4−2コーチに必要なプロセス・コンサルテーションとは

 P・Cとは、もともと、組織開発のプロセスに関わるコンサルタントのことを指している。つまり、環境の変化にともない、成果の落ち込んだ企業などの組織において、組織変革や、組織文化の変革の手助けを行い、再び組織自らの能力で成果をあげられるように手助けをするコンサルタントのことを示すのである。従って、チームにおいて、監督、あるいはコーチが、この P・Cを理解していれば、環境の変化にも十分対応したチームができあがるのである。では、そのメカニズムについてさらに詳しく述べていこう。
 P・Cモデルと呼ぶものの主な仮定がいくつかあるが、これを少年サッカーに結び付けて述べるとこのように要約できる。

  1. しばしば子供や指導者は、どこが問題なのか分からず、実際に問題は何であるかを分析する際に特別な支援を必要としている。
  2. しばしば子供や指導者は、どんな種類の援助を求めるのかを知る上での支援を必要としている。
  3. 大部分の子供達や指導者は、チームを発展、進展させるための建設的意図を持っている。しかし、彼らは、何をどのように発展させるのか見分けるために支援を必要としている。
  4. 大部分のチームは自らに特有の強み・弱みを分析し、管理することを学べば、より効率的なものになることが出来る。どんなチームの組織形態も完璧なものではない。したがってどのチームにも、その補正機構が見出さなければならない何らかの弱みを持っているからである。
  5. 指導者、特にコーチは、おそらく、徹底的で時間のかかる研究やチームの子供達の輪のなかに実際に入ることなしに、新たな信頼性の高い活動の方向を提案するための組織文化について、十分学ぶことは出来ない。したがって、その組織文化において何が機能し何が機能しないのかを知っているチームのメンバー、特に監督などと、共働して指導法が案出されないかぎり、その指導法が間違っている可能性と、それがチーム以外の外部の要因に由来しているという理由で抵抗を受ける可能性との双方に直面する。
  6. 子供達、あるいは監督などの指導者が、自力で問題を解決しその解決法を熟慮しないかぎり、子供や指導者はその解決法を実行しようとせずまたそうすることも出来ないだろうし、さらに重要なことは、そのような問題が再発してもそれを処理できないであろうと言うことである。 P・コンサルタント、あるいはコーチは、代替案を提供することはできるが、そのような代替案に関する意思決定は子供たち、あるいは監督の手に残さなければならない。
  7. P・Cあるいはコーチの本質的役割は、監督や子供たちが独力でチームの改善を継続できるようにチームの問題をいかに分析し処理するかというスキルを伝えることにある。

 以上の前提をもとに、コーチのP・C的な定義は次のようになる。
 「コーチのなすべき役割とは、チームに属するあらゆるメンバーたち、すなわち監督や子供たちによって作り出された状況を改善するために、かれらが、自分たちのチームの内部やとりまく環境において生じる様々な出来事の原因や生じる過程を、みずから気付き、かつそこで行動しうるように彼らに支援を与える、そういった一連の活動に他ならない。」
 さて、チームにコーチがP・コンサルタントとして行動するには精通しておくべき分野がいくつかあり、それによって要求される行動がある。
 第一に、チームの組織運営やその組織の構造はどうなっているのかということの分析、第二に、チーム内の個人はそれぞれどのような関係のもとにどのくらいコミュニケートしているか、またそれをどう受け止めているかということの理解と把握、第三に、集団の形成がどのように行われるかと、その集団においての個人の行動について、第四に、問題解決にはどのようなプロセスがあるか、意思決定にはどのようなものがあるか、それがチームではどれが用いられているかということ、第五に、組織の形成の文化的側面についての理解と組織文化についての理解、さらにはそれらのチームにおける把握、第六に、指導者、特に監督のリーダーシップがどのようなものか、その影響力はどうかということ、第七に、評価体系についてどのようなものがあるかということの理解と、チームで用いられている評価体系の把握、様々なフィードバックの種類とその効果について、第八に、チーム間の競争がもたらす諸現象について、など、だいたい8つの分野に分けられ、それぞれの分野に精通するとともに、それがチームではどうなのかを把握していく必要がある。
 ではこれらの検討した内容をもとに、実際にコーチがどのようにP・Cを遂行していくかについて具体的に述べてみよう。


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少年サッカー指導コラム「コーチに必要なプロセス・コンサルテーションとは」
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