ザ・ハープ・コンソート

<スパニッシュ・ジプシーズ>
17世紀イングランドの、ケルトとスペインの音楽

スパニッシュ・ハープ: アンドルー・ローレンス=キング
ダンス、ギター&バグパイプ: スティーヴ・プレイヤー
ガンバ&ギター: ヒレ・パール
その他


2001年3月15日 カザルスホール


(終演後、船橋屋のカウンターで春の天ぷらに舌鼓を打ちつつ・・・)

デデ: もうすっかり春の陽気ですニャ。このふきのとうが、んめぇんだニャー。

ブチッケ: そうですニャー。ウドの天ぷらもいい味出してます。

ガンバ: ところで、今日のハープ・コンソートなかなか楽しかったじゃない。数年前の初来日の時には、プログラムの問題もあって、いまいちなところがあったけど。

CoCo: うん、そうね。あの時は確か、スペインで書かれたハープ曲集を自由な発想でアレンジしたような演奏会だったと思うんだけど(アーカイブの067を参照)、今回は、「スパニッシュ・ジプシーズ」という、題名はともかく、全体のコンセプトは面白かったよね。

ガンバ: 17世紀イギリスの音楽はケルト(アイルランド)とジプシー(スペイン)の音楽に大いに影響を受けていた、っていうことらしいんだけど、まあ・・・

デデ: ケルト=アイルランド、ジプシー=スペインと言われちゃうと、ちょっと、こじつけっぽい気がしますが。それはともかく、イングランドの音楽が西洋音楽の王道だなんて思う人はいないわけで、さまざまな民族的要素を取り込んで、当時のイギリスの音楽ができあがっていたことは確かなんでしょう。そういった意味で、(The rest of the) World Musicというカテゴリーに入る演奏会だったと言ってもいいのかニャ?

ガンバ: うん。そうね。この時代の音楽をやる演奏団体って、そうした民族的要素から切り離して、純粋に音楽だけやっていますというところは、ほとんどないわけで、当時の演奏様式や、時代楽器を使うようになればなるほど、演奏会全体が創作の場ともなってくるわけでしょ。つまり、イマジネーションを存分に働かせて、自由な演奏を繰り広げるってことね。この頃は、古楽の世界こそ本当に生き生きとした演奏のできる時空間になってきているってことを、実感させられることが多いわね。

CoCo: さて、最初に2曲スコットランドとイングランドの写本から、ジプシーという名称が冠された曲が演奏されましたニャ。これはハープが中心で、自由な即興といった雰囲気でしたが、9度や11度のグシャっとした和声をわざと取り込んでみて、興味深い演奏だったかな?

ガンバ: だけど、あの不協和音はちょっと柔らかすぎるのよね。やっぱりローレンス=キングってハーピストは、演奏家としてはかなりモデストな方かなぁ。もうちょっとパンチが効いた弾き方をしてほしいんだけど。

デデ: さて、この2曲の後が、面白かったですニャー。まず、モサラベ聖歌というのか、グレゴリアンというのか、「パンヘ・リングア(パンジェ・リングア)」が厳かに歌われると、これをベースにしたスペインの曲に続いていき、最後にはイングランドのトラッドでしょうか、グラウンド・ベースのコンソートに突入。ここらへんのコンセプトの練り上げ方はローレンス=キングの真骨頂なんでしょうニャ。

ブチッケ: で、それが一区切りつくと、今度は、クラロス伯爵とやらが登場。カスタネットの軽やかなリズムに乗って、プレイヤー氏は得意のバグパイプで、馬上の伯爵を演じておりましたニャ。そして、いつの間にやらギターに持ち替え、フラメンコをひと踊り。彼のギターの切れ味もなかなかだけど、フラメンコの立ち姿が凛々しいですニャー。そんなこんなで、即興演奏を続けるうちに、いつの間にかそれがフォリアの主題に変化していく。

デデ: あそこらへんのフォリアの主題を導き出す音楽の流れは、鮮やかでしたニャー。

ブチッケ: フォリアの即興演奏もなかなかのものでござんした。

ガンバ: 後半は、17世紀イングランドの写本を元にした、自由な即興が何曲か続いて、その後スペインの「牛」という短い曲が歌われ、さらに、その牛に基づくスコットランドのジグ、それにディヴィジョン(変奏曲ないしグラウンド)と続いて演奏。「キスしてあげるから、私の牛を見ていてね」っていうだけのたわいない曲から、荘重なディヴィジョンが生まれてくるっていう発想も面白かったわ。

デデ: で、最後にかの有名なオ・カロラン氏の曲を6曲ほど。オ・カロラン氏はアイルランドのハーピストとしては最も遅れてやってきた人だそうですが、単旋律+和声という形の美しい曲をたくさん書いていますニャ。しかも当時の方には珍しく、ホームページまでお持ちになっているんだとか。

CoCo: なにやら物語を感じさせるような曲の並べ方も興味深いものがあったけど、ギター・アンサンブルの切れ味、そして、ここでもプレイヤー氏の達者な演技が光りました。「カロランの告別」で舞台上の照明がほの暗くなってこれでおしまい。ってな感じにしておいてから、最後に、陽気な「アレトゥーサ号」を持ってきて、はしゃぎまくるところなんかワクワクしたねぇ。

デデ: いや、なかなか、楽しい一夜だったんじゃないでしょうか。なお、21日水曜日には、同じカザルスホールで、もう一つのプログラム、「ルス・イ・ノルテ」が演奏されます。当日券もありそうです。


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