2−3指導における重要な問題点

 ここまで述べてきた原因はチームを取り巻く周囲の原因である。それに対してチーム内の問題がある。それが実は、重要かつ、着目すべき原因なのである。チーム内の問題、それは、組織的な問題、つまり、組織管理や組織作りの問題である。そして、組織的矛盾の問題である。
 まず、組織管理の問題である。指導の問題が生じている背景には、指導者が高圧的な、或いは専制的な組織管理しか知らないということが考えられる。チーム内の情報の流れ方、つまり指導者と子供達とのコミュニケーションや、自由度と生産性の関係、つまり子供にどのくらい自由にサッカーをさせていて、それがどれだけ技術として身についているかということなど、チームという組織を組織論で分析できる視点は幾つも存在するが、そうした幾つもの組織論的な視点に立って分析して見ると、少年サッカーの指導は、現時点では、依然としてそのような専制的な組織管理になっているのである。企業でさえ、リストラによって組織管理を変革しつつある。組織管理の理想とする考え方が変わってきている今、少年サッカーチームの組織管理にも同じことが言える。
 それから組織づくりの上での問題点がある。サッカーが人気だからといって、ただ闇雲にサッカーやりたい子供を集め、チームを作っていては、いいチームはでき上がらない。子供の保護者に対して、指導者としての理念をきちんと伝えられるような組織、チームに関わるそれぞれの人の役割分担の明確化など、チームを組織として構成する上で甘い部分があるようでは、「指導の理念」は徹底されないのである。特にこの組織づくりの上で問題が生じていると、チームを取り巻く人々の認識不足という、指導における問題を引き起こす原因を導くことになる。したがって、この組織づくりに着目していく必要がある。
 ところが、これによって矛盾も生じてしまうのである。これだけに充実した組織をつくるには、監督の強力なリーダーシップが必要となるし、それだけ充実させた組織を運営していくためには、強力なマネジメント能力も必要となる。そうしたリーダーの影響力は、サッカーそのものの指導においては、「指導の理念」から考える限り、あまり必要ではない。指導における影響力は、「監督」という肩書きからくる、「権威」的な影響力となりかねないからだ。そしてそのような影響力は、サッカーをしているときの子供にとっては、束縛の原因となる。その結果、サッカーのプレーをルーティン化させ、子供のプレーにおける創造性や、「こうやってみたい」という意欲の妨げになってしまうのだ。
 こうしたチームの外的、内的問題には、共通の根本的問題がある。それが文化的問題である。それはつまり、チームをとりまくあらゆる要素に「勝利至上主義」という文化が蔓延しているということである。それがチームにもたらされ、チームの組織文化として、様々な問題やギャップを引き起こすのである。組織文化とは、その組織に支配的となっている考え方や雰囲気、価値、あるいは規則など目に見えない意識の部分から目に見えるものまで含め、それらすべてを指すのだが、この組織文化がチームという組織で形成されるには、リーダーの行動が大きく影響するとともに、それだけでなく、さまざまな内的、外的要因に影響される。つまり、「勝利至上主義」という組織文化は、構造上、あるいは管理の形態上、形成され、根付いてしまうということもあれば、もともとチームのメンバーの大半がそうした文化を持っていたために、「勝利至上主義」という意識が支配的になって、結果的に根付いてしまうということもある。私が考えるには、少年サッカーのチームの場合、組織構造と、メンバーの意識と、さらには前で述べたような様々な外的要因も影響した3重の相乗効果によって、「勝利至上主義」という組織文化は深く根付いてしまったのだと考えられる。


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少年サッカー指導コラム「指導における重要な問題点」
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