもフランス、イギリス、イタリア、ブルゴーニュ、スペイン=ポルトガル、ドイツと、ヨーロッパ各国の特徴的な曲が歌われましたニャ。もちろん時系列的な俯瞰でもあり、地域的な特色を見て取れるような曲目の選定がされていたと思うけど、そこに一本太い筋が通っておりました。

CoCo: うん。このすじ肉トロトロに煮込んであって、んめえなぁ。

ガンバ: その筋というのが「食」ってわけよね。

CoCo: 食い物と酒に歌はつきものです。

デデ: イェーイ、歌うと腹が減るってことかぁ。

ガンバ: ま、その〜、所以はともかく、フランスゴシックの素朴な歌からルネサンスまで、長いスパンで俯瞰するっていうのは面白かったわよね。

デデ: まだオルガヌムを引きずっているようなフランス・ゴシックの歌(1220年頃〜1363年)は、ちょっと荒々しいような、初々しいような、ハーモニーを手に入れた人間が素直に喜んでいるさまが目に浮かびますニャ。オルランド・コンソートの歌い方も、この時期の曲はピタゴラスに近い、4度、5度を純正に響かせる歌い方だったね。

ブチッケ: そうですニャ。最初に歌われた無名氏の「清貧の農園に」なんて、ほとんどグレゴリアンと違いがわからニャーだよ。

ガンバ: おフランスではやっぱりマショーの「明々と輝く星」。やっぱり作者の名前が残っている曲って、膨大な数の曲を書いたアノニマス氏の作品とはちょっと違う。純粋に響きだけを聞いていてもその才能の豊かさ、音に対するセンスを感じます。

デデ: はい、その通り。この時代の歌は歌詞は普通聴き取れないものだけど、純粋な響きの美しさはちょっとほかにないですニャ。続いてイギリス。イギリスと言えばアイルランド、そしてヨーロッパの片隅にまで追いやられたケルト人。

ブチッケ: そうでげすニャ。ローマ=ゲルマン的音響がゴシックの響きだとすると、セルティック=アイリッシュな響きは全く異なる音響をもたらしたっつうことですニャ。

デデ: English Descantなんて呼ばれるけど、ソプラノの旋律線ととろけるような3度のハーモニー。これですね。ゴシックの音楽が大聖堂と結びついて禁欲的な響きがしていたのに対して、イギリスの3度は当時の人々にとってあま〜く響いたんでしょうねぇ。

CoCo: ピタゴラスの場合には3度は不協和音に分類されていたわけだけど、このケルト人のお陰で音楽が解放されたってのか、いろんな意味で見通しのいい音楽の可能性が開けてきたよね。それにここらへんの音楽から歌詞が聞こえるようになってくるでしょ。

デデ: 複雑怪奇なゴシックの技法と違って、モノフォニーに近い、縦の線が見えてくる音楽だからね。オルランド・コンソートの面々の歌唱技術もなかなかのもの。ピタゴラス音律じゃなくて、3度がぴったりはまる、純正調の響きをみごとに歌っていました。

ガンバ: ここではリチャード・スマートの「猪の頭のキャロル」が楽しかったわ。「ノエル、ノエル」ってルフランに乗って、キリストが猪の料理を運んでくる愉快なうたね。

ブチッケ: これがイタリアルネサンスになるともっともっと俗っぽくなりますニャ。イザークは普通ドイツ(=オーストリア)の作曲家に分類されますが、イタリアルネサンスにどっぷりと浸かった人でしょ。その他に無名氏の2曲もメロディーラインの美しさとポリフォニーの綾とが微妙に溶け合って響きとして美しい音楽を歌い上げていました。

ガンバ: が、歌詞はなかなかのスグレモノ・・・

デデ: でしたニャ。いずれも一ひねりした歌詞で、美しいハーモニーからは想像もできないような愉快な歌。後半はちょっと時代が戻って15世紀ブルゴーニュの歌から。

CoCo: ブルゴーニュというとデュファイとバンショワ。今日はデュファイの「さらば、ラノワの美酒よ」を歌ったけど、まさにイングリッシュ・ディスキャントのとろけるような甘さを受け継いでいたよね。

デデ: ダンスタブルを通じて、ネーデルランドというのかブルゴーニュというのか、まあそこらへんに3度が広まったんですニャー。トップテナーのチャールズ・ダニエルズが聞かせてくれました。このあたりになってくると、歌詞と音楽とが一体化してくるというのか、音楽が感情を表現し始めてくるのがよくわかりますニャ。

ガンバ: で、スペイン=ポルトガルの音楽になって一気に感情が解放されるってわけね。1480年から1530年頃というわけで、まさに大航海時代まっただなか。タモリも真っ青な「ラ・トリコテア」で大いに盛り上がりました。その他、酒の歌、食の歌が盛りだくさん。

デデ: 最後にドイツ。と言っても当時のドイツの中心は現在のオーストリア。神聖ローマ帝国の首都ですニャ。イザークはこちらに分類してもいいわけですけど、とりあえずここではゼンフルの「気品をたたえて」がよろしかったです。

ブチッケ: この歌が始まる前に、ユーハイムのお兄さんがビールを4杯持って登場。メンバーが一口のどを潤すと、実に上品に「気品をたたえて」歌い上げました。まあ、こういったお楽しみもちゃんと用意してあるところが、なかなかよろしいでんなぁ。

ガンバ: というわけで、イギリスの古楽グループにありがちな謹厳実直なスタイルから一歩踏み出して、音楽の楽しさを表現していたんじゃないかな。ただ、カウンターテナーなんかは才能ある人のようだし、もうちょっと締め上げて、ちょっとゆるめてやるともっとよくなるかな。

デデ: 最近ヴェニス・バロックやらキルヒホフやら、前半で引き上げてくるような演奏会が続いたから、今日はホントに久々にリラックスして、最後まで聞ける演奏会で楽しかったですニャ (=^^=)


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