縦笛の奇跡(The Miracle of the Recorder)

フランダース・リコーダー・カルテット

バルト・スパンホーフ
ヨハネス・トル
ヨリス・ヴァン・ギーテム
パウル・ヴァン・ロイ

2001年5月7日 カザルスH


デデ: 連休とかいうものも終わったらしいですニャー。

CoCo: ですニャ。どっか出かけたの?

デデ: うにゃ。冬物の毛皮をクリーニングに出して、え〜と、それで終わり。

ガンバ: あんまり天気も良くなかったみたいだし。でまあ、やっと普段の生活が始まって、久しぶりの音楽会。フランダース・リコーダー・カルテットというのは、Opus111から立て続けにレコードを出していて、「ん! これはなかなかできるな」って思っていたんだけど、確かに、んまい連中だったわねぇ。

ブチッケ: 確かに。今までのリコーダー・カルテットの器とは段違いでございましたニャー。

デデ: まず、おフランスのバロックから、ボワモルティエのコンチェルト。これはまあちょっと小手調べといったところ。フランスのこの時代、つまりヴェルサイユの音楽っていうやつは、リコーダーに関してはどうも地味ですニャー。やっぱり、もう、時代はトラヴェルソっていう印象がますます強くなってしまいましたニャー。

ブチッケ: ダニカン・フィリドールとか、珠玉のようなソナタを書いた人もいるにはいるけど、どうもおフランスのリコーダーはイマイチ、お上品でおもしろさに欠けますニャ。ただこの日の演奏では、細かな装飾の切れ味はなかなかのものだったと思いますが。

ガンバ: 次から数曲が中世の音楽。チコーニア、フェアファクス、そして、ロバーツブリッジ写本のエスタンピ。

デデ: このエスタンピはレコードでも聴くことができるけど、圧巻でしたニャー。とにかく何拍子かよくわからない複雑怪奇な音の列を、ものの見事に解きほぐして、こんな楽しい音楽があるんだよって、見せてくれたみたい。

CoCo: そして、彼らの使っている楽器そのものがまあ、すばらしい音色。装飾のない、棒のような、いわゆるルネサンス・リコーダーなわけだけど、この音色の太さ、力強さ、そして、アタックの時に入るかすかな雑音。そのすべてが音楽そのもの。このエスタンピは、この日の演奏の一つの頂点だったかなぁ。

デデ: 14世紀前半の作品で、史上初の器楽曲といわれているけど、まあ、本当に演奏至難な大曲ですニャ。続いて、ジョスカン・デ・プレとハインリヒ・イザークを数曲。

ガンバ: まあ、ここらへんになってくると、中世の執拗なまでの複雑さは影を潜めて、比較的メロディーが前面に出てくるわね。「インスブルックよ、さようなら」の旋律なんかは、まあ、いわば、民謡と言ってもいいようなものだから、リコーダーのアンサンブルとしてもハーモニーの美しさを聞かせる曲。

ブチッケ: ただ、この連中はちょいとばかりうますぎるということもあって、この手の曲はかえって食い足りない気がしましたが。

ガンバ: 確かに。続いて演奏されたイタリアもの、ガブリエリを始めとするカンツォーナの数々はなかなか楽しめました。

CoCo: はいな。ここらへんのルネサンスから初期バロックの曲は、聴き応えがありましたニャー。絶妙なアタック、タンギングに加えて、微妙なイントネーションの合わせ具合がすばらしかったですニャ。ここまでやるかってくらい、超絶技巧を織り交ぜて、しかもそれが、生き生きとした音楽としての楽しさにまで昇華していく。これは何ともすごい連中です。

デデ: 後半は、バッハのパッサカリア ハ短調のリコーダー編曲版。もともとオルガン曲ですから、彼らご自慢のグレートコントラバスまで登場して、まあ、荘重な音楽を奏でておりましたニャ。ただ、カザルスホールですから、せっかくの巨大楽器もほとんど響かなかったのが残念。もうちょっとましな響きのするホールじゃないと、ああいった曲は楽しめないですニャー。

ガンバ: 次がヴィヴァルディの四季から「春」。これもまあ、楽器を取っ替え引っ替え持ち替えて、超絶技巧の限りを尽くして、原曲よりもかなりデーハーに演奏していたけど・・・・

ブチッケ: まあ、面白くないとは言わないけど・・・

ガンバ: はっきり言えば、つまらなかった。

CoCo: まあ、わざわざプログラムに入れるほどのもんじゃないね。その次が、石井真木の「ブラック・インテンションIV」という作品。20年以上前に書いた曲だけど、実際に演奏を聴くのは初めてだって、作曲者本人が挨拶していましたニャ。

ガンバ: 最後にドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」。これもまあ、何と申しましょうか・・・

デデ: というわけで、聴き応えがある曲は前半に集中しておりましたニャー。もうちょっと、プログラム・ビルディングという点でも工夫の余地があったんじゃないでしょうか。

ガンバ: それに、ドゥルスメモワールとか、サバールのところとか、あるいは、パニアグアの面々とか、中世からルネサンスのバンドを色々聞いた後だと、やっぱりリコーダーだけのカルテットって、その存在自体がかなり地味。アンコールで色々編曲ものを聞かせて楽しませようとしていたけど、あれは、なんか逆効果のような感じがしたわねぇ。

デデ: 確かに、ざっと見渡して、これだけの技量を備えたリコーダー・カルテットって、今はほかにないわけだし、それだけに貴重な存在なんだけど・・・


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