テレマン協会 バッハのチェンバロ・コンチェルト

ブランデンブルク協奏曲 第3番、第5番
チェンバロ協奏曲 第1番、第4番

指揮+チェンバロ:中野振一郎

2000年7月13日 文化会館小ホール


(デデのひとりごと)

いやあ、暑い! このムッとする暑さは、まさしく、日本が熱帯であることの証ですニャー。このくそ暑い中、中野振一郎がバッハのコンチェルトを弾くというので、上野まで出掛けました。

中野はいつものようにメリハリの効いたスマートな弾きっぷり。この日は指揮も兼ねていましたが、コンチェルト1番の出だしのトゥッティでは、バックにも繊細なアクセントと、アーティキュレーションを要求していました。それはそれで、なかなか面白く聞いたのですが、如何せん、出だしの繊細さが1つの楽章を通じて徹底されない憾みが残ったのも確か。第2楽章の優雅で繊細な歌い回しでも、あるいは第3楽章のグイグイ弾き進むドライブ感にしても、各パート一人ずつのオケが、今ひとつ音楽そのものの楽しさに乗り切れていないのが残念。それでも、中野のチェンバロの小気味よさ、思わず踊り出したくなるようなリズム感が、バックの弱さを補って余りある秀演だったと思いますニャ。

コンチェルトの4番に関しても同じような感想を持ちましたです。ただ、1番に比べると、ロココ風の優雅なメロディーに秀でた曲で、その代わりに深刻さはない。その分、バックも乗りやすかったのでしょうか。十分に弾けてはいないんですが、中野のやろうとする音楽に対するバックの共感は伝わってきました。第3楽章のソロの部分。重音のモルデントで下ってくる音型のアーティキュレーションを、最初は短く、次に出てくる時にはちょっと長めに弾いていたような気がしましたが、あれはどうなんでしょうニャー。面白いことは確かですが、ピアノに比べると響きが長い楽器ですから、どうしても音楽がもたつく感じがしたんですが・・・

さて、この日のメインエベントは、ブランデンブルクの5番。この曲はテレマン協会としても、何回となく弾いてきた曲でしょうから、まさに手慣れたもの。バックとチェンバロの合い口も、ほかの3曲とは比べものにならないくらいしっくりと行っていました。カデンツァに入る前、裏でチェンバロが32分音符の走句を延々と弾いている間、ヴァイオリンとフルートがボソボソっとした対話をやらかすあたり、3人の独奏者の息のあったところを聞かせてくれました。特に今回初めて聞いた、森本英希というトラヴェルソは、音の立ち上がりが速くて、くっきりとした音色の持ち主。なかなかの優れものと見ました。

カデンツァではいろいろな工夫を凝らしていましたが、特に後半の32分音符が出てくるところで、4フィートのストップを入れて一段と華やかな音色を作り、テンポを大胆に揺らして大熱演。ただし人によっては評価が分かれるところでもありますニャ。

第2楽章もなかなかきれいな歌い回しをしていたんですが、このあたりになると、ヴァイオリン、フルートも息切れしてきたのか、中野の音楽に今ひとつ応えきれなくなってきました。これが尾を引いたんでしょうか、第3楽章もちょっとばらけた感じになっちゃいましたねぇ。第1楽章が大変な名演だっただけに、最後がちょっと尻切れトンボになってしまって、ちょっと残念。弦楽器全般に言えることでしょうが、技術は完璧じゃなくちゃいけないのはもちろんなんですが、でも、スポーツ的な弾き方ではまずいんで、もうちょっと音楽を感じるようになったら、アンサンブルとしても聴き応えが出てくるんだと思うのですがニャ。特に、5番のソロのヴァイオリンを聞きながらそんなことを思っておりました。



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