ラモー 「エベの祭典」

指揮:寺神戸亮
オーケストラ:レ・ボレアード
バロック・ダンス:ナタリー・ヴァン・パリス他
演出:ナタリー・ヴァン・パリス

2000年12月1日 北とぴあ


(デデのひとりごと)

神々が集うオリュムポスの山を追放された女神エベ(ヘーベー)、それに付き従うのは「不平」の神モミュス(モーモス)。さらに愛の神アモール(エロス)が登場。この世もどうして、捨てたもんじゃあないよ、ってなことをエベに説教します。エベとモミュスは西風の神ゼフィール(ゼフィロス)に吹き流されてセーヌ河岸へ・・・(東風が吹かないと、パリにはたどり着かないはずなんですが・・・)このプロローグは、バロックオペラの伝統的な手法。ただし、やはりおフランスのオペラですから、のっけからバレエが重要な役割を担います。普通、荘重なプロセニアム効果をもたらすプロローグが、ちょいと軽め。「なんちゃって」とか言っているうちにセーヌのほとりに到着。

原作は3幕(アントレ)からなるものだそうですが、今日演じられたのは、音楽をテーマとする第2アントレと、舞踊をテーマとする第3アントレ。詩をテーマとした第1アントレは、音楽だけを抜粋して全体のはじめに演奏されました。各幕は相互にまったく関係を持たない、一話完結の物語になっています。

プロローグに続く音楽のアントレはスパルタが舞台。スポットライトを舞台横幕の下から当てることによって、荘重な列柱を浮かび上がらせています。大道具が使われていないのは、バレエの場を確保するためもあるんでしょうが、広い空間を表出するのには効果的。メッセニアとの戦いに勝利したものが王女を娶る権利を得るという神託が下ったそうで、将軍は相思相愛の王女と結婚せんとて、いざ出陣。隷属民のメッセニアとの戦いですから、チョロいもの。できレース。飼い犬をいたぶる程度の戦いではありますが、このバレエシーンは圧巻でしたニャー。もちろんメッセニア人は一人も登場しません。踊るのは国王リュクルゴス、将軍テュルタイオス、エロス、アポロン、アレース、ニケー・・・神々の競演でございます。退屈なバロック・ダンスををイメージしていたらとんでもない。荘重なパート、軽やかなパートが次々と踊られ、華やかな祝典的雰囲気を盛り上げます。

次のアントレは舞踊。これは一言で言えばかなり陳腐な田園劇。当時の貴族の田園趣味を色濃く反映しています。神々の使い走りマーキュリー(ヘルメス)が羊飼いに変装し、村一番の娘の愛を勝ち得るというお話。全体に筑波嶺の歌垣もかくやといった趣。ミュゼット、ガヴォット、リゴドンといった素朴なダンスがみどころでしたニャー。

寺神戸指揮によるレ・ボレアードの演奏は、特に弦のパートはなかなかしなやかに、かつ、軽妙にこのオペラ・バレエを支えていたと思います。ただ、管はフルートを除くとちょっとねぇ・・・。ただ吹けるというだけではちょっと、こういったおフランスの作品を楽しませるのには不十分。打ち物も健闘してはいましたが、ややリズムが重くてヌチャヌチャ粘ってしまう。コンティヌオが全体の中に埋没してしまったのはなぜ? もっと主張しなければならないこともあったはずなのに。バレエ、照明、衣装は十分に堪能できました。その意味では、かなり質の高い上演でしたニャー。

ところで、数年来続いてきた「北とぴあ音楽祭」ですが、とうとう予算が付かなくなって廃止に追い込まれたそうです。サバールとエスペリオンXX、ヒロ・クロサキ、ドゥルス・メモワール、クリストフ・ルセ、クイケン・ファミリー、モレノ兄弟、ヘレベッヘ・・・毎年質の高い企画と演奏者で上質な舞台を堪能させてくれました。まさに北区が世界に誇る催しと言っても過言ではないでしょう。不景気の折り柄、地方自治体の文化度が試される状況となってしまったわけですが、誠に残念ですニャー。区長が代わったらまた再開されるのかもしれませんね。早くその日が来ることを願っております。


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