(デデのひとりごと)
2002年秋のシーズンに一つも感想が載らないのは変ですニャー。世の中いかに不景気とはいえ、そこそこの数の演奏会はあったわけで、一つも行かなかったわけじゃないんでして・・・まあちょっと忙しかったのよぉ。イラク問題とか北朝鮮問題、はたまたアルカイダ、木星人来襲等々。ん?
とりあえずちょっと印象に残った演奏会をいくつかメモ程度に書いておきます。
★アンサンブル・マテウス+ジャン=ポール・フシェクール
10月18日 武蔵野市民文化会館
アンサンブルとマテウスを掛けてジャンを足すとポール掛けるフシェクールと等しくなる。いやいや、謎掛けじゃありません。たまたま。テノールのフシェクールが出るというので武蔵野まで行って来ました。まずアンサンブル・マテウスというのはどうやらフランスの団体で、最近CDもいくつか出しているみたいです。なかなか切れ味の鋭い古楽のアンサンブルでした。特にチェロ・バスに芸達者な人がいて低音から支えている感じ。リーダーのマテウス氏がヴァイオリンを弾きながらの指揮でしたが、これからが楽しみなグループと言えるでしょう。
曲目は全てヴィヴァルディのアリアばっかり。恋の歌、怒りの歌、嘆き悲しむ歌・・・でもなぁ、この時代のオペラって、残念ながらテノールは主役じゃないんですよねぇ。というわけで、筋書きもわからないアリアばかり並べられても、聞く方にはちょいときついものがありました。フシェクールは相変わらず芸達者で、それぞれの役どころをうまく歌いわけていたとは思うんですが。この演奏会に関してはアンサンブル・マテウスというのを知ったのが最大の収穫。
★京劇「駱駝祥子(らくだのシアンズ)」 江蘇省京劇院
11月8日 池袋芸術劇場中ホール
老舎の小説を現代京劇にしたものですニャ。車引きのシアンズのどん底生活を描いた芝居ですが、何しろ暗い。1920年代という中国にとっては動乱の時代。その中で必死に生きている底辺の人々。稼いでも稼いでも、また一文無しに転落。今は亡き「新国劇」の世界に近いでしょうか。「一本刀土俵入り」、「人生劇場」、「瞼の母」、「国定忠治」・・・そんな雰囲気。楽隊の音楽も言ってみればお涙頂戴のド演歌調。まあ、文化大革命なんてのを乗り越えなければならなかったわけで、そのぶんちょっとドラマトゥルギーが未成熟というのか、感じ方が一面的というのか、老舎が作品に込めた意図を多面的に汲み取るというところまでは行っていないのかもしれませんニャー。役者さんたちはなかなか優れた演技をしていただけに、ドラマとしての求心力がイマイチだったのが残念。
★ファビオ・ボニッツォーニ チェンバロ&オルガン・リサイタル
12月7日 武蔵野市民文化会館
この人に関してはまだこれからの人だと思います。でもレパートリーがとにかく広いですニャー。チェンバロではピッキ、ストロッツィ、フレスコバルディといった初期バロックのものから、スカルラッティ、ジェミニアーニまで。特に初期バロックの鍵盤音楽に関しては一家言ありそうです。ただし楽器はアレグロの貸し楽器で、ブルース・ケネディ作のジャーマン。およそ美しさ、力強さとは対極にある楽器ですニャー (=^^=;;
オルガンのほうも初期バロック、いやルネサンスと言った方がいいものからバッハまで。休憩を挟んで6時間に及ぶマラソンコンサートでございました。テクニックはしっかりしているし、音楽も奇をてらったところがない、正統派の真っ向勝負。なかなか好印象を受けました。特にブクステフーデのパッサカリア冒頭のペダルソロにはぶったまげました。これはただ者じゃない。しかし、雪になりそうなくらい冷たい雨の中、武蔵野まで行って帰ってくるは辛かったですニャー。