クリスティー指揮 レザール・フロリサン

2月12日 オペラシティ メサイア
2月16日 オペラシティ
      パーセル「妖精の女王」(抜粋)
      ラモー「優雅なインドの国々」から「未開人」
     


2月12日 メサイア

デデ: 前回の来日から8年ぶりですか。レザール・フロリサンは。なかなかギャラも高いし、デフレもどこまで落ち込んでいくかわけがわからないし、バタバタと呼び屋も潰れたし、というわけでどこも呼ばなかった、いや、呼べなかったのかな。

CoCo: そうですニャー。今回は大オーケストラと大合唱団を伴っての公演ということで、レザール・フロリサンの真価が問われると言っちゃ大袈裟だけど・・・まあ、いいお値段ですニャ。チケット。

ブチッケ: え〜と肝心の演奏ですが、なんと申しましょうか。クリスティー・玉置司会の演歌ショーといった感じ。序曲の付点からしても、ああ、あのクリスティー節というのか、おフランスのかほりが漂ってきて、続くテノールの“Comfort ye”をやけに思い入れたっぷりに歌わせました。

ガンバ: 「こんばんは、クリスティー・玉置でございます。見捨てられ、蔑まれ、侮られ、辱められ、唾を吐きかけられても顔を隠すことがなかった男。男の中の男。今夜はそんな男の生涯をじっくりと歌い上げて参ります。じーざすくらいすと・すーぱーすたー!!! その名はメシア!!!

CoCo: いぇ〜い (=^^=)ノ

デデ: 続くバスの“Every valley”をかなりのテンポでグイグイ引っ張っていきましたニャ。ここらへんからメサイアの雰囲気がでてきました。今晩の歌い手さんの中ではこのポール・ゲーという歌手が傑出していたね。急速なメリスマもきちっと歌っていたし。

ガンバ: ソプラノを2人で歌いわけていたけど、イム・スンハエというのはコロラチューラ専門。発音はともかくとして、シオンの娘の“Rejoice”のアリアはなかなか思い入れたっぷりで、都はるみの雰囲気を漂わせていたわね。もう一人のソフィー・ディンマンてのは、ちょっとハスキーヴォイスでスローなバラードなんかが似合いそう。

ブチッケ: そんでもって、通常は「その軛は負いやすく」の合唱で第1部が終わるところなんだけど、なんだか巷の噂ではCDの取り替え位置に合わせたとかで、休憩前に第2部の羊の合唱までやっちまったねぇ。

デデ: そうそう。あそこで休憩ってのはちょっと中途半端な感じがするよね。あのコーラスの後も、あざ笑ったり、むち打ったりってのが続くわけだし。ちょっと前後するけど、「嬰児が生まれた」って合唱。クリスティーはまるでオペラを振っているような表情でやってましたニャー。すごく楽しそう。してやったりって雰囲気。

ブチッケ: ホルンまで登場しちゃって。

CoCo: 確かにホルンを足して、中音域を充実させると華やかになるんだニャ。休憩後は華やかなナンバーが続くから、クリスティーの外連味たっぷりな指揮が冴え渡っていたよね。ハレルヤ・コーラスの最後で猛烈なアッチェレランドをしてみたり。

ガンバ: うんそうね。合唱も歌手も、それなりに奮闘していたと思う。けど、やっぱりレザール・フロリサンて、学校なんだよねぇ。優秀な人たちはどんどん出ていっちゃうでしょ。常に若手を補充して使っているようだけど、ちょっとどうかなぁって人もいたりして。

デデ: 合唱はちょっとね。あの大人数で透明感を出すのは無理なのかもしれないけど、ちょっと人数で押していく感じが、イマイチ好きになれなかったですニャー。

ブチッケ: オケもあれだけの人数になると、微妙なニュアンスを聞かせるというより、音量で勝負する感じになっちゃいますな。でも弦があんなに大勢いて、それでもヒロ・クロサキの音になっているってのは、すごいですニャ。というかクロサキの音しか聞こえてこなかったというのか。

CoCo: それは言えてる。

デデ: というわけで、もう一つのパーセルとラモーの演奏が楽しみです。

CoCo: ところで次もモルガンスタンレーがスポンサーなんだろうか。株屋が大量に招待券をばらまいて客席はそこそこ埋まっていたんだが・・・

ガンバ: なんとお土産付きの招待券だったみたいね。自腹切って行く私たちは惨めねぇ。


2月16日
        パーセル「妖精の女王」(抜粋)
      ラモー「優雅なインドの国々」から「未開人」


ブチッケ: 今日はなかなかしゃれた演奏でございましたな。

ガンバ: うんうん、楽しかったわねぇ。特に前半のパーセルはレザール・フロリサンの持ち味が全開だったんじゃない。

デデ: 最初の序曲の後、何曲かダンスナンバーが続いて、ウキウキしてきましたニャ。そしていよいよ酔っぱらいの登場。

CoCo: 待ってました! バッソンがいい味を出して、酔っぱらいの雰囲気を盛り上げていたね。メサイアの時と違って歌手や合唱ものびのびやっていたんじゃない。

デデ: そうだよね。やっぱりこの団体ってオケだけ、合唱だけ取り出してもあまり目立った特徴はないような気がするんだけど、演奏会形式とは言え、オペラをやると本領を発揮するよね。やっぱりストーリーというか、芝居があるとないとではえらい違いですニャー。ソロ、合唱の合間にたくさんのダンス曲が演奏されたけど、これがまた生き生きとして楽しかったですニャ。

ガンバ: これでホントのバレエが入ったらもっと盛り上がったのにね。

デデ: そうそう。バレエも見たかったですニャ。ところで後半のラモーなんだけどさ。本当はこっちの方を期待していたんだけどなぁ。

ブチッケ: そうですニャー。もっとぶっちぎれた演奏を楽しみにしていたんでげすが、ちょいとノリがイマイチだったすニャ。もっとも切り取り方があまり効果的じゃなかったというのか・・・なんたってこの頃のおフランスものは奇妙きてれつなストーリー展開、場の雰囲気をぶち壊すような唐突なバレエやダンス曲なんかがふんだんに入っていないとねぇ。

ガンバ: そうなのよぉ。そこらへんのはじけ方が足りなかったわね。「未開人(ソバージュ)」というわけでもちろんアメリカが舞台なんだけど、ネイティブ・アメリカンの娘に恋するフランス人とスペイン人の方がむしろソバージュだったわね。

CoCo: まあインディアンのほうが、今のアメリカ人よりはよほど文明的だったという教訓じゃないかな。

ガンバ: 今となってみるとね。

デデ: ところで、クリスティーのところ何度聞いても同じような感想になっちゃうんだけど、やっぱり学校なんだよね。優秀なメンバーもいるんだけど、売れるようになるとすぐに出ていっちゃうでしょ。適宜新人を発掘してはいるんだろうけど、やっぱり食い足りないね。歌手も器楽も。比較する意味はないけど、ヤーコプスやトントン、それにサバールのところのようなホントのプロ集団を聞いた後だと、クリスティーのところはちょっと微温湯的というのか、音楽の突き詰め方が甘いなって気がしない?

CoCo: そこなのよぉ。バロクーなものってもっと破天荒な、支離滅裂な、不均等な、デコボコなところがあっていいはずなのに、まるでモダンのオケを聞いているみたいになめらかで、引っかかりがない音作りだよね。

ガンバ: ここぞってところで出張ってくる奏者も歌手もいないし・・・

ブチッケ: そんなところがクリスティーの趣味かもしれないけど、聞く側にとっては物足りなさを感じてしまいますニャ。トランペットや打ち物ももっと出てきていいし、あれだけ豪華な低音陣を擁していながら、ムード音楽みたいな音作りをしているってところ、一般受けはするかもしれないけど、それだけにバロック的な面白さは半減でしたニャ。

デデ: テオルボやガンバまで登場していながら、ここぞってところの一音が出ませんでした。良くも悪くもクリスティーの趣味なんだろうけどさ。

      


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