エドゥアルド・エグエス リュートリサイタル

2003年11月14日 トッパンホール


最近売り出し中のエドゥアルド・エグエスというリュート弾きを聞いてきました。MAレコーディングから立て続けにソロのCDを出している上に、リルヴァンなどとのアンサンブルでもなかなかの演奏を聞かせてくれていたので、実演は如何にというわけだったんですが、うん、ヒジョーによろしかったですニャー (=^^=)

最初にヴィゼーの組曲ヘ短調。17世紀後半の人で、ルイ14世のギターの先生だったとか。そう、17世紀後半というとさしものフランスでも、もうリュートの時代じゃないんですニャー。たぶん彼の作品はリュートでもギターでもOKということなんでしょうが、この日に演奏された組曲は、やっぱりリュートで聞いてよかったなぁと感心いたしました。確かに「我が世の春」を謳歌するリュリ楽長の様式を忠実に守った作品だということはわかります。でも、やっぱりリュートで弾くと、もうちょっと前の時代、リュートが楽器の王様だか女王様だかだった頃の典雅な響きが蘇ってくるような気がします。そうルイ・クープランとかフローベルガーとか、そういった作曲家はリュート音楽から大いに刺激を受けて鍵盤曲を作りましたが、言ってみれば彼らの音楽に近いかな。悠然としたリズム感、素朴だけども大胆な和声、より自由なフレーズ。その後の音楽が拍子や拍節感に厳格に囚われていったのに対して、実におおらかに時間が流れます。ゆっくりとしたアルマンドを伸縮自在に弾いた後は、ちょっと速いアルマンド。厳格に拍節を守っているようでいて、音に遊びがあるというんでしょうか。エグエスは時間を自由にコントロールしながら弾き進んでいきます。クーラントの不均等リズムも小粋に、でも悪趣味にならずに心地よく響かせましたニャー。

そうそう、この人、音がきれいなんですよ。指先から実にさまざまな音色を意図的に紡ぎ出してくれましたねぇ。ジェルマン・ピネルって人、どんな人か皆目わからないんですが、たぶんヴィゼーと同じ頃のひとなんでしょうか。その人の組曲ニ短調・ヘ長調。ヴィゼーに比べるとより重厚な音楽。特に最後のシャコンヌの重層的な響きは魅力的でしたニャー。最初の前奏曲は、いわゆる拍節のないタイプのもので、即興的フレーズをごく自然に聞かせてくれました。

後半はお決まりのバッハとヴァイス。やっぱりリュートリサイタルとなると、この二人の名前がなければならないんですニャー。バッハの組曲ト長調は無伴奏チェロからの編曲。エグエスの端正な演奏はちょっと食い足りないかなとも思ったんですが、これはやっぱり曲の問題もありますね。最後のヴァイスの組曲ヘ長調はこれはもう、堂々とした大作。バッハとは一味も二味も違う巨匠の作品ですニャー。組曲ですからダンスナンバーが並んでいるわけですが、舞踏のリズムを残しながら、対位法的テクチャーもかなり入り組んでいます。エグエスはむしろこのアラベスクのようなテクスチャーを慈しむかのようにそっと解きほぐして聞かせてくれました。うん、これは名人の素質がありますニャ (=^^=)

それから会場のトッパンホール。これは古楽にいいホールですね。エグエスという人は、ほとんど名前も知られていないと思うんですが、7割ぐらいは入っていたでしょうか。きっと後ろの方の席の人も、リュートの繊細な音色を堪能できたんじゃないかな。


デデの小部屋(ホームページ)に戻る

音楽の小部屋に戻る

ボクの小部屋が気に入った、または
デデやガンバに反論したい、こんな話題もあるよ、
このCD好きだニャー、こんな演奏会に行ってきました等々、
このページに意見をのせたいネコ(または人間)の君、
電子メールsl9k-mtfj@asahi-net.or.jpまで お手紙ちょうだいね。
(原稿料はでないよ。)