デュメイの弾く、ベートーヴェンのコンチェルト

2002年3月30日 東京交響楽団定期演奏会 サントリー


(船橋屋にて---天ぷらをつまみつつ)

ガンバ: うふふ。デュメイ・・・

ブチッケ: よござんしたニャー (=^^=)

デデ: 2年前の来日の時に読響で、やっぱりベートーヴェンを弾いたでしょ。どうだったかなぁ、すごく緻密な音楽をやっているのはわかったんだけど、イマイチ乗りきれないって感じが残ったよね。

CoCo: うん。ものすごくゆったりとしたテンポで入って、テンションは高いんだけど、ちょっと空振りかニャ、なんて感じもしたね。

デデ: 今回は、第一楽章のテンポはあの時と似たような、やっぱり悠然としたテンポだったけど、音楽の密度が段違いだったね。

ガンバ: そうなのよぉ。部分部分を取り出してみると、まるでエチュードをさらっているかのように、正確無比の演奏だったでしょ。一瞬たりとも弾き崩したり、なんだか意味がわからないフレーズっていうのがないのよねぇ。

デデ: ホントに、演奏聞きながら五線譜に写せそうな演奏でした。だけども、決して無味乾燥な演奏ってわけじゃなかったでしょ。むしろ、五線譜に書かれていない部分がすごかったと言ったらいいんだろうか。古楽的な短いフレージングとは対極にあるような、息のなが〜〜〜〜〜〜〜〜いフレーズの作り方。でも、その長いフレーズがどれ一つとして今まで弾かれたように弾かれることが全くなかったね。

ブチッケ: そう。どのフレーズもまるで、今できたばかりの曲の初演を聞いているような気がしましたな。音色、強弱、緩急、アタック、ビブラートやトリルのスピード、重音のバランス、音楽にかかわるあらゆる要素を徹底的に吟味して備えてきたんでしょうな。

ガンバ: ヴァイオリン弾きにすれば、もう手垢がべっとり付いて、それでも繰り返し演奏しなきゃならない、「濡れ落ち葉」のような曲なんでしょうけど、今回は特に、譜面から全面的に洗い直して、まっさらな状態から読み直してきたんじゃないかな。例によって、オケの提示部の後半あたりから客席に背を向けて、オケと一緒にちょこちょこと弾き始めて、楽器のコンディションを上げておいて、ソロの出ではちょっと抑え気味に重音を鳴らしていたよね。

CoCo: 入りの重音から気負い込んで弾く人もいるけど、デュメイはむしろ穏やかに一つ一つの音を慈しむような弾き方で入ってきましたニャ。最高音で粘るわけでもなく、でも、ビブラートも微妙に加減して、ここがフレーズの頂点だよってなところをさりげなく聞かせる。決して大袈裟にならないんだよね。

デデ: 何度も聞かせどころを通過してカデンツァに至るわけだけど、最初にガンバが言ったように、一つとして曖昧なフレーズがないし、本当に基本に忠実に音楽を作り上げていたね。当節、ビブラートをビラビラに効かせたり、決め所の音程をズリ上げて合わせたりって人がほとんどだけど、デュメイはそういった小手先の技術には絶対に頼らないんですニャー。

ガンバ: 細かい音型やトリルの一つ一つまで、左手で指板を押さえる音が胴に共鳴して「ポン・ポン・ポン」て聞こえてきたでしょ。あんな正確無比な演奏ってはじめて。

デデ: 最初に言ったとおり、かなりゆったりとした、つまり、“Allegro ma non troppo”という速度表示の“ma non troppo”に寄ったテンポだったと思うけど、時間を持て余すとか、音楽の流れが阻害されるといったことが全くなくて、まぎれもなくベートーヴェンのすごい音楽が立ちはだかっていたって気がしたね。どちらかって言うとおいらは、この曲は苦手な方なんだけど、いやあ、あっという間の第一楽章でした。

ブチッケ: カデンツァのちょっと対位法っぽいところが泣けましたですニャ。重音をガシガシ弾く人が多い中、デュメイはむしろしっとりと弾いていましたです。ところが、各声部の有機的なつながりが視覚的といってもいいほど、くっきりと音で表現されていました。

ガンバ: うん、あれは相当研究してきたんじゃないかなぁ。どうしてあんな弾き方ができるんだろうって、なんか不思議だったわ。

デデ: というわけで、すでに第一楽章が終わったところで、耐えかねたように拍手が起こりましたニャ。第二楽章の美しい、美しい歌。管楽器との掛け合いの部分でも、東響はなかなか頑張っていたんじゃないでしょうか。

ガンバ: そうね。でも、でも、もうちょっと色気がねっ。指揮の秋山もデュメイの音楽をよく理解して付けていたと思うんだけど、うん、やっぱりそこから先は、オケの技量かな。

CoCo: 第三楽章の入りは思ったよりもあっさりめだったかニャー。前回、読響とやったときは、デュメイがかなり粘ってから、やっとロンドのテーマを弾きだしたような記憶があるけど。

ブチッケ: それは、どうだったですかな。確かに今回は、あっさりと突入しました。が、、、、ロンドの主題が帰ってくるたびに、手を変え品を変え・・・

デデ: 手練手管の限りを聞かせてくれましたニャー。

ガンバ: 何回か現れる副主題とのコントラストも面白いんだけど、ロンドのテーマ自体も、一種の変奏曲になっているんだなっていうのが、よくわかったわね。

ブチッケ: コーダに入るところで、デュメイだったのか秋山だったのか、大声で気合いを入れていたよね。あれでオケが最後の力を振り絞っていましたニャ。

デデ: で、コーダもひとしきり進むと一回緊張がほぐれるでしょ。そのあとのヴァイオリンの一鳴きと、オケの二音。これが今日の演奏のクライマックスを作りました。デュメイが例の上向音型をややもったいぶった仕草で、ゆったりと弾き進めると、最後にオケがペザンテでピシッと決めてくれました。メデタシめでたし。

CoCo: 最後の一音と同時にP席からブラボーがかかって、あれは、絶妙のタイミングでしたニャー。デュメイもよほどうれしかったのか、会心の演奏だったのか、ブラボー屋さんの方を向いて何度もお辞儀をしてたよね。

ガンバ: それにしても、カーテンコールはすさまじかったわね。東響であの拍手やらブラボーやら、ひょっとすると、ヤンソンス時代以来じゃないかしら。

デデ: いやあ、4月3日のリサイタル(サントリーホール)が楽しみになってきましたニャ。


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