読響特別演奏会

ベートーヴェン

ホルンとピアノのためのソナタ
ピアノ協奏曲第3番
交響曲第7番

指揮:ジャン=クロード・カサドシュ
ピアノ:マリア・ジョアン・ピリス
2002年3月16日 東京芸術劇場


(土曜のたそがれ時、猫寿司に集う猫ども)

ガンバ: すっかり春ですねぇ! 桜が咲いてたよ。

CoCo: ウニャ。どうも花の咲く頃というのか、木の芽時というのか、体がむずがゆくて・・・(ゴロンゴロン)。

ガンバ: いくら毛が抜けるからって、こんなところでゴロゴロしないでよぉ (=^^=;;

デデ: ふふ、私なんざぁ、もうちゃんと冬毛はクリーニングに出しちゃったもんね。ところで、今日はピリスがお目当てで池袋までぶらぶら行ったんだけど、どうだった? わたしゃむしろ、指揮者のカサドシュに惹かれたねぇ。

ガンバ: そうね。ピリスにはちょっとがっかり。若い頃はすごく繊細で集中度の高い演奏をしていたでしょ。音楽がすごく内向的で、ちょっとでも触ったら壊れちゃいそうな・・・ 同じ内向的でも、内田光子の演奏なんかは、ちょっとやそっとじゃ壊れない。「ふん、黙ってあたしの演奏をお聞き!」ってな雰囲気だったけど。ピリスの演奏は、本当にちょっとした外からの圧力でもすごいショックになりそうで。はれ物に触るような気分で聞いたでしょ。

ブチッケ: そうですニャー。そんなスタイルがしばらく続いて、それからフッとピアノを弾かなくなっちゃいましたな。それから、復活したかと思いきや、デュメイとくっついて、実におおらかでいて、しかもものすごく感受性の強い弾き方になりました。

ガンバ: そうそう。その感受性なんだけど。以前に比べて、外部からの刺激を積極的に吸収するような感じ方になってきたでしょ。ところが、今日のコンチェルトはちょっと・・・はっきり言えばデクノボウ。なんとチラシに曰く、“Chopin like Beethoven! Beethoven like Chopin!!”だってさ。

デデ: まあ、ショパンのように弾いたベートーヴェンといえば、確かに今日の演奏を言い当てているかニャー。音色やタッチはものすごく豊富な人だけど、その手持ちの道具を使いすぎたっていうのも、ちょっとベートーヴェンの音楽から乖離していった原因かな。確かに3番のコンチェルトは、ハイドンやモーツァルトの様式美から一歩抜け出して、音楽上のロマン主義に一歩踏み込んだって感じはするけど、まだまだ、古典的な美意識が支配的な音楽だよね。ロマンチックな叙情性をたっぷり染みこませたような演奏をされると、やっぱりちょっと違うニャーって感じになっちゃうねぇ。

CoCo: それで、オケもイマイチやる気がなさそうだし、今日はもう帰ろうかニャーなんて思ったわけですが、後半の交響曲第7番まで聞いてよかったですニャ。

デデ: そうそう。え〜とジャン=クロード・カサドシュってのは、あの有名なカサドシュ家の出だそうですニャ。名ピアニストだったロベールから見て甥に当たる人だそうです。おじさんと同じで打楽器から出発して、こちらは指揮者になったんですニャー。

ブチッケ: 今ではモーツァルトはもちろんのこと、ベートーヴェン、シューベルト、シューマンぐらいまでは、モダンのオケでも時代楽器の語法を無視してはやっていけない時代でござんす。で、このカサドシュ氏もなかなかそこらへんをしっかり押さえていたんじゃないですかな。

ガンバ: うん。楽譜はどこのを使ったかわからないけど、スケルツォのトリオで明らかに普通と違うってフレーズがあったわねぇ。まあ、それは些末なことだけど、全体にきびきびしたテンポで、フレーズは短めに、弦と管のバランスをミックスモードじゃなくて、シャンパンモードでやってたわね。

デデ: つまり、比較的厚めの弦だったけど、そこを突き抜けて、シャンパンの泡のように管楽器がしゃしゃり出てくる趣向ですニャ。うん、なかなか管楽器も健闘していたし、技術的にもかなりの水準だったと思うけど、やっぱりもう一つ自発性が欲しいところでした。それより面白かったのは全体の構成。1・2楽章と、3・4楽章という2つの大きなまとまりとして捉えて、それぞれの間はほぼスビトでつなげるという演奏。1楽章のイントロから主部に入るとかなりのテンポで飛ばしておりましたニャ。読響も指揮に応えて熱演だったです。

ガンバ: テンポ感、ビート感がオケ全体に浸透していて、無理がなくて、しかもかなり気合いが入った演奏だったわね。

デデ: 途中で一箇所テンポを落として管のソロを浮きだたせてみたりして、なかなか効果も意識した指揮ぶりでしたニャ。第1楽章の最後に、ベースがブーンと唸るあたりもよく鳴っていました。スビトで入ったアレグレットでは、対位法的な掛け合いもなかなか繊細にこなしていましニャ。

CoCo: スケルツォのトリオだけど、あそこまでテンポを落とす必要があったのかなぁ。せっかく軽快なテンポで出て、オケも一生懸命弾いていたのに。

デデ: あっ。そうそう、トリオのテンポだけはなんだか古典的なところに落ち着いちゃった感じだね。で、スビトで入った第4楽章。これはもう、火花が飛び散るような快演。ベートーヴェンが書き込んだメトロノームはたぶん132ぐらいだったかと思うんだけど、ほぼそのテンポに近かったんじゃなかな。弦は必死で食らいついていくって感じだったけど、外連味がなくて、むしろ潔い。60人の弦楽器が一生懸命ズンドコドンのリズムを刻んでいる様は、なかなかのスペクタクルでもありましたニャ。

ブチッケ: ピリスの時に動員されていたブラボー屋さんは帰ったようでしたが、7番のあとの方が盛大で暖かい拍手が長く続きましたニャ。やっぱりお客さんも正直ですがな。


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