ヘンデル 「メサイア」

指揮:ハリー・クリストファーズ
合唱:ザ・シックスティーン
オーケストラ:The Symphony of Harmony and Invention

2000年12月15日 オペラシティ


デデ:  いやあ、何年ぶりでしょうね。メサイアを聞くのは。

CoCo:  この前聞いたのもこのシックスティーンの演奏だったかニャー? えーと、上野の文化会館で。

デデ:  そうそう、ついこの間っていう気がしていたんだけど、あれは92年だったそうだから、もう8年前。

ガンバ:  8年も、メサイア断ちしていたのぉ。

デデ:  そう。このごろメサイアの演奏自体が少なくなって、たまーにチラシで見かけても、大学の合唱団とか、ママさんコーラスの類ばっかりになっちゃたね。どうしてだろう?

ブチッケ:  そりゃまぁ、メサイアっていえば年末だし、年末といえば第九だし。

ガンバ:  なんだか変な話だけど、第九しか客が集まらなくなって、どんどん第九に一極集中してったってわけね。そういえば、都響が毎年年末に豪勢なメサイアをやるのが恒例だったけど、いつの間にかなくなっちゃったわね。その分、第九の演奏が増えているのかなぁ。

CoCo:  たぶんね。ところで今日の演奏だけど、やっぱり、目玉はザ・シックスティーンの合唱だったよね。

ブチッケ:  そうでござんすニャー。この合唱の、んめえこと。物量で押す日本の合唱団とは正反対の行き方。今日はメサイアですからソプラノが2つに分かれるんで、トラが2人入って、正確にはジ・エイティーンでしたが、ともかく原則的には各パート4人ですばらしい迫力でしたニャー。

デデ:  指揮のハリー・クリストファーズというのは、コーラスマスター上がりの人だそうですが、さすがに合唱の歌わせ方はうまかったですニャー。出身はヘレヴェッヘ・センセも同じなんだけど、やっている音楽は正反対ですニャ。今日は会場がオペラシティということもあって、前から4列目で聞いたわけですが、本当に合唱団員の一人一人の歌い口、個性まで手に取るように聞こえてきました。

ガンバ:  うん、そこなのよぉ。ヘレヴェッヘのところは団員の個性は殺して、完璧に均一な声を作ってしまっているでしょ。どっちがいいかは、やる人、聞く人の好きずきだとは思うけど・・・

CoCo:  まあ、リーダーのやり方が良くも悪くも音楽に反映しますニャ。今日のメサイアはマスで押すわけでもなく、一人一人の人間の生きた声が聞こえていましたニャ。12番の「われらにひとりの嬰児が生まれり」や、24番の「われらみな、羊の如く迷いて」なんかではフーガのメリスマが鮮やか。

デデ:  合唱でも言葉が明瞭に聞き取れるから、フーガになってもまったく濁らずに音楽が進行して行きますニャ。合唱フーガばかりじゃなくて、たとえばハレルヤのようにある意味で音量で押さなきゃいけない曲も、迫力満点。ただし、ホールがホールですから、後ろで聞いたらどうなっていたかはわかりませんが。

ブチッケ:  そうですニャー。第1部で一曲だけトランペットが入る、えーと、15番の「いと高きところには栄光神にあれ」でしたっけ、あのトランペットをオルガン・バルコニーで吹かせていましたが、これが絶妙のバランスでした。あれをよくやるように、ステージの脇で吹いたりしたら、全然音が通らなかったでしょうね。

ガンバ:  うん、あれね。最初はペットの音が通り過ぎるかと思ったけど、どうしてどうして、合唱とオケとペットが絶妙のバランスになったわよね。逆にステージに降りて吹いていたハレルヤコーラス、それから、第3部の46曲「ラッパが鳴りて」なんかは、ステージ近くで聞いていても、ちょっとトランペットの音が遠かったかなぁ。

デデ:  やけにペットにこだわるね。

ガンバ:  そりゃそうよ、メサイアったらトランペットと太鼓、これで決まり!

CoCo:  およよ。ところでメサイアといえば合唱が中心で、今日の合唱はすばらしかったけど、ソリストでは、ロビン・プレイズというカウンターテナーがなかなかよかったんじゃない? イギリスのカウンターテナーというと何とかボウマンを始めとして、顔を真っ赤にして、胸が張り裂けんばかりに熱唱するのが常だけど、今日のブレイズという人は、クールな歌声で、楽々と高音もこなしていたよね。

ブチッケ:  そうですニャ。やっとイギリスにも聞くに耐えるカウンターテナーが出てきたなっていう印象を持ちましたです。その他ではテノールのジェイムズ・ギルクライストってのが、なかなか清潔な歌い回しで最初の「もろもろの谷は高く」から、ぐっと聴衆の心を捉えたんじゃないでしょうか。

ガンバ:  あとはベテランのリンダ・ラッセルがソプラノ、マイケル・ジョージがバス。この2人は最初はちょっと不安定だったけど、第2部以降かなり持ち直してきたかな。でも、やっぱりカウンターテナーのロビン・ブレイズっていうのが輝いていたわね。

デデ:  さて、クリストファーズの指揮ですが、合唱の動かし方はピカイチでしたが、どうでしょう、オケの作り方は?

ガンバ:  う〜む。なかなか難しいわね。うまく揃えてはいたんだけど、それ以上の悲しみ、躍動感、喜び・・・等々、人間の感情を十分に描き出していたかといわれると、ちょっとね。テンポがやや前のめりで、せかせかする感じだったかなぁ。まあ、近頃の流行かもしれないけど。でも、合唱を聴くメサイアだったと割り切って考えれば、すばらしい音楽だったと思うわ。

CoCo:  そう。弦のしなやかさ、オーボエの賑々しさ、ペットの輝かしさ、そして、小粋な通奏低音。まあ、そういった器楽的な楽しさは、かなりはしょられていたかもしれない。もうちょっと、情に流れるところがあってもいいんじゃないかい?

デデ:  でも、まあ、かなり元気な「嬰児」がお生まれになったんじゃないでしょうかニャー (=^^=)ノ

ガンバ:  めでたし、メデタシ。

ブチッケ:  いや、アーメンでげす。

ガンバ:  そっかぁ (=^^=;;

デデ:  それにお客さんも大変な大入りで、呼び屋さんは餅代をしっかり稼ぎましたニャ。

ガンバ:  それからぁ〜、太鼓もよかったのよぉ。

CoCo:  あの潔い叩き方、なかなかでした。ホールのせいですが、本来のもっと乾いた固い音に聞こえたらよかったんですがね。

ガンバ:  太鼓屋のベネディクト・ホフナング氏。あの有名な「ホフナング音楽祭」のジェラード・ホフナング氏の息子でしょ。若くして亡くなった親父さんにそっくりだったわねぇ。

デデ:  特に頭髪の具合が・・・

ガンバ:  まあ、親父さんより長生きしているんだから、お父さんだってもうちょっと生きていたら、きっとああなったのよ。

ブチッケ:  へぇ。そんなもんかなぁ。親爺さんは偉大なアマチュアだったけど、子供が親の夢を実現したってわけですニャ。確か前回のメサイアの時は、まったく同じ日の同時刻に文化村で「ホフナング音楽祭in Tokyo」というのをやっていて、そちらでは母上が大活躍していたそうですニャ。



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