モラゲス木管五重奏団



モーツァルト:セレナード第12番 ハ短調 K388(D・ワルター編曲)

プーランク:ピアノと18の管楽器のための舞踏協奏曲「オーバード」(大滝雄久編曲)

ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(D・ワルター編曲)

2001年6月20日 カザルスH


デデ: 梅雨のさなか、むしむししていやな時期ですニャー。

CoCo: 今にも降り出しそうな、そんな天気でしたが、今日は久しぶりにカザルスホールが超満員に膨れあがりましたです。まあ、席を指定しないってぇのも、善し悪しですニャー。

デデ: そうそう、開場前から延々長蛇の列ができちゃって、少しでもましな席を確保しようということでしょうニャ。

ガンバ: ところで、今日の曲目だけど、全部編曲ものね。

ブチッケ: まあ確かに、木管五重奏のオリジナル曲っていうのは限られていますからニャー。でも、編曲であることを感じさせない、というか、あたかも、オリジナル曲のように響いておりました。あれは、編曲の妙というのもあるんでしょうが、演奏もたいしたものですニャ。

デデ: うんうん、最初のモーツァルトのセレナードは、オリジナルではオーボエ、クラ、ホルン、ファゴットが2本ずつという編成ですニャ。モーツァルトが大嫌いだったフルートを入れて、ほかの楽器を1本ずつにするってのも、かなり面倒な編曲ではありますニャー。もともとのメロディーラインが低音に偏っているわけだし。

ブチッケ: そうですニャ。もともと、モーツァルトのセレナードにしては暗くて重くて、一風変わった曲ですニャ。でも、出だしのハ短調のトニカのアルペッジョからして、編曲ものとは思えないほど堂々とした響きを出していましたニャー。

ガンバ: ホルンとファゴットの2人がすごくうまいでしょ。で、その上に乗ってクラやオーボエが自在にアンサンブルを作っていく感じかな。クラリネットのモラゲスっていう人は、ソロで聞くとイマイチって気がするんだけど、根っからアンサンブルが好きそうねぇ。デュナミークやら、アクセント、タンギングの感じ方が本当に5人とも揃っているんだわさ。

CoCo: あの40番のシンフォニーにも通じるような、怖い怖いメヌエット。ちょっと対位法的に書かれているんだけど、音楽の横の線と縦の線が織りなす綾が、怖いを通り越してすごくすっきりと表現されていましたニャー。ガンバが今言ったように、5人の感じ方が本当に調和しているから、ああいった音楽ができるんじゃないかな。

デデ: で、最後はちょっと喜劇的にハ長調に転調して終わるわけだけど、これはモーツァルトのお客様サービスの部分なわけで、本来は短調で重々しく終わりたかったんでしょうニャー。

ブチッケ: 今の時代に聞くと、あのエンディングはいわば、ナンチャッテ効果と申しましょうか、延々とやってきた音楽の雰囲気をがらっと変えちゃっていますね。

ガンバ: だからって、別に下品だとか、まとまりがない、というわけではないんだけど。

CoCo: 2曲目はプーランクの「オーバード」。本来は管楽器のオケを従えた、ピアノコンチェルトって感じの曲だけど、こんな小さな編成で室内楽的にやるのも、なかなか面白かったんじゃない。

ガンバ: うんうん、あのねぇ、プーランクっていう人は、20世紀最高のメロディー・メーカーね。時代的にはちょっと前の印象派の人たちが、やけに音の響きに凝っちゃったでしょ。それから、パリで活躍したストラビンスキーは、どちらかというとリズムが勝った音楽。それに対して、プーランクは、まだ20世紀にもこんなにきれいなメロディーやハーモニーの可能性が残っていたのねって感じさせてくれる。

デデ: それに、弦楽器が入った曲もいくつかはあるけど、膨大な数の歌曲を除けば、管楽器の曲が大半だよね。有名な六重奏も書いたし。つまり、音色の対比ということに関しては、本当に知り尽くしていた人だよね。

CoCo: オリジナルの「オーバード」に比べても、遜色のない迫力でしたニャー。いつも感心するんだけど、ピアノの出羽(いずは)真理という人は、本当にアンサンブルがうまいですニャー。こういうピアノコンチェルトのようなものだと、ちょっと迫力不足かなあなんて心配していたんだけど、杞憂杞憂。

ガンバ: そうねぇ。あんなに弾けて、しかもこの五重奏団に溶け込むようなピアノってちょっとびっくりしたわね。前回の来日の時にはプーランクの六重奏を弾いたけど、このときもよかったわねぇ。管楽器の音色の対比をピアノでも弾き分けてみせるって感じ。トッカータのちょっと無機的なスタッカートの鋭さ、キラキラ光るような高音、ぐわ〜〜んと重い低音。どれ一つとしてプーランクらしからぬところがないっ。

ブチッケ: それに加えて、モラゲス様御一行も実に楽しげにやらかしておりましたニャー。

ガンバ: あのホルンのソロのすごいことといったら。

デデ: 後半も編曲ものでしたニャ。ムソルグスキーの「展覧会の絵」。こりゃまあ、腐るほど編曲されてきた曲で、で、その大半が忘れ去られてしまって、今残っているのは、ラベルのオーケストラ版だけでしょうかねぇ。

ガンバ: そういえば、アシュケナージ版なんてのもあったわね。

デデ: オリジナルのピアノ曲があまりに完成度が高すぎるんで、ラベル編でさえ、ちょっとなぁって気がするんですけど、でも、誰もがアレンジしてみたいっていう誘惑にうち勝てないんでしょうか。

CoCo: 今日のは、メンバーでオーボエを吹いている、ダヴィッド・ワルターの編曲だったわけだけど、どうかなぁ、かなりラベルを意識した編曲かな。でも所詮が木管五重奏。ラッパはないし、バスドラもシンバルもない。というわけで、この編曲でもピアノの出羽真理が大活躍でしたニャー。

デデ: 管楽器ってのは音域によって音色の変化が大きいし、ホルンはわざと音を割るような吹き方もできるわけで、メンバーが編曲した強みがよくでていましたニャー。冒頭のプロムナードの主題はオーボエ。ここは多分にラベルのトランペットを模倣した感じかニャー。

ブチッケ: 確かに、バロック時代はオーボエという楽器は、弦に重ねたりして、輝かしい音色を作るために使われておりましたニャ。そんな連想もあるかなぁ。まあ、その後の名画の数々。音色の饗宴でしたニャ。特に面白かったのは、何度も形を変えて現れるプロムナード。たぶん、弦楽四重奏ではこれだけ華やかな編曲はできないでしょうニャー。

ガンバ: やっぱ私は、ひよこの踊りだっけ、あのフルートの鮮やかさに惹かれたわね。

デデ: さてさて、最後のキエフの大門をどうやるかと思いきや、これがムソルグスキーのオリジナルのまま、ピアノのソロで始まって・・・

ガンバ: あそこのぐわ〜〜〜〜んっていう低音の迫力もすごかったわね。

デデ: 次第に楽器の数が増えていって、あの大きな3連音符がでてくるあたりからのダイナミックな響きはなかなかでした。うん、これは、ラベルの編曲よりも、ずっと楽しめましたニャー。近々、レコーディングもするそうで・・・


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