ラ・ボエーム

2003年4月23日 新国立劇場
(付録)ジークフリート 4月6日 新国立劇場


デデ: フニャニャ〜ン。(でっでけ、でっでけでんでんでん・・・と走り回る) いやあいつの間にか風薫る五月。芝生の芽もやっと出揃ってきましたニャ。

CoCo: そろそろビヤガーデン開店といきますか。

ガンバ: そんなことより、この前のボエームどう思うのよ。それにジークフリートも。そろそろ書いておかないと・・・

ブチッケ: そうですニャー。てへっ。どちらも何かと問題を抱えた公演でしたが、まあ、エンターテインメントとしてはそこそこってところですか。

ガンバ: そうかなぁ。ボエームのほうはミミを歌ったチェドリンスっていうソプラノがなかなかいい声だった。でもロドルフォのアレーバロってのがちょっと弱くて、がっかりね。

デデ: ムゼッタの中嶋彰子というのがかなり良かったと思うよ。妖艶な美女っていう普通のイメージとは違ったけど。

ブチッケ: ムゼッタの相方というか、マルチェッロを歌った堀内康雄というのもロドルフォを食ってしまうくらいできが良かったですな。

デデ: だから、ミミとロドルフォが主役っていうよりも、ムゼッタとマルチェッロのコンビも加えて、2組のカップルの恋の物語って感じがしたな。これは原作の『ボヘミアンの生活の風景』にかなり近い感じ。演出は粟國淳という人だったけど、オーソドックスなゼッフィレッリ風の大道具。だけどなぜか屋根裏部屋に出入り口が2つもあって、豪華な作り。

CoCo: わざわざ高い料金払って屋根裏部屋を覗きに行こうって人は少ないから、ボエームっていうとどこのオペラハウスでもチケットが一番安い演目だよね。今回の二国の上演はこのジンクスを破ろうとする意図がうかがえましたニャー。屋根裏部屋を観るのにS席2万ウン千円というのはちょっと掟破り。

ガンバ: モミュスの場なんか、確かに二国の舞台機構を駆使して、豪華にしつらえてはあったじゃない。ビルがいくつもクルクル回転するの楽しかったわよ。でも圧倒的な豪華さと舞台の整合性ということなら、去年のトスカがすごかったかな。

ブチッケ: 4月の始めに観たジークフリートがあまりにもチープな舞台だったんで、ボエームの方がましに見えたんでしょうな。

ガンバ: うん、そうかもしれない。ところで二国の「トーキョー・リング」だけど、今年で三作目のジークフリート。ずっと観てきて何か美しい瞬間があったとか、一瞬でも印象に残るような場面てあったかなぁ。

CoCo: まあ、なんですな。あれだけ大がかりな舞台装置を使って、何とも安っぽいモーテルの部屋を作ってみたり(第2幕)、ブリュンヒルデがお丸のグラーネに乗って登場したかと思えば、次の幕ではグラーネが巨大な張りぼてに変身(ワルキューレ)したり。ディズニーランド風の楽しみがあちこちにちりばめられていましたが、演出家があまりに我田引水の解釈を押しつけてくるっていうのは、なんとも不愉快だったね。

デデ: あれは解釈って呼べる代物じゃないよ。ウォーナーって演出家の自分なりの解説なんだろうけど、すごく親切に解説しすぎるから、全く余韻がないでしょ。ワーグナーの台本はあんな一面的な解釈で割り切れるものじゃないんだけど、演出家が自分の読み方を一生懸命押しつけようとするんで、なんともいたたまれない雰囲気の舞台になっちゃったですニャー。まあ、その手の好事家は、演出の一つ一つをあげつらって、「ああいう意味だ」、「こういう意味だ」って喧しい限りですが、連中にそういった話題を提供するという点で成功したんでしょうね。でも音楽的にも芝居としても余りにも目障りでじゃまな演出でしたニャー。

ガンバ: 今回タイトルロールを歌ったフランツっていうのは、あんまり魅力ある英雄じゃなかったね。第3幕の長かったこと。

ブチッケ: ホントですニャー。一眠りして起きてもまだ「やらせろ」、「いやよ」って延々とやってました。まるで娼婦とチンピラって感じがしましたな。少なくとも今回のジークフリートに関しては歌手は完全なミスキャストでござんした。ミーメを歌ったジーゲルってのがものすごい存在感で、舞台を仕切っていた感じでしたが。どちらかというとこの人にジークフリートを歌わせた方がいいんじゃないかなと思って、プログラムを見たら、やっぱりちゃんとジークフリートも持ち役にしている人でしたニャ。

デデ: 演出があまりにうるさいんで、ノートゥンクを鍛える場面なんか、動作の手順を追っていくのが精一杯で、ほとんど歌になっていませんでしたニャー。歌手にとっても演出が出しゃばりすぎてちょっとかわいそう。それにミスキャストと言えば、ワルキューレではマッキンタイアーがフンディンクを歌っていましたねぇ。もうほとんどフンディンクのための舞台って感じでした。

ガンバ: あん時のウォータンは影が薄かったね。

CoCo: 今回のジークフリートではオケがちょっとひどかったですニャー。まあ、指揮者にも難ありですが。

ブチッケ: N響でしたかな、今回ピットに入っていたの。あのメンバーの中で「ジークフリート」のストーリーを知っている人間はたぶん半分くらいはいたのかなぁ。そのくらいはオベンキョしてきているんだと思うけど、でもあの体たらくには、あきれるばかりでございましたですニャー。

デデ: まあ、N響団員の半分ぐらいはオベンキョしてきたとしても、実際にこの場面で自分が出す音にはこんな意味があるんだってことまで理解している人間は10人に一人・・・

ブチッケ: そんなにいたかなぁ。全部で3人ぐらいってところじゃないっすか。

ガンバ: N響らしくそつない演奏というか、

CoCo: 「大過なく勤め上げました」って音だったね。

デデ: うん名付けて「四畳半襖のワーグナー」。

ガンバ: 指揮者のメルクルっていうのも目先の音符は無難に鳴らすけど、それ以上のストーリー全体を見渡す能力はないみたいだったね。

デデ: それは今回のボエームを振ったえ〜と、ピロッリという指揮者もどっこいどっこいだったね。緻密な音楽を作ろうとするあまり舞台全体への気配りがおろそかになってしまい、音楽が流れない。プッチーニの泣かせ節が全然生きてこない。でもそこはやっぱり東フィル。指揮者をフォローして有り余る音を出していたと思うよ。

ガンバ: そうそう、同じホールで続けて聞いたせいか、オケの違いが歴然としちゃいましたねぇ。N響にはかわいそうだけど、あれはどこまで行っても録音してFMで流すためのオケね。ここ一発の底力は皆無だね。

CoCo: なまじっかピットに入って、底の浅さを露呈したってところかニャ。

デデ: あんまり慣れないことはするもんじゃありませんな。木戸銭なしの学生オケっていうわけじゃあるまいし。金取っている興行なんだから。オケももうちょっとお勉強して、指揮者ももうちょい全体を見通せる人を雇ってもらいたいもんですニャー。



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